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第2章 ロザリア王国編

072 帰る準備

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#072 帰る準備

「ジン様、来週に騎士団が到着するそうです」

 ようやくか。ハンバルニ王国から迎えの騎士団が到着するらしい。俺は私的な訪問となったいたから騎士団はついてこなかったが、ハルフェ殿下と婚約するとなると別らしい。一応俺がハンバルニ王国所属だと示したいんだろうね。所属した覚えはないけど。

「そうか。なら後1週間ほどか。何かやり残した事ないかな?」

「ジン様、お嬢様へのお土産はどうされるつもりですか?」

 あ・・・そういや買いに出たは良いけど結局買わなかったんだよね。

「いや、忘れてたわけじゃないよ?知ってるとは思うけど一度は買いに出かけたし?ちょっといろいろあっただけだし?」

「ええ、そうでしょうとも。婚約者を連れて帰って、お土産もないんじゃお嬢様が可哀想ですわ」

 いや婚約者とは関係ないんじゃ・・・あれ、ハルフェ殿下的にはリリアーナさんも俺の婚約者候補?あれ?

「王女殿下が婚約者として嫁ぐのですからハンバルニ王国もそれなりの人を選ばなくてはなりません。王族で言えば上の王女様方は婚約者が決まっておりますし、下の王女様はまだ9歳です。なので適齢期でフリーなのはお嬢様だけです。
 次は侯爵家になりますが、ロザリア王国が王女を出している上で公爵が空いているのに下の者を出すわけにもいきません。お嬢様に婚約者がいれば話は別だったのですが。あの方も男性の巡り合わせは悪いですので」

 あー、なるほど。確か下の王女は9歳だったな。押し付けても困る。成人する頃には俺は結構な歳になってるだろう。

 やっぱり女神様と直接お話ししたのがまずかったのかね?あの時何もなかったとでも言っておけば良かったのか?今更だが。
 数年で帰る俺に王族クラスが4人ねえ。それも大国だ。フォンビ殿下も確か婚約者はいたはずだけど国内の貴族だったと思う。外国の王女とかになるとそれこそ何故あの国だけ、みたいな話になりかねないそうだ。まあ今は各国と仲がいいから大丈夫らしいけど。

 それが俺の場合は各国が王女を出してくるのか。はあ。

「ジン様、お土産を探すのでしたら商会を回る必要があります。早い目に動いた方がよろしいかと」

 ああ、そうだった。俺の婚約の話は後にしよう。うん、先延ばしじゃないよ?

「じゃあ、どこの商会がいいかな?王家の御用商人とかだと俺の小遣いで買えるものなんかないだろうし」

「そうですね。普通に街の装飾品店に行けば良いのではないでしょうか。あ、まさか置物とか考えてませんよね?そんなお土産もらったらお嬢様が泣きますよ?」

「いや、流石にそんな物は考えてないけど、そういう土産もありなの?」

「家族への土産としてはありますね。ただ置き場所に困るでしょうからあまり喜ばれませんが」

 ああ、海外に行った時の土産とか困るよね。地元の人形とか渡されても。熊の彫り物とかもそうか。いや、実家の応接間には飾ってあったんだけどね。他に置いてあるのと明らかに浮いてるんだよね。

「ちょっと地元の使用人にどこか良い商会がないか聞いてきますね。しばらくお待ちください」

 あ、こっちでも使用人ネットワークってあるんだ。すでに構築してるとはクレア、怖い子。



「ジン様、お待たせしました。馬車の用意ができました」

 あれ、良い商会がないか聞いてくるって話だったよね?もう馬車用意したの?

「あれ、すぐに向かわれるんですよね?もしかして先走りすぎましたか?」

「いや、構わないよ。すぐに行こう」

 昼食は外で食べるか。




「こちらの店のようですね」

 普通の店だな。周りの店よりも広い感じはするけどそのくらいだ。

「どういう基準で選んだんだ?」

「使用人が使って恥ずかしくない程度の装飾品の中でも高価なものを扱っている店です。お嬢様が使う分には安っぽくなりますがジン様のお小遣いではこのくらいでしょう」

 地味に俺に稼ぎがないと言われてるよね。確かに大銀貨数枚じゃ女性の装飾品には不足だろうけどさ。数十万円と考えれば・・・いや公爵が使うには帽子の値段にすらならないな。ハンカチ程度か?日本でも婚約指輪は給料3ヶ月分だし数十万はするよな。
 いや、婚約から離れろ、俺。まだ決まったわけじゃない。

「いらっしゃいませー」

 この”いらっしゃいませー”は各国共通なのか?どこの店行っても聞くんだが。

「すいません、女性へのお土産を探してるんですけど」

「その方とはどういうご関係でしょうか?」

「そうですね。養って・・・いえ、お世話になっている方です」

「そうですか。ご予算の方は?」

「大銀貨3枚でお願いします」

「それだけあればいろいろと候補はありますが、当店は装飾品を扱っていますが、装飾品でよろしいんですよね?」

「ええ、何か問題がありますか?」

「いえ、なんでもありません。そうですね、お相手の見た目とかどう言った感じでしょうか?」

「えっと、金髪碧眼、髪は肩までです。顔立ちは可愛らしい感じでしょうか。年齢は20過ぎくらいです。クレア、リリアーナさんの歳って何歳だ?」

「22です。あ、言ってしまって良かったんでしょうか?もう行き遅れの歳ですし。いえ、ジン様と婚約されるんですし大丈夫でしょう。ええ、大丈夫です」

 いや、非常に問題がありそうだが、まあ22か。一回り以上違うな。

「だそうです。何かいいものはありますか?」

「それでしたらこちらの銀製の髪飾りとかいかがでしょうか?小粒ですが宝石をあしらってありますのでアクセントになっていますし。
 あとはこちらのイヤリングでしょうか。あ、普段装飾品は付けられている方ですか?」

「いや、あんまり着けてるところは見たことがないような気がしますね。クレア、どうなの?」

「あまりつけませんね。公式の場では着飾りますが、普段はそれほど気にされていません。でもジン様からの贈り物でしたら毎日つけられるのではないでしょうか?」

 いや、俺のお土産って言ったって公爵家からしたらゴミだよ?高いとは言え使用人が買える程度のものだし。

「普段つけられてないならイヤリングはやめた方が良いですね。結構外れやすいですので慣れてない方だと簡単に落としてしまいます」

 ああ、ピアスタイプじゃないのね。小さなネジなんてないだろうから純粋に耳たぶの太さで支えるんだろうし。

「ならこちらはいかがでしょうか?装飾品ではありませんが、櫛です。もちろんすでにお持ちでしょうが、こちらは持ち歩きがしやすいように小さく作られています。出先などでちょっと整えるなどに良いかと思います」

 携帯用の櫛か。どうなんだろう?日本だとポーチとかにいろいろと化粧とか入れてるらしいけど。

「どう?」

 クレアを見て聞くと、首を振られてしまった。

「お嬢様がメイドを連れずに移動する事はありません。そして化粧が必要なら必ずちゃんとした道具を持っていきます。わざわざ携帯用のものを使う場面がありません」

 なるほど。庶民の俺からしたら自分で持ち歩けるのは便利だと思うけど、貴族からしたらちゃんとしたやつを持ち歩けるのか。嵩張るだろうに。

「あ、あのブローチはどんな感じですか?宝石は使われてませんけど、結構良さそうですけど」

「あれですか・・・」

 店員さんのテンションが下がったな。

「確かにつくりはしっかりとしていますし彫りもちゃんと入ってますが・・・」

「何か問題でも?」

「話を聞く限り、結構なお嬢様ですよね?でしたらこのランクの装飾品では返って失礼になるかと」

 格の問題か。だけど俺的にはあのくらいの奴の方が身の丈にあってるというか。

「あれはいくらですか?」

「銀貨6枚です」

 あれ、結構安いな。

「銀で縁取りをしていますが、彫り物自体は木製です。他に宝石なども使ってませんし、これでも高い方なんです」

 ああ、そうか。木彫りだから落ち着いた気分になったのか。熊の置物も馬鹿にできないな。

「じゃあ、そのブローチをお願いします」

「はい・・・」

 もしかして高い買い物じゃなかったから落ち込んでるとか?予算は大銀貨3枚って言っちゃったしな。

「ああ、さっきの携帯用の櫛もください。別に包んでもらえますか?」

「はい、ありがとうございます!」

 ちょっと復活したな。このまま購入まで持っていってさっさと帰ろう。

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