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第6章 マルモス王国編

123 心配 〜リリアーナ〜

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#123 心配 ~リリアーナ~

 先程マルモス王国から使者が来ました。

 大変です!渡された手紙にはジン様がダンジョンで行方不明になったとの事です。

 護衛の騎士たちも案内の冒険者も気付いたら居なかったとのことです。幸い食料はマジックバッグに持っていたようですが・・・マジックバッグ?

 私の記憶がおかしいのでしょうか。あれは結構高価なものだったと思うのですが。ジン様の所持金で買えるようなものではないはずなのです。

 嫌な予感がします。何か女神様関連でお金を出したとか、お金を出したとか、お金を出したとか。先日帝国から帰って来た時の話では最近はそういうのは無くなったと聞いていたのですが。

 せめて騎士か冒険者が一緒ならまだ希望は持てたのですが。いえ、諦めては行けませんね。

 こうなるとクレアが居ないのが改めて悔やまれます。帝国で行方不明のままですが、もし彼女が一緒であれば救出を待つくらいのことは出来たはずですから。

 ジン様個人の戦闘力はゴブリン並みと聞いています。居なくなったのは冒険者もまだ探索が進んでいない下層だと言いますし、ジン様お一人では帰還どころか魔物にあった瞬間に殺されてもおかしくありません。

 女神様が目を掛けてくださってはいますが、あくまでも物がもらえる程度の話。たとえ聖剣を出されてもまともに戦える姿が想像できません。魔物がお金で釣れるわけでもなし、それこそ女神様の奇跡でもない限りジン様は・・・。

 いえ、諦めては行けないと思ったばかりではありませんか。

 ダンジョンには同行しなかったようですが、我が国の騎士も現地に居るはずです。お父様に頼んで騎士にもダンジョンに捜索に向かってもらわないと。

 こうしてはいられません。王宮に行って話をつけないと。お父様にも同じ報告が行っているはずですが仮にも他国で騎士を動かすのはためらっている可能性はあります。



「お父様!」

「おおリリアーナか。今呼び出そうとしていたところだったのだ。ジン殿の報告は聞いたのだな?」

「ええ、それで現地に居る騎士をダンジョンに捜索に向かわせてください」

「それは出来ん」

「何故ですか?!ジン様は女神様の覚えもめでたいお方ですよ?捜索するのは当然ではありませんか?!」

「勿論マルモス王国には責任を追及するが、状況が悪すぎる。ダンジョンの最前線に騎士を送り込むのは死ねと言っているようなものだ。そんな命令は出せん」

「では王都にいる高ランク冒険者を雇えば良いではありませんか!」

「そうもいかんのだ。そのダンジョンを何年も攻略している冒険者ですら捜索しても見つからなかったと言うではないか。そこに高ランクとはいえ慣れない冒険者を派遣しても無駄だ。
 今は女神様の加護を願うのみだ」

「そうですか、もうお父様には頼みません!勝手にさせていただきます!」



 このままではいけません。何かしないと。とにかくジン様の護衛につけた私の私兵にはダンジョンに関しての情報収集を指示しないと。お父様ではありませんが、さすがにダンジョンを探索しろとは命令できませんからね。

 あとは冒険者を雇わないと。今の時期高ランクの冒険者はいたかしら?



「申し訳ありませんが、海棲のダンジョンとなると専門の冒険者でないと難しいと思われます」

 なんて事でしょう。ギルドが依頼を断るなんて。

「海棲のダンジョンは結構特殊なダンジョンでして。慣れたものでも下層に迷い込んだら生きて帰れない場所です。特に地面が水浸しなのに水が補給できないのが攻略の進まない理由です。
 魔物は水の中ならどこからでも現れます。ですがそれを察知する術がないのです。何度も攻略して経験則でしか予測できません。そんな場所にいく冒険者はいないのです」

「ですが!依頼を受けるかは冒険者の自由でしょう?!ギルドが引き受けない理由にはならないはずですわ!」

「その通りなんですが、過去に海棲のダンジョンに向かった高ランク冒険者が戻らなかった事がありまして。それからある意味タブーになったんです」

「じゃあ海棲のダンジョンに精通した冒険者を紹介して頂戴。現地にはいるはずですよね?」

「それですが、今回のお話ではマックスさんがリーダーのパーティーが捜索しても見つからなかったとか。現地で最高の攻略階層を誇るのがそのパーティーです。それでも無理だったのなら他にはいないかと」

 案内の冒険者がそんな手練れなのに見失うなんて。未踏破の階層だからトラップを見逃したとか?いえ、それならそういう内容で連絡が来るはずですね。突然見失ったという報告では分かりませんね。とにかく情報収集をしなくては。

 現地の私兵には情報を調べさせるとして他に出来る事は・・・っ!教会!女神様の寵愛をいただいてるんですもの、聖女様にお願いして教会で女神様に祈ってもらえれば!?



「申し訳ありません。私どもは女神様の信託を聞く事はあってもこちらから何かを伝える事は出来ないのです。ジン様が異常なんです」

 ああ、そうでした。ジン様が普通に奥殿で女神様と会話されたと聞いていたので忘れていました。普通は女神様からの信託をいただくだけで、こちらから語りかけるものではありませんでした。



 結局何も出来ないんでしょうか。

 私はこれでも公爵の位を持っていますが、何にも出来ないなんて。



ーーーー 数日後 ーーーー

「は?自分で戻ってきた?それもクレアを連れて?一体どうなってるんですか?!」

「わ、私に言われても」

 そうでした。使者に文句を言っても仕方がありません。彼は手紙を届けてくれただけなのですから。

「ご苦労様でした。手紙は確かに受け取りました」



 どういう事でしょうか?帝国で行方不明になったクレアと海棲のダンジョンで行方不明になったジン様が一緒にいたなんて。

 戻ってきたら話を聞かせてもらいますからね!

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