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第4章 アレグスト帝国編
094 ミール様
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#094 ミール様
ミール様は俺の婚約者候補で皇帝の第3皇女になる。ハンバルニ王国で事前に聞いた情報では深窓のお嬢様らしい。控えめで常に男性をたて、話題は豊富で貴族女性の人気も高いと。
なんでそんな好条件の物件が俺に回ってくるのかは疑問だが、年齢的な問題かもしれない。この世界の適齢期は10代後半だからね。
俺の年齢からしたら行き遅れを充てがわれても文句は言えないと思うんだけど。国もメンツ的な事とか?
とにかく今日はミール様とのお茶会なので正装をして向かっている。まあ迎賓館からなのでそれほど距離はないんだが。ただ歩いて行ける距離でも馬車でいくのが普通だそうなので馬車に乗っている。
「ジン様、今日は失礼のないようにお願いしますね。一応先方からの婚約申し出ですから問題はないと思いますが、帝国の意図がわからないうちは言質を与えないようにしてください。もし難しい質問や約束事になったらその場では返事せずにお嬢様に手紙を出して相談してください。
この国に滞在する期間が長くなりますが、その方が安全です」
まあ俺も分かっている。ロザリア王国では国王様の外堀埋め作戦に引っ掛かったからね。今回はそんな隙は見せないよ?婚約は既定路線とは言え結婚の時期だけは俺が帰る時期よりも後にするのが良い。そしてそれよりも結婚の時期に関して約束しないのがベストだ。
さて、お茶会の庭園に着いたが、その場所には2人の女性がいた。一人は30代くらいだろうか。どこかで見た顔だ。もう一人はもう少し若くて20歳くらいだろうか。
「お初にお目にかかります。異世界人のジンと申します」
そう言って跪いた。正直この対応が正しいのかは知らない。皇帝陛下相手なら確実にこれでいいはずだが、皇女様相手にこれでいいのかが分からない。
「初めてではありませんよ、ジン様、この間庭園でお会いしましたよね?」
ああ!あの時の女性か!通りで見覚えがあるはずだ。
「ハーモニーと申します。よろしくお願いしますね。こちらが娘のミールです。今回あなたの婚約者としてお願いしている娘ですわ」
「ミールですわ」
そう言ってドレスの裾をつまんで膝を折り頭を下げる。まあ正式な挨拶なんだけど、その後がいけない。
「あなたが異世界人のジンですわね。お父様が選んだっていうからどんな美丈夫がくるかと思ったら冴えない顔してるわね。それに37だったかしら?歳もいってるし。なんでお父様はあなたなんかを選んだのかしら」
事実だけに心に突き刺さる。
「私は皇女よ。他国の王妃も可能な身分なの。あなたなんかに嫁いでいい事あるのかしら」
あれ?この子俺と女神様との事を知らない?
「ジン様、申し訳ありません。この子の本来の姿を見せるのが望ましいと思いましたので詳細は伝えておりません。婚約者となるのに猫を被ったままではどうかと思いまして」
いやそれは猫被ってても良いんじゃないかな?ずっと被り続けてくれるのが条件だけど。
「この子は絶対にどこかで我慢出来ずに馬脚を現します。なので素の状態を見ていただこうかと思いました」
なるほど。ずっと猫を被ってれるほどの性格はしてないのか。
「お母様、私はまだこの婚約を納得してませんわ。お父様にも会うだけだと言ってありますし、それで良いと許可をもらってますわ。
その上で言うと、こんな頼りない男性の元には行きたくありませんわ」
ぐさっときたぞ。
「まあまあ、まずはお茶でもしながらお話でもしましょう。第1印象だけで決めると損をしますよ」
「まあお茶くらいは良いけど・・・」
はあ、せめて本人の了承くらい取っておいてくれませんかね?まだ会ってない皇帝陛下?俺から口説く気はありませんよ?
「・・・それでは女神様と会われたのですね?」
「ええまあ。誤召喚の謝罪をされただけですが、一応会った事にはなりますね」
「女神様が会われるなんて初めての事ですわ。よほど気に入られたんですのね」
気に入られてるのはグリッドさんになんだが。リスモット様は下級神だから逆らえないだけだろうし。
「ちょ、ちょっとお母様、私そんな話聞いてないわよ?!女神様と直接お会いしたなんて!」
「そうね、言ってなかったものね。でも事実よ。教会が認めてるのだから。あなたももっと外に興味を持ちなさい。夜会にでも出てれば話の一つくらいは聞こえてきたはずですよ」
「う・・・でも晩餐会とか男性が言い寄ってきて鬱陶しいだけですし」
「それも皇女としての務めですよ。今回の縁談がまとまればそう言うのも無くなるでしょう」
とまあミール様が俺の悪口を言って皇后様がとりなすような感じでお茶会は進んだ。俺この婚約断っても良いかな?本人が納得してないのに来られても困るんだが。問題起こしそうだし。
ミール様は俺の婚約者候補で皇帝の第3皇女になる。ハンバルニ王国で事前に聞いた情報では深窓のお嬢様らしい。控えめで常に男性をたて、話題は豊富で貴族女性の人気も高いと。
なんでそんな好条件の物件が俺に回ってくるのかは疑問だが、年齢的な問題かもしれない。この世界の適齢期は10代後半だからね。
俺の年齢からしたら行き遅れを充てがわれても文句は言えないと思うんだけど。国もメンツ的な事とか?
とにかく今日はミール様とのお茶会なので正装をして向かっている。まあ迎賓館からなのでそれほど距離はないんだが。ただ歩いて行ける距離でも馬車でいくのが普通だそうなので馬車に乗っている。
「ジン様、今日は失礼のないようにお願いしますね。一応先方からの婚約申し出ですから問題はないと思いますが、帝国の意図がわからないうちは言質を与えないようにしてください。もし難しい質問や約束事になったらその場では返事せずにお嬢様に手紙を出して相談してください。
この国に滞在する期間が長くなりますが、その方が安全です」
まあ俺も分かっている。ロザリア王国では国王様の外堀埋め作戦に引っ掛かったからね。今回はそんな隙は見せないよ?婚約は既定路線とは言え結婚の時期だけは俺が帰る時期よりも後にするのが良い。そしてそれよりも結婚の時期に関して約束しないのがベストだ。
さて、お茶会の庭園に着いたが、その場所には2人の女性がいた。一人は30代くらいだろうか。どこかで見た顔だ。もう一人はもう少し若くて20歳くらいだろうか。
「お初にお目にかかります。異世界人のジンと申します」
そう言って跪いた。正直この対応が正しいのかは知らない。皇帝陛下相手なら確実にこれでいいはずだが、皇女様相手にこれでいいのかが分からない。
「初めてではありませんよ、ジン様、この間庭園でお会いしましたよね?」
ああ!あの時の女性か!通りで見覚えがあるはずだ。
「ハーモニーと申します。よろしくお願いしますね。こちらが娘のミールです。今回あなたの婚約者としてお願いしている娘ですわ」
「ミールですわ」
そう言ってドレスの裾をつまんで膝を折り頭を下げる。まあ正式な挨拶なんだけど、その後がいけない。
「あなたが異世界人のジンですわね。お父様が選んだっていうからどんな美丈夫がくるかと思ったら冴えない顔してるわね。それに37だったかしら?歳もいってるし。なんでお父様はあなたなんかを選んだのかしら」
事実だけに心に突き刺さる。
「私は皇女よ。他国の王妃も可能な身分なの。あなたなんかに嫁いでいい事あるのかしら」
あれ?この子俺と女神様との事を知らない?
「ジン様、申し訳ありません。この子の本来の姿を見せるのが望ましいと思いましたので詳細は伝えておりません。婚約者となるのに猫を被ったままではどうかと思いまして」
いやそれは猫被ってても良いんじゃないかな?ずっと被り続けてくれるのが条件だけど。
「この子は絶対にどこかで我慢出来ずに馬脚を現します。なので素の状態を見ていただこうかと思いました」
なるほど。ずっと猫を被ってれるほどの性格はしてないのか。
「お母様、私はまだこの婚約を納得してませんわ。お父様にも会うだけだと言ってありますし、それで良いと許可をもらってますわ。
その上で言うと、こんな頼りない男性の元には行きたくありませんわ」
ぐさっときたぞ。
「まあまあ、まずはお茶でもしながらお話でもしましょう。第1印象だけで決めると損をしますよ」
「まあお茶くらいは良いけど・・・」
はあ、せめて本人の了承くらい取っておいてくれませんかね?まだ会ってない皇帝陛下?俺から口説く気はありませんよ?
「・・・それでは女神様と会われたのですね?」
「ええまあ。誤召喚の謝罪をされただけですが、一応会った事にはなりますね」
「女神様が会われるなんて初めての事ですわ。よほど気に入られたんですのね」
気に入られてるのはグリッドさんになんだが。リスモット様は下級神だから逆らえないだけだろうし。
「ちょ、ちょっとお母様、私そんな話聞いてないわよ?!女神様と直接お会いしたなんて!」
「そうね、言ってなかったものね。でも事実よ。教会が認めてるのだから。あなたももっと外に興味を持ちなさい。夜会にでも出てれば話の一つくらいは聞こえてきたはずですよ」
「う・・・でも晩餐会とか男性が言い寄ってきて鬱陶しいだけですし」
「それも皇女としての務めですよ。今回の縁談がまとまればそう言うのも無くなるでしょう」
とまあミール様が俺の悪口を言って皇后様がとりなすような感じでお茶会は進んだ。俺この婚約断っても良いかな?本人が納得してないのに来られても困るんだが。問題起こしそうだし。
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