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第4章 アレグスト帝国編
099 観光
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#099 観光
「え、観光ですか?」
「うむ、まあ観光とは言っても馬車で数日の場所なんだがな。火山があるわけでもないのに地下から湯が湧く不思議な場所でな。折角帝国に来たんだから少しはこの国のことも知ってもらえたらと思ってな」
地下からお湯?まさかの温泉?!
肌が乾燥気味の俺としては大歓迎だ。温泉はどういう泉質かに関わらず保湿成分が含まれる物だ。温泉で暖まった後に自然乾燥させて成分を皮膚に定着させる。それだけでも結構効果がある。普通の人は何故か温泉の後にシャワーで流してしまったり、バスタオルでガッツリと拭いてしまったり。俺からしたらもったいないの一言だ。
髪は流石に痛むので温泉水は流したほうが良いが。
「ミールに話したら乗り気でな。既に準備させておる。どうだ?行ってみんか?」
「ぜひ行かせてもらいます!」
温泉の後に冷えたビールとかをぐびっと行くとか、その前に温泉の中でぬる燗をチビチビやるのも良い。俺はあまりお酒は飲まないほうだけど、温泉なら別腹だ。数少ない休みに行く温泉は格別だったな。
うきうきしながら部屋に戻ると既に俺の荷物は纏められており、出発を待つだけの状態だった。どうやら俺が断るとは思ってなかったようだ。俺の趣味趣向を把握してのお誘いなら恐ろしい洞察力だ。
「ジン様、着替えなどの必要な物は纏めましたが、他に持っていきたい物はこざいますか?」
「ああ、温泉には酒は置いてあるのかな?無ければ持っていきたいけど」
「ワインくらいはあると思いますが、何のお酒がよろしいですか?」
「出来ればビールと日本酒が欲しい」
「びーるとにほんしゅですか。
それはどんなお酒なんでしょうか?」
あ、そうだった。ここは異世界、日本では当然あるべき品が揃わないんだった。
「えっと、麦から作った黄色くて泡泡のお酒と、米から作ったお酒なんだけど」
「麦からならエールでしょうか。こめは申し訳ありませんが分かりかねます」
まあビールがあるだけ良いか。こっちではエールって言うんだな。
今まで食事に出て来たときにワインを飲むくらいだったが、この世界のお酒を調べておくのも良いかもしれない。葡萄以外から作ったワインとかも美味しそうだし。
「後はそうだな、途中で読める本とかあると良いな。精霊に関してのものがあると良いな」
「精霊ですか?御伽噺の類になるかと思いますが構いませんか?」
「ああ、十分だ」
そう言えばここ数百年は契約を求めて来る人はいないと言ってたな。あまり有名な話じゃないのだろう。
あ、ウンディーネさんなら普通の風呂を温泉に出来たりしたんだろうか?それとも火山関係ということで火の精霊の分野だろうか。いや、地面から湧くのだから地の精霊という可能性もあるのか。
普段ウンディーネさんは俺から離れてなにやらやっている様なので今も近くに居ないのだが、パスみたいなのは感じるから呼べば帰って来てくれるとは思うんだけどね。こんな質問するために呼び戻すのもかわいそうだ。
「司書に頼んで物語風のを借りてまいりました。少し古い本らしいですので読みにくいかもしれませんが」
「うん?古いと読みにくいの?」
「はい、表現に独特なものが多く、言い回しも今とはだいぶ違います。話の流れを知る程度なら問題ありませんが、細かいニュアンスまで知ろうと思ったら専門家の領分となります」
ふむ、まあ古い本なら仕方ないな。流れがわかるだけでも精霊がどんな存在なのかを知る手がかりにはなるだろう。
彼女本人にも聞いたことがあるのだが、根本的な常識以前の問題で俺が何を知りたいのかが伝わらなかったのだ。彼女は頭が悪いわけではないので俺の質問の仕方が悪かったのだろう。
この本を読んである程度知識を得てから質問すればもっとまともな回答があるかも知れない。
「ジン様、今回の温泉旅行楽しみですわね」
最近顔を合わせてくれなかったミールさんだ。何故か当たり前のように俺の隣に座っているし、普通に話しかけてくる。何か心境の変化でもあったのだろうか。
甲斐甲斐しくお菓子を出してくれたり、お茶を出してくれたりするんだが、そう言うのは一緒に乗っているメイドのクレアの仕事だと思うんだが。彼女は既に諦めたのか半分船を漕いでいる。
「それでですね、お父様ったらなんて言われたと思います?・・・・・・それでお母様が・・・」
うん、この位の年齢の子のエネルギー侮っていたわ。放って置いたら何時迄も話し続けるんだ。よくそんなに話題があるなと思うが、女子高校生位の年齢だと考えるとそんなものかとも思わんでもない。
ただのんびりと本を読んで過ごそうかと思っていただけに振り回されている感もある。
「ミール様、少し休憩しませんか。疲れたでしょう」
実際には俺が聞き疲れただけなんだが、休憩を提案してみた。
「あ、そうですわね。休憩にしましょう」
よし、ようやくゆっくりできるな。
・・・何故馬車ごと止まってテーブルに付いてるんだ?テーブルと椅子を持ち歩いていることも驚きだが、話を休憩しようと提案したつもりが、馬を休憩する話になっている。
そしてミール様は相変わらず喋りまくっている。これなら馬車に乗っていた方が目的地に近づくだけ良かったんじゃないだろうか。
クレアが携帯用のコンロのような物を使ってお茶を入れてくれたが、王族の旅って生活に必要な物を全て持っていく物なのか?確かに荷馬車が多いとは思っていたが。
「ジン様聞いてらっしゃいますか?」
あ、はいはい、聞きますよ。
「え、観光ですか?」
「うむ、まあ観光とは言っても馬車で数日の場所なんだがな。火山があるわけでもないのに地下から湯が湧く不思議な場所でな。折角帝国に来たんだから少しはこの国のことも知ってもらえたらと思ってな」
地下からお湯?まさかの温泉?!
肌が乾燥気味の俺としては大歓迎だ。温泉はどういう泉質かに関わらず保湿成分が含まれる物だ。温泉で暖まった後に自然乾燥させて成分を皮膚に定着させる。それだけでも結構効果がある。普通の人は何故か温泉の後にシャワーで流してしまったり、バスタオルでガッツリと拭いてしまったり。俺からしたらもったいないの一言だ。
髪は流石に痛むので温泉水は流したほうが良いが。
「ミールに話したら乗り気でな。既に準備させておる。どうだ?行ってみんか?」
「ぜひ行かせてもらいます!」
温泉の後に冷えたビールとかをぐびっと行くとか、その前に温泉の中でぬる燗をチビチビやるのも良い。俺はあまりお酒は飲まないほうだけど、温泉なら別腹だ。数少ない休みに行く温泉は格別だったな。
うきうきしながら部屋に戻ると既に俺の荷物は纏められており、出発を待つだけの状態だった。どうやら俺が断るとは思ってなかったようだ。俺の趣味趣向を把握してのお誘いなら恐ろしい洞察力だ。
「ジン様、着替えなどの必要な物は纏めましたが、他に持っていきたい物はこざいますか?」
「ああ、温泉には酒は置いてあるのかな?無ければ持っていきたいけど」
「ワインくらいはあると思いますが、何のお酒がよろしいですか?」
「出来ればビールと日本酒が欲しい」
「びーるとにほんしゅですか。
それはどんなお酒なんでしょうか?」
あ、そうだった。ここは異世界、日本では当然あるべき品が揃わないんだった。
「えっと、麦から作った黄色くて泡泡のお酒と、米から作ったお酒なんだけど」
「麦からならエールでしょうか。こめは申し訳ありませんが分かりかねます」
まあビールがあるだけ良いか。こっちではエールって言うんだな。
今まで食事に出て来たときにワインを飲むくらいだったが、この世界のお酒を調べておくのも良いかもしれない。葡萄以外から作ったワインとかも美味しそうだし。
「後はそうだな、途中で読める本とかあると良いな。精霊に関してのものがあると良いな」
「精霊ですか?御伽噺の類になるかと思いますが構いませんか?」
「ああ、十分だ」
そう言えばここ数百年は契約を求めて来る人はいないと言ってたな。あまり有名な話じゃないのだろう。
あ、ウンディーネさんなら普通の風呂を温泉に出来たりしたんだろうか?それとも火山関係ということで火の精霊の分野だろうか。いや、地面から湧くのだから地の精霊という可能性もあるのか。
普段ウンディーネさんは俺から離れてなにやらやっている様なので今も近くに居ないのだが、パスみたいなのは感じるから呼べば帰って来てくれるとは思うんだけどね。こんな質問するために呼び戻すのもかわいそうだ。
「司書に頼んで物語風のを借りてまいりました。少し古い本らしいですので読みにくいかもしれませんが」
「うん?古いと読みにくいの?」
「はい、表現に独特なものが多く、言い回しも今とはだいぶ違います。話の流れを知る程度なら問題ありませんが、細かいニュアンスまで知ろうと思ったら専門家の領分となります」
ふむ、まあ古い本なら仕方ないな。流れがわかるだけでも精霊がどんな存在なのかを知る手がかりにはなるだろう。
彼女本人にも聞いたことがあるのだが、根本的な常識以前の問題で俺が何を知りたいのかが伝わらなかったのだ。彼女は頭が悪いわけではないので俺の質問の仕方が悪かったのだろう。
この本を読んである程度知識を得てから質問すればもっとまともな回答があるかも知れない。
「ジン様、今回の温泉旅行楽しみですわね」
最近顔を合わせてくれなかったミールさんだ。何故か当たり前のように俺の隣に座っているし、普通に話しかけてくる。何か心境の変化でもあったのだろうか。
甲斐甲斐しくお菓子を出してくれたり、お茶を出してくれたりするんだが、そう言うのは一緒に乗っているメイドのクレアの仕事だと思うんだが。彼女は既に諦めたのか半分船を漕いでいる。
「それでですね、お父様ったらなんて言われたと思います?・・・・・・それでお母様が・・・」
うん、この位の年齢の子のエネルギー侮っていたわ。放って置いたら何時迄も話し続けるんだ。よくそんなに話題があるなと思うが、女子高校生位の年齢だと考えるとそんなものかとも思わんでもない。
ただのんびりと本を読んで過ごそうかと思っていただけに振り回されている感もある。
「ミール様、少し休憩しませんか。疲れたでしょう」
実際には俺が聞き疲れただけなんだが、休憩を提案してみた。
「あ、そうですわね。休憩にしましょう」
よし、ようやくゆっくりできるな。
・・・何故馬車ごと止まってテーブルに付いてるんだ?テーブルと椅子を持ち歩いていることも驚きだが、話を休憩しようと提案したつもりが、馬を休憩する話になっている。
そしてミール様は相変わらず喋りまくっている。これなら馬車に乗っていた方が目的地に近づくだけ良かったんじゃないだろうか。
クレアが携帯用のコンロのような物を使ってお茶を入れてくれたが、王族の旅って生活に必要な物を全て持っていく物なのか?確かに荷馬車が多いとは思っていたが。
「ジン様聞いてらっしゃいますか?」
あ、はいはい、聞きますよ。
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