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第2章 ロザリア王国編

071 贈り物

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#071 贈り物

 俺はハルフェ殿下に誘われて街に繰り出していた。もちろん騎士の護衛付きだ。しかも馬車。

 どこに行くのかというと装飾品店らしい。普通は王族は店側を呼びつけて買い物をするらしいが、今回はそれほど時間をかけたくないから自分で買いに行くことにしたらしい。
 行き先は普通に御用商人の元だ。


「いらっしゃいませー、ってファルフェ殿下!ようこそおいでくださいました。今回は急用ですか?」

「ええ、今度輿入れするのは聞いてますね?その際に持っていく贈り物を探しています」

 あー、もういいけど、輿入れなのね。
 それに話を聞くと結納品は俺じゃなくて他の相手に持っていくらしい。もちろんロザリア王国も国として何か用意するのだろうが、これは個人的に持っていく贈り物らしい。
 装飾品という時点で嫌な予感はするのだが。

「どういった物をお求めでしょうか?」

「そうですね。数は3つ。それぞれ違う物がいいわね。無難なのはネックレスか腕輪あたりかしら?」

「そうでございますね。少々お待ちください。商品を持って参ります」

 流石に店先で話しているわけじゃない。奥の部屋に通されてお茶を出された後だ。この店はもともと高級品だけを扱う店らしく、注文を聞いてから希望に沿った物を出してくる形式だ。


「こちらなどはいかがでしょうか?全てネックレスですが、宝石を変えてあります。デザインはハウターナーの作です。殿下が贈り物をするのであればこのくらいは必要かと」

「そうですね。悪くありませんが、やはり全部ネックレスというのもどうかと思いますね。腕輪やブローチなども見せてもらえますか?」

「はい、少々お待ちください」

 俺としては意見を言ってから商品が出てくるまでの間がもたない。正直展示してあるのをざっとみて気に入ったのを買う方が性に合ってる。

「ハルフェ殿下、俺がここにいる意味あります?」

「ハルフェですわ。呼び捨てにしていただける約束ですわよ」

 いや、約束まではしてないはず。多分。何度も言われてるから適当に返事してたような気もする。

「それで、俺がここにいる理由はなんでしょう?」

「ジン様の好みも知っておきたいからですわ。このネックレスでしたらどれが良いと思いますか?」

 いや、俺に装飾品について聞かれても困る。正直どれも同じに見える。だけど多分それを言ったら不機嫌になるだろうから、なんらかの理由を付けてどれか選ばないといけない。

「そうですね。殿下の目に合わせて青いのがいいんじゃないでしょうか」

 青色の宝石がなんなのかは忘れた。聞いたそばから忘れるなんて俺も歳かなぁ。

「ハルフェですわ」

「はいはい、ハルフェ」

 だんだん殿下の扱いが適当になってきたような気がする。

「お待たせしました。こちらの腕輪とブローチはいかがでしょうか。指輪もありましたが、贈り物ということで除外させていただきました」

「あら、結構ありますね。ジン様はどれがお好みですか?」

 俺はそれどころじゃない。目の前の大きめのテーブルに並んだ商品の数が尋常じゃない。それもどれもこれもが大粒の宝石を使っている。

「目移りしてしまって選ぶのは難しいですね」

 俺は庶民なのだ。こんなキラキラした宝石を並べられてもわからんそもそも誰を想定してるんだ?

「そうですねぇ、アレグスト帝国からは第3皇女が来るでしょうから赤系でしょうか。マモルス王国は分かりませんね。だとすると無難なものになりますし。ハンバルニ王国はやはりマクダウェル公爵でしょうか。あの方はあまり装飾品を好まれなかったようですが」

 もしもし?他の国の王女が話に出てきたけど、それってなんですかね?リリアーナさんの話も出てるし。

「あら、もちろんジン様に嫁ぐ予定の方ですわ。私が輿入れすると聞いたらからなず誰かを寄越すはず。ならば仲良くなるためにも何か贈り物を用意しないと」

 ああ、考えないようにしてたんだけど、やっぱり国相手の贈り物じゃなくて個人的な贈り物だったのね。装飾品の店だから女性向けだとははっきりしてたけど、俺の嫁候補相手だとは思いたくなかった。半分分ってたけどね!

「緑や黄色もいいですが、やはり汎用性を考えると金か銀でしょうか。帝国には赤系の宝石を使ったものにして・・・」

 何やら色々と考えているようなので邪魔しないように商品を眺めていく。正直どれも高そうだとしか感じないが、一つだけ気になったのがあった。何か雰囲気が違うというか浮いてるような気がするのだ。

「すいません、この腕輪はどう言ったものでしょうか?」

 その商品は銀でできた宝石の付いていないブレスレットだった。細いので邪魔になったりはしないだろう。

「これはお目が高い。こちらは魔法がかかった品になります。それほど強力なものではありませんが、治癒魔法がかかっております。せいぜい肌がきれいになる程度ですが、女性取っては無視できない魔法でして」

 ふむ、治癒魔法使いは少ないと聞いてるし、それを付与したブレスレットなら高価なんだろう。

「ちなみにいくらですか?」

「希少な治癒のかかった物ですので、1億3千万Rになります。高貴な女性は指先にも気を使うものです。贈り物としては良いと思いますが」

 金貨130枚だったよ!俺の手持ちっていくらだっけ?確か大銀貨が数枚と銀貨や銅貨だったと思う。
 なんかハンバルニ王国が金貨200枚用意してくれるとか言ってたような気はするが、手元にはない。

「ジン様、これは買いです。お嬢様に贈れば喜ばれます」

 後ろからクレアが進言してきた。いや、確かに女性は喜ぶかもしれないけど、金貨130枚はねえ。

「あら、それは良いものですね。それは買いましょう。それとこちらのブローチとネックレスを。後はこの髪留めをお願いしますわ」

「承知しました。王宮にお届けすればよろしいですか?」

「ええ、支払いも国に請求してください」

 え、金貨130枚だよ?それに他のアクセサリーも値段聞かずに買っちゃったよ。一体いくらになるんだ?

「ジン様、ハルフェ殿下は王族です。輿入れの贈り物にお金をかけるのは当たり前です。その家での自分の格に関わるのですから」

 クレアが説明してくれる。確かに相手よりもいい物をプレゼントすれば精神的に優位に立てるだろうけど。そこまですることか?

「女性の関係は複雑です。こう言ったことの積み重ねで立場が決まっていくんです」

 さすがはクレア。貴族の女性に関しても把握している。
 しかし面倒だなあ。これって女性同士で争うのが前提だよね?俺ってそんなハーレム望んでないんだけど。

「良い買い物ができましたわ。ジン様、お食事でもして帰りませんか?」

「ああ、いいですね。マヨネーズを使った料理を出す店はありますか?」

「ええ、これから予定している店でもありますよ。ではそちらに参りましょうか」

 マヨネーズはクレアへのご褒美だ。給仕は店がやるので使用人は別の部屋で食べることになる。クレアはマヨネーズが好きなようなので食べさせてやろうと思ったのだ。


 ちょっとマヨネーズで胸焼けしそうだ。この国でしか食べれないからと言って全ての料理に使うもんじゃないと思う。

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