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第4章 アレグスト帝国編
084 水の精霊(3)
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#084 水の精霊(3)
(だからね、この位の魔力をもらえればこの樽をいっぱいにするくらいの水が出せるわ)
ウンディーネは水の体がないから念話という契約で使えるようになった話し方で話してくる。
(じゃあ水の量次第で必要な魔力が変わるのか?)
(当然ね。あなたが飲む分だけならほとんど魔力は必要ないわ)
(魔物とは戦えるのか?)
(魔物にもよるけど、あの森にいた魔物なら大概は大丈夫よ。ただワイバーンは別ね。私も空は飛べるけどそれほど得意ってわけじゃないし)
空飛べるんだ・・・。
(あの森はゴブリンやせいぜいオークくらいしかいないから普通に安全よ)
ゴブリンはともかくオークもせいぜい扱いなのか。
(奥の方にいったらドラゴンがいるから気をつけてね。温厚なドラゴンだからこちらから仕掛けない限りは襲ってこないでしょうけど、子育て期とかだと荒くなるから)
ドラゴンいたんだ・・・。それにしても会ったような言い方だけど。
(会ったわよ?随分と昔だったけどね。まだ赤ん坊の幼竜を連れていたわ。今頃はどのくらい大きくなったかしらね)
会ったのか。子育て期に会わなくてよかった。もし会ったのがウンディーネじゃなくてドラゴンの方だったら俺の人生終わってただろう。
「ジン様、さっきから百面相されてますが、何か考え事ですか?」
ああ、しまった。今俺は使者さんの馬車に乗せてもらっている。俺の馬車はワイバーンに持っていかれたからな。
使者用の馬車が2台あって良かった。荷馬車の方が狙われてたら使者も交渉をうまく運べないだろうし。
(ねえねえ、さっきからこの人、使者?があなたを睨んでるけど嫌われてるの?)
(まあそう言っても良いかな。一般人の俺がメインで訪問するのが気に入らないんだろう。使者に選ばれるんだから有能なんだとは思うけど)
(じゃあちょっと悪戯しちゃう?こっそりと股間を濡らしておくとか。寝てる間に水かけるとか)
悪戯が全部水関係だけど、まあ好きにしてくれ。俺が疑われないなら構わない。この人嫌いだしね。ずっと俺を見下した目で見てるんだもの。
しかも俺の姿勢が崩れたら細かく注意してくる。
「その程度の揺れで倒れ込むようでは鍛え方がたりませんな」
「背が曲がってますぞ。あなたは主賓なんです。しっかりと体に芯を通して欲しいものですな」
「寝てはダメですぞ。夜寝れなくなります。国内の遊興旅行ならともかく今回は国の使者として向かうんです。生活を律すのは当然ですぞ」
言いたいことは分かるけど、俺昨日寝てないんだ。うとうとするくらいは許して欲しい。
それに聞いて分かったのだが、ウンディーネは寝る必要がないらしい。というか寝るというのがどういう状況がよくわからないらしい。精霊は自然の一部だから24時間常に情報は入ってくるし、水が不足してる場所には水を提供したりしている。今は俺の魔力を使って。
あの湖は魔力溜まりになっていて、住むのに心地よい場所だったらしい。それが俺の魔力の方が魅力的になったので俺についてくる事にしたと。
俺の魔力が気持ちいいんじゃなくてグリッドさんの加護がそう感じさせてるんじゃないかと思ってるんだけどね。
ウンディーネは俺と念話で喋ってる時以外は馬車の外に出ている。精霊に壁はあまり意味がないらしい。そして外で何かしてるようなんだけど、俺には魔力を持っていかれてるとしか分からない。
結構持っていかれてるような感覚があるが魔力切れになる感じはしない。多分ウンディーネが使う魔力の量を加減してるんだろう。
まあ俺に使う予定のない魔力で世界が良くなるならそれで良いだろう。俺にも何かこの世界に役に立ってるって事だし。
「ジン様、お一人の時はどうされてたんですか?狼に襲われたと聞きましたが」
ああ、ようやくその話になったか。いつ聞かれるかとビクビクしてたんだよね。
一応ウンディーネと話し合った嘘の話は作ってある。
「ああ、落ちた場所でしばらく休んでたら狼に囲まれてね。必死で1匹に斬りつけて、そのまま逃げたんだ。なぜか追ってこなかったから逃げ切れたんだけど。俺が逃げた後に何かと遭遇したんじゃないかな?俺が倒してないのは間違いないよ」
「そうですか。それでどうやってこの場所を探し出したんですか?」
この質問が一番困る。ウンディーネに案内されたと言えれば簡単なんだけど、精霊の扱いが分からない以上、話さない方向でまとめるしかない。
「俺って馬車の扉から落ちただろう?あれって右扉だったから、ワイバーンが移動したのは左側だったと検討をつけたんだ。途中で夜になったから移動はやめたんだけど、なんとか戻ってこれたよ」
「そうですか。何にせよ無事戻ってきてくれて良かったです。もしこれでジン様が亡くなっていたら今回の遠征に参加した全員の首が飛んでたでしょうから。物理的に。」
え、そんなにひどい罰になるの?
「ジン様、国の使者のやり取りなら送りなおせば済みます。ですが、今回は皇女様の輿入れの話し合いです。当の本人が途中で死にましたでは済まされません。婚約前とはいえ国同士の間にヒビが入ります」
それなら俺が迎えに行くんじゃなくて向こうから来てくれた方が早かったんじゃ?
「ロザリア王国のハルフェ殿下ははからずともジン様が迎えにいった形になりました。他の国も同様の扱いを望んでいます。
通常の輿入れでしたら女性の側が旅をして男性の領地に向かいます。ですが、迎えにくるというのは愛されているという意思表示でもあるのです。ロザリア王国の王女を迎えに行くなら自国も当然迎えに来てくれますよね?という話です」
面倒だな。もっとビジネスライクに行けないものかね。
「はぁ、ジン様はまだご自身の価値を過小評価しています。今の貴族の話題はジン様の結婚相手が誰になるかですよ。後は順位ですね。
もうジン様が異世界人かどうかと関係なく、各国の王女が嫁いでくる何やらすごい人という扱いになっています。
ジン様の発言次第では王女様経由で各国の王に直接情報が届くのです。一般人かどうかにかかわらずジン様の発言力は高まります。
当然貴族も商人も黙っていません。側室や愛人でいいからと女性を送ろうとしてくるでしょう。もし王女様がたと仲良くなれれば自分の利益になるのですから」
面倒だな。そう言ったの全部任せられる人いないかね?家宰って言うんだっけ?そう言う人探してみようかな。面倒なことを全部任せれる人。
メイドとかたくさん雇うみたいだし、一人くらい追加しても良いよね?
(だからね、この位の魔力をもらえればこの樽をいっぱいにするくらいの水が出せるわ)
ウンディーネは水の体がないから念話という契約で使えるようになった話し方で話してくる。
(じゃあ水の量次第で必要な魔力が変わるのか?)
(当然ね。あなたが飲む分だけならほとんど魔力は必要ないわ)
(魔物とは戦えるのか?)
(魔物にもよるけど、あの森にいた魔物なら大概は大丈夫よ。ただワイバーンは別ね。私も空は飛べるけどそれほど得意ってわけじゃないし)
空飛べるんだ・・・。
(あの森はゴブリンやせいぜいオークくらいしかいないから普通に安全よ)
ゴブリンはともかくオークもせいぜい扱いなのか。
(奥の方にいったらドラゴンがいるから気をつけてね。温厚なドラゴンだからこちらから仕掛けない限りは襲ってこないでしょうけど、子育て期とかだと荒くなるから)
ドラゴンいたんだ・・・。それにしても会ったような言い方だけど。
(会ったわよ?随分と昔だったけどね。まだ赤ん坊の幼竜を連れていたわ。今頃はどのくらい大きくなったかしらね)
会ったのか。子育て期に会わなくてよかった。もし会ったのがウンディーネじゃなくてドラゴンの方だったら俺の人生終わってただろう。
「ジン様、さっきから百面相されてますが、何か考え事ですか?」
ああ、しまった。今俺は使者さんの馬車に乗せてもらっている。俺の馬車はワイバーンに持っていかれたからな。
使者用の馬車が2台あって良かった。荷馬車の方が狙われてたら使者も交渉をうまく運べないだろうし。
(ねえねえ、さっきからこの人、使者?があなたを睨んでるけど嫌われてるの?)
(まあそう言っても良いかな。一般人の俺がメインで訪問するのが気に入らないんだろう。使者に選ばれるんだから有能なんだとは思うけど)
(じゃあちょっと悪戯しちゃう?こっそりと股間を濡らしておくとか。寝てる間に水かけるとか)
悪戯が全部水関係だけど、まあ好きにしてくれ。俺が疑われないなら構わない。この人嫌いだしね。ずっと俺を見下した目で見てるんだもの。
しかも俺の姿勢が崩れたら細かく注意してくる。
「その程度の揺れで倒れ込むようでは鍛え方がたりませんな」
「背が曲がってますぞ。あなたは主賓なんです。しっかりと体に芯を通して欲しいものですな」
「寝てはダメですぞ。夜寝れなくなります。国内の遊興旅行ならともかく今回は国の使者として向かうんです。生活を律すのは当然ですぞ」
言いたいことは分かるけど、俺昨日寝てないんだ。うとうとするくらいは許して欲しい。
それに聞いて分かったのだが、ウンディーネは寝る必要がないらしい。というか寝るというのがどういう状況がよくわからないらしい。精霊は自然の一部だから24時間常に情報は入ってくるし、水が不足してる場所には水を提供したりしている。今は俺の魔力を使って。
あの湖は魔力溜まりになっていて、住むのに心地よい場所だったらしい。それが俺の魔力の方が魅力的になったので俺についてくる事にしたと。
俺の魔力が気持ちいいんじゃなくてグリッドさんの加護がそう感じさせてるんじゃないかと思ってるんだけどね。
ウンディーネは俺と念話で喋ってる時以外は馬車の外に出ている。精霊に壁はあまり意味がないらしい。そして外で何かしてるようなんだけど、俺には魔力を持っていかれてるとしか分からない。
結構持っていかれてるような感覚があるが魔力切れになる感じはしない。多分ウンディーネが使う魔力の量を加減してるんだろう。
まあ俺に使う予定のない魔力で世界が良くなるならそれで良いだろう。俺にも何かこの世界に役に立ってるって事だし。
「ジン様、お一人の時はどうされてたんですか?狼に襲われたと聞きましたが」
ああ、ようやくその話になったか。いつ聞かれるかとビクビクしてたんだよね。
一応ウンディーネと話し合った嘘の話は作ってある。
「ああ、落ちた場所でしばらく休んでたら狼に囲まれてね。必死で1匹に斬りつけて、そのまま逃げたんだ。なぜか追ってこなかったから逃げ切れたんだけど。俺が逃げた後に何かと遭遇したんじゃないかな?俺が倒してないのは間違いないよ」
「そうですか。それでどうやってこの場所を探し出したんですか?」
この質問が一番困る。ウンディーネに案内されたと言えれば簡単なんだけど、精霊の扱いが分からない以上、話さない方向でまとめるしかない。
「俺って馬車の扉から落ちただろう?あれって右扉だったから、ワイバーンが移動したのは左側だったと検討をつけたんだ。途中で夜になったから移動はやめたんだけど、なんとか戻ってこれたよ」
「そうですか。何にせよ無事戻ってきてくれて良かったです。もしこれでジン様が亡くなっていたら今回の遠征に参加した全員の首が飛んでたでしょうから。物理的に。」
え、そんなにひどい罰になるの?
「ジン様、国の使者のやり取りなら送りなおせば済みます。ですが、今回は皇女様の輿入れの話し合いです。当の本人が途中で死にましたでは済まされません。婚約前とはいえ国同士の間にヒビが入ります」
それなら俺が迎えに行くんじゃなくて向こうから来てくれた方が早かったんじゃ?
「ロザリア王国のハルフェ殿下ははからずともジン様が迎えにいった形になりました。他の国も同様の扱いを望んでいます。
通常の輿入れでしたら女性の側が旅をして男性の領地に向かいます。ですが、迎えにくるというのは愛されているという意思表示でもあるのです。ロザリア王国の王女を迎えに行くなら自国も当然迎えに来てくれますよね?という話です」
面倒だな。もっとビジネスライクに行けないものかね。
「はぁ、ジン様はまだご自身の価値を過小評価しています。今の貴族の話題はジン様の結婚相手が誰になるかですよ。後は順位ですね。
もうジン様が異世界人かどうかと関係なく、各国の王女が嫁いでくる何やらすごい人という扱いになっています。
ジン様の発言次第では王女様経由で各国の王に直接情報が届くのです。一般人かどうかにかかわらずジン様の発言力は高まります。
当然貴族も商人も黙っていません。側室や愛人でいいからと女性を送ろうとしてくるでしょう。もし王女様がたと仲良くなれれば自分の利益になるのですから」
面倒だな。そう言ったの全部任せられる人いないかね?家宰って言うんだっけ?そう言う人探してみようかな。面倒なことを全部任せれる人。
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