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第4章 アレグスト帝国編
105 帰還
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#105 帰還
騎士たちの準備も済んで王国に戻る事になった。
護衛の女騎士を選んだので彼女たち第1小隊だけがついてくるのかと思ったら、王国までの道での護衛は普通の騎士団が行い、第1小隊は個人的な護衛となるそうだ。
途中で雨で数日遅れたりしながらも問題なく移動していたのだが、いくつか不満点もあった。
直属の護衛が出来た事で、トイレの時も彼女たちが見張っているのだ。彼女たちのまでトイレをするなんてどんな羞恥プレイだと言いたい。来る時は男性の騎士団員だったから気にならなかったんだけどね。チラチラと見られてるのが分かるだけに恥ずかしい。
そんなトイレの時間も慣れた頃に事件が起きた。そこは山を超えた後の森になっており、もう王国内と言ってもいい場所だった。
大きい方をしていたら前方でガサガサと音がしたと思ったら魔物が現れたのだ。もちろんシンディーさんとマンスムさんの二人は剣を抜いて構えているが、俺はそれどころではない。
お尻を丸出しで踏ん張っている状況で魔物から逃げろと言われても困る。なんならまだ小の方も終わっていない。
piiiii
警告の笛が鳴る。本体の警備をしていた騎士たちのうち1小隊がやってきた。
それまでに俺は魔物と目があってしまった。
魔物の姿はずんぐりむっくりで鱗に覆われ、鼻の部分からは触手が伸び、背中には蝙蝠の羽が生えている。4足歩行にしては前足が短い。
「く、クトォルフ?」
某神話で有名な神の名前だ。俺も挿絵でしか見たことがなかったが、見た目はそのまんまである。女神様が存在するんだから旧支配者の神が存在しても・・・。
「ドラゴンパピーもどきだ!1匹だけだから慎重にな!匂い袋を傷つけるんじゃないぞ!」
この魔物はドラゴンパピーもどきと言うらしい。どうやらクトォルフではないらしい。ちょっと安心したがこっそりSAN値が減ってたら怖いな。あの種族は混沌としていて亜種が多いらしいから絶対ないとは言い切れないけど。
とにかくドラゴンパピーもどきは弱いらしい。シンディーさんが一人で対処している。触手を慎重に切断し、足を狙っている。徐々に弱らせて最後にお尻の方にとどめをさした。
倒した後に聞くと、このドラゴンパピーもどきは匂い袋なるものを持ち、傷つけると強烈な悪臭がするそうだ。それも物理的に寝込むほどの。それはもう毒と言っても良いんじゃないだろうか。頭部から首にかけて存在するらしく、主な攻撃手段の触手を切り払った後に胴体を狙って倒すのが一般的だとか。
うまく調合すると気つけ薬になるらしいが、俺はそんな気つけ薬はごめん被りたい。日本で言えばアンモニアで気付をするようなものだろうか?
何にせよ強い魔物でなくて良かった。
俺も途中で止まってしまった用を足せたし、一安心だ。
しかし、この近距離まで弱いとは言え魔物を近づけたのは問題だったらしく、近衛の二人のさらに外側を警備している騎士団の警備体制を見直したらしい。具体的には護衛対象、つまり俺がトイレに行った時に陣形を変更すると言うことだ。
俺の用を足している部分を広げる形で護衛を展開し、その部分を厚くすることで厳重に警備する方針だ。
俺のトイレのために申し訳ないが、これだけは馬車の中で済ませる訳にはいかない。ミール様の時は護衛の近衛騎士が多いので直衛の外側にも人員を配置しており問題なかったそうだ。
俺のためにすまんね。
まあトイレの話はどうでも良いか。結果的に珍しい魔物も見れたし。まさかクトォルフもどきが出るとは思ったなかったが。海沿いでは気をつけるようにしよう。あれらは海系の神様だからね。
馬車の中は平穏の一言だ。ミリー様は王族らしくしとやかにしているし、一緒に来た使者さんは別の馬車だし。パミュさんが同乗してメイド的なことをしている。外出時にメイドがいない時にはパミュさんがやっているらしい。
ただ、入れてもらった紅茶はそれほど美味しくなかった。茶葉は同じはずなんだが。もしかして文武両道のパミュさんには家事能力は備わってないのかな?
あ、ちなみにメイドさんを連れてくる案もあったらしいが、ミリー様が『私は嫁入りするのですからハンバルニ王国側が選んだメイドを使うべき』と言う俺には分からない理論を持ち出して連れてこなかったのだ。仲の良いメイドもいただろうに。
国境では騎士同士での情報交換が行われ、引き継ぎが終了した。近衛以外の騎士団はここまでだ。ちゃんとトイレの護衛の件は伝えてくれたそうだ。わざわざ報告してくれたんだけど、別に報告してくれなくても良いのよ?
ハンバルニ王国側には森が多いので警戒は厳重にするらしい。その分移動速度は落ちるが、行軍と言うのはそう言うものらしい。行きよりも護衛が多いのはミリー様がいるためだろうか。その分余計に遅くなってる気がするが。
ワイバーンに襲われることもなく順調に進む。ウンディーネと会った場所も無事通過し、平地に出る。
そこからは行軍速度が上がり、馬車が止まる回数も減った。
そして何ヶ所かの村や街を経由して王都についた。
ーーーー
第13回ファンタジー大賞 奨励賞を頂きました。応援ありがとうございます!
大賞の最終選考8作には残ったんですが届きませんでした!
騎士たちの準備も済んで王国に戻る事になった。
護衛の女騎士を選んだので彼女たち第1小隊だけがついてくるのかと思ったら、王国までの道での護衛は普通の騎士団が行い、第1小隊は個人的な護衛となるそうだ。
途中で雨で数日遅れたりしながらも問題なく移動していたのだが、いくつか不満点もあった。
直属の護衛が出来た事で、トイレの時も彼女たちが見張っているのだ。彼女たちのまでトイレをするなんてどんな羞恥プレイだと言いたい。来る時は男性の騎士団員だったから気にならなかったんだけどね。チラチラと見られてるのが分かるだけに恥ずかしい。
そんなトイレの時間も慣れた頃に事件が起きた。そこは山を超えた後の森になっており、もう王国内と言ってもいい場所だった。
大きい方をしていたら前方でガサガサと音がしたと思ったら魔物が現れたのだ。もちろんシンディーさんとマンスムさんの二人は剣を抜いて構えているが、俺はそれどころではない。
お尻を丸出しで踏ん張っている状況で魔物から逃げろと言われても困る。なんならまだ小の方も終わっていない。
piiiii
警告の笛が鳴る。本体の警備をしていた騎士たちのうち1小隊がやってきた。
それまでに俺は魔物と目があってしまった。
魔物の姿はずんぐりむっくりで鱗に覆われ、鼻の部分からは触手が伸び、背中には蝙蝠の羽が生えている。4足歩行にしては前足が短い。
「く、クトォルフ?」
某神話で有名な神の名前だ。俺も挿絵でしか見たことがなかったが、見た目はそのまんまである。女神様が存在するんだから旧支配者の神が存在しても・・・。
「ドラゴンパピーもどきだ!1匹だけだから慎重にな!匂い袋を傷つけるんじゃないぞ!」
この魔物はドラゴンパピーもどきと言うらしい。どうやらクトォルフではないらしい。ちょっと安心したがこっそりSAN値が減ってたら怖いな。あの種族は混沌としていて亜種が多いらしいから絶対ないとは言い切れないけど。
とにかくドラゴンパピーもどきは弱いらしい。シンディーさんが一人で対処している。触手を慎重に切断し、足を狙っている。徐々に弱らせて最後にお尻の方にとどめをさした。
倒した後に聞くと、このドラゴンパピーもどきは匂い袋なるものを持ち、傷つけると強烈な悪臭がするそうだ。それも物理的に寝込むほどの。それはもう毒と言っても良いんじゃないだろうか。頭部から首にかけて存在するらしく、主な攻撃手段の触手を切り払った後に胴体を狙って倒すのが一般的だとか。
うまく調合すると気つけ薬になるらしいが、俺はそんな気つけ薬はごめん被りたい。日本で言えばアンモニアで気付をするようなものだろうか?
何にせよ強い魔物でなくて良かった。
俺も途中で止まってしまった用を足せたし、一安心だ。
しかし、この近距離まで弱いとは言え魔物を近づけたのは問題だったらしく、近衛の二人のさらに外側を警備している騎士団の警備体制を見直したらしい。具体的には護衛対象、つまり俺がトイレに行った時に陣形を変更すると言うことだ。
俺の用を足している部分を広げる形で護衛を展開し、その部分を厚くすることで厳重に警備する方針だ。
俺のトイレのために申し訳ないが、これだけは馬車の中で済ませる訳にはいかない。ミール様の時は護衛の近衛騎士が多いので直衛の外側にも人員を配置しており問題なかったそうだ。
俺のためにすまんね。
まあトイレの話はどうでも良いか。結果的に珍しい魔物も見れたし。まさかクトォルフもどきが出るとは思ったなかったが。海沿いでは気をつけるようにしよう。あれらは海系の神様だからね。
馬車の中は平穏の一言だ。ミリー様は王族らしくしとやかにしているし、一緒に来た使者さんは別の馬車だし。パミュさんが同乗してメイド的なことをしている。外出時にメイドがいない時にはパミュさんがやっているらしい。
ただ、入れてもらった紅茶はそれほど美味しくなかった。茶葉は同じはずなんだが。もしかして文武両道のパミュさんには家事能力は備わってないのかな?
あ、ちなみにメイドさんを連れてくる案もあったらしいが、ミリー様が『私は嫁入りするのですからハンバルニ王国側が選んだメイドを使うべき』と言う俺には分からない理論を持ち出して連れてこなかったのだ。仲の良いメイドもいただろうに。
国境では騎士同士での情報交換が行われ、引き継ぎが終了した。近衛以外の騎士団はここまでだ。ちゃんとトイレの護衛の件は伝えてくれたそうだ。わざわざ報告してくれたんだけど、別に報告してくれなくても良いのよ?
ハンバルニ王国側には森が多いので警戒は厳重にするらしい。その分移動速度は落ちるが、行軍と言うのはそう言うものらしい。行きよりも護衛が多いのはミリー様がいるためだろうか。その分余計に遅くなってる気がするが。
ワイバーンに襲われることもなく順調に進む。ウンディーネと会った場所も無事通過し、平地に出る。
そこからは行軍速度が上がり、馬車が止まる回数も減った。
そして何ヶ所かの村や街を経由して王都についた。
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第13回ファンタジー大賞 奨励賞を頂きました。応援ありがとうございます!
大賞の最終選考8作には残ったんですが届きませんでした!
応援ありがとうございます!
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