上 下
119 / 124
第6章 マルモス王国編

119 海棲のダンジョン(3)

しおりを挟む
#119 海棲のダンジョン(3)

 ダンジョンの探索は順調に進んでいる。と思う。

 マックスさん達が持っている地図を頼りに順調に階層を降りていく。魔物は強くなっていくものの、対処できないほどではない。まあ一度はマックスさん達が通った道だ、当然かもしれないが。

 エリスも嬉々として魔物を倒している。意外と言うか、ちゃんとマックスさん達と連携が取れている。
 一人で突っ込んで自分勝手に戦いまくるのかと思っていたので感心した。だって会った途端に挨拶よりも先に模擬戦を要求してくる様な性格だよ?協調性なんか無いものだと思っていた。



 今俺の前には魔物がいる。もちろん周囲は騎士が護衛してくれているし、マックスさんは絶賛戦闘中だ。
 俺が気にしているのはその見た目だ。

 全体的には魚だ。手足がついている。そこまでは良い。既に似たような魔物と会っている。
 だけどこいつは足で2足歩行しているのだ。しかも口のあたりにはナマズのような髭が何本も生えている。そして直立していると言うのに少しだけ浮いている。

 ダゴンだ。間違いない、ダゴンだ。

「マスタースピードフィッシュだ!緩急の差が激しいから避け損なうなよ!」

 どうやらダゴンじゃ無かったらしい。

 旅の途中でクトゥルフくさい奴に襲われたから居るかもとは思っていたが、まさかこんな形で遭遇するとは。ダゴンじゃないらしいがSAN値減ってないよね?

「おっしゃー倒したぞ!こいつの髭は高く売れるからな。回収していくぞ」

 見た目は魚なのに身ではなく肉らしい。しかも食べれないとか。食べると笑い茸のように暫くは笑いが止まらなくなるそうだ。
 まあ食べれたとしても手足のついた魚を食べる気はしないが。


 ダゴンもどきがこの辺りのボスだったらしく、それ以上強い魔物は出て来なかった。


 さらに階層を降りていくと探索の済んでないエリアに来たらしい。盗賊の人がマッピングを始めた。この人名前なんだっけ?

・・・

 そして俺は穴に落ちた。トラップなら下に槍でも敷いていそうなもんだが、俺の体は未だに下降中だ。いきなり足元に黒い空間が開き、吸い込まれるように落ちた。スロープのようになっており、全くひっかかりなない。壁がつるんつるんなのだ。勢いを殺そうと足を広げて抵抗を作ろうとするが油でも塗ったかのように滑ってしまう。俺は抵抗を諦めた。


・・・

「いてっ!」

 どれだけ落ちただろうか。真っ暗なので時間の感覚が曖昧だ。落ちた距離にしては衝撃は少なかったが、尾骶骨を打ってしまった。地味に痛い。

「やっっほーーー!プリティーリリスちゃんだよーー!」

 俺の目の前には超ミニのセーラー服を着て、手には先っちょが星型をしているステッキを持っている。なんかキラキラしてるのは魔法だろうか。

「あっれー、おかしいなぁ。ジン君の記憶から探った格好してるはずなのに」

 いつの間に俺の記憶を漁ったんだ?
 って言うか、別に俺はマジカルな少女を推してはいない。

「てか誰?」

「だからー、プリティーリリスちゃんだよっ!」

 だから誰だよ。なんか金髪にツインテールとかしてるところがムカつく。

「こないだはごめんねー。話せる場所が神殿しかなかったから無理やり割り込んだんだけど中途半端になっちゃったよねー。だからダンジョンから直接招待しちゃいました!」

 え、こないだの神殿の話ってもしかしてあの気持ちの悪い奴の話?それがこの少女?えっ?

「えっと、貴女がこないだ奥殿?で話した方ですか?」

「そうだよー、ラブリーリリスちゃんって呼んでね!」

 なんか雰囲気が全然違うんだが。あの時は死ぬ間際みたいな恐怖を撒き散らかしていたんだが。

「何か雰囲気違いませんか?」

「そうかなー、あ、遠隔だったし無理やり割り込んだからちょっとおかしかったかもー」

 そんなレベルの違いじゃ無かったが。まあいい、この人がクレアを攫った人だと判明したのだから返してもらわないといけない。

「クレアを何処にやったんですか?!無事なんでしょうね?!」

「ん?ああ、ジンくんの従者ね。あっちの部屋で訓練してるよ?」

 訓練?攫われたんじゃ無かったのか?

「おーい、従者ちゃん、ご主人様が迎えにきたよー」

「え、もうそんな時間ですか?ジン様短い時間とはいえ離れてしまい申し訳ありませんでした。あまつさえ迎えにきていただくなんて。もう少し訓練を積んだら帰ろうかと思っていたんですが」

 クレアが何食わぬ顔で隣の部屋から出てきたんだが、特に拘束されてないし、暴行を受けた感じもしない。


ーーーー
 長くなったので2話に分けました。
 中途半端な場所で切ってしまいました。ごめんなさい。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

社畜生活の果て、最後に師匠に会いたいと願った。

黒鴉宙ニ
ファンタジー
仕事、仕事、仕事。果てのない仕事に追われる魔法使いのモニカ。栗色の艶のあった髪は手入れができずにしなびたまま。師匠は北東のダンジョンへ行っており、その親友であるリカルドさんが上司となり魔物討伐を行う魔法部隊で働いている。 優しかったリカルドさんは冷たくなり、同僚たちとは仲良くなれない。そんな中、ようやく師匠帰還のめどがついた。そして最後に師匠へ良い知らせを送ろうと水竜の討伐へと向かった──。

異世界に転生して社畜生活から抜け出せたのに、染み付いた社畜精神がスローライフを許してくれない

草ノ助
ファンタジー
「私は仕事が大好き……私は仕事が大好き……」 そう自己暗示をかけながらブラック企業に勤めていた伊藤はある日、激務による過労で27年の生涯を終える。そんな伊藤がチート能力を得て17歳の青年として異世界転生。今度は自由な人生を送ろうと意気込むも――。 「実労働8時間? 休日有り? ……そんなホワイト企業で働いていたら駄目な人間になってしまう!」 と過酷な労働環境以外を受け付けない身体になってしまっていることに気付く。 もはや別の生き方が出来ないと悟った伊藤は、ホワイト環境だらけな異世界で自ら過酷な労働環境を求めていくのだった――。 これは与えられたチート能力と自前チートの社畜的労働力と思考を持つ伊藤が、色々な意味で『なんだこいつやべぇ……』と周りから思われたりするお話。 ※2章以降は不定期更新

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...