27 / 351
027
しおりを挟む#027
今日はギルドで護衛依頼を受けたので、冒険者の格好だ。
リリア様は冒険者がいなくても、兵士がいるから、、、と言っていたが、冒険者を雇わないのも外聞が悪いので仕方ない。
リリア様も分かっているはずだ。
「マリア、リリア様と馬車の中で直衛だ。
クレアは後ろの馬車に乗って、後ろを警戒しろ。
俺は御者席で前方を警戒する」
「「はい」」
「では、バンさん、よろしくお願いします」
10日後、無事オーユゴック領領都ロービスに到着した。
途中、村を経由して戻ってきたが、魔物も盗賊も襲ってこなかったので、何も説明することがないのだ。
「それではリリア様、ギルドの終了確認のサインをお願いします」
「はい。。。これで大丈夫です」
「ありがとうございます。
では、明日の午前中に直接依頼の方の依頼料をいただきに参りますので、伯爵様によろしくお伝えください」
俺たちはギルドに顔を出し、護衛依頼の終了報告を行った。
片道の依頼で、銀貨15枚だった。食事付きだし、王都周辺の安全な道だし、こんなもんだろう。
翌日の朝、3人で伯爵邸に向かった。
「よく来てくれた。話は聞いておる。
盗賊を退治してくれたそうだな。
残党は騎士団を派遣して捜索させておるから問題ない。
これは今回の報酬の金貨20枚だ」
伯爵は金貨の入った袋を渡してくる。
「クレア、マリア、ちょっと外に出ていてくれ」
「??はい」
二人が出て行ったのを確認して、伯爵に話しかける。
「追加で報告があるのですが。。。」
「2人を追い出してまでする報告か、聞こう」
「実は盗賊を追い返した後、アジトを探して殲滅しまして。
その時に見つけたのがこの手紙です」
俺は盗賊の根城で見つけた手紙を渡す。
伯爵はそれを読んで唸った。
「これは。。。このことを知っているのは他にいるか?」
「いいえ、奴隷の二人も、リリア様も知りません」
「そうか。良い判断だ。
この件に関してはわしの方で調査しよう。
これは追加で報酬を払わねばならんな」
机から袋を取り出して渡してきた。
中を開けると、金貨が10枚入っていた。
「報酬と口止め料だ。口外無用だぞ」
「了解しました。私は何も見てません。何も知りません」
「結構だ。下がって良いぞ」
部屋から出ると、メイドさんにリリア様の部屋に案内してもらった。
メイドさんがノックして、俺たちが来たことを伝えると、入っていいとの事だったので遠慮なく入らせてもらった。
「よく来てくださいました。
ちょうど、母と姉2人と話をしていたところです」
「奥方様、お嬢様方、冒険者のジンと申します。
お見知り置きを。
こちらは私のパーティメンバーで、クレアとマリアと申します」
「まぁ、あなたがリリアの英雄どのですのね。
話は聞いてますよ。
娘を助けていただき、ありがとうございました。
オーガの時だけじゃなく、盗賊からも助けていただいたとか。
私たちで出来ることならなんでも言ってくださいね。
出来るだけお手伝いさせてもらいますわ」
「お、お母様、英雄だなんて私一言も。。。」
「あら、でもあれだけ語ってたら、英雄視していると思ってしまうわ」
「お姉様まで。。。」
その時、メイドさんがワゴンを押して入ってきた。
「あら、お茶かしら」
「はい、ジン様からお預かりしたお土産も持ってきました」
「お土産ですか?」
リリア様は俺が買ったのを知らないので、メイドさんに聞き返した。
「リリア様、王都で食べ損なったケーキですよ。
帰る前に買ってきました。
皆さんで召し上がってください」
「まぁ、王都のケーキだなんて、久しぶりね。
でも、10日も経って大丈夫かしら」
「ご安心を。時間停止した状態で持ってきましたので」
「まぁ、出来る男は違いますわね」
奥様が持ち上げてくる。
チラチラとリリア様を見ているので、これもからかいのうちなのだろう。
「さぁ、折角ですからいただきましょう」
奥様の一言で、全員がソファーに座る。
クレアとマリアは俺の後ろだ。
相変わらず、貴族と同じ席にはつかないようだ。
「美味しいですわ。
どこの店で買われたのでしょう?」
「商人街の表通りでカフェをやっているところです。
最近流行っているそうで、リリア様と行こうとしたのですが、人がいっぱいで諦めたのです」
「まぁ、リリアと『二人で』ねぇ」
「お母様!」
「リリア、後で詳しく話してちょうだいね」
お嬢様が口を挟む。
「私が王都にいた頃にはそんな噂はなかったわ。
最近できたのかしら?」
「店の外観は綺麗でしたし、そうかもしれません。
おや、この紅茶美味しいですね。
これもこの領の特産品ですか?」
「えぇ、紅茶の種類も3種類輸出してますわ。
これは一番甘みが少なく、酸味が強いものですわね。
ケーキによく合いますのよ」
「ええ、美味しいです」
その後も、オーガ退治や、盗賊退治などの話を面白おかしく話をした。
そろそろ帰る時間かと、立ち上がると、リリア様が切羽詰まったような顔で話しかけてきた。
「あ、あの、またお茶に誘ってもよろしいですか?
あの、無理ならそう言っていただいても。。。」
「いえ、嬉しいですよ。ぜひ呼んで下さい」
「はい!」
奥様とお嬢様方が何やらこそこそと話しているのが見えたが、あえて無視して退出した。
0
お気に入りに追加
753
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜
あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。
その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!?
チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双!
※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる