異世界召喚？やっと社畜から抜け出せる！

第２章 ロザリア王国編

070 石鹸とタオル

#070 石鹸とタオル

　俺はクレアを連れて街に出ようとして、止められた。やっぱり騎士がついてくるらしい。できれば事前に予定を相談してほしいと言われてしまった。
　まあ行きたいのは雑貨屋だ。そこだけ寄って帰ればそれほど目立たないだろう。多分。


　雑貨屋に着くと、騎士たちに外で待っててもらい、中に入る。

　今日欲しいのは石鹸だ。もちろん別棟だとはいえ王宮にはちゃんと石鹸が用意されている。ただ、俺の体にあってないのだ。
　この世界では布袋に何かの植物を入れておけで溶かして使う。だけど、俺が使うと肌がカサカサになるのだ。これはハンバルニ王国でもそうだったのだが、良い石鹸がなかったのだ。なのでこの国ならあるかもと思って買いにきた。

「何か乾燥肌にいい石鹸はありませんかね？」

「乾燥肌かい？まあ無いこともないけど、うっすらと油を塗った方が安くつくよ？」

「油はなんかベタベタするような気がして好きじゃないんです。できれば石鹸か何かで対応できると嬉しいんですけど」

「ならこれを試しちゃどうだい？若い錬金術師が作ったもんだけど、汚れだけ落として肌の水分油分は残してくれる優れものだよ。
　ただ、最近作られたからほとんど手探りでね。ダメもとで使ってみないかい？」

　新作か。なら出回ってないのも納得だな。俺の目には固形石鹸にしか見えないが。

「布に擦り付けるようにして泡だてて使うらしいよ。泡だてたら体に塗ってしばらく置くと汚れば浮き出るそうだ。安くしとくから使った感想を聞かせてもらえないかい？」

「それなら試してみようと思います。体に害はないんですよね？」

「少なくとも手を洗う程度なら問題なかったよ」

「じゃあ、それをお願いします」

　俺はクレアにお金を払ってもらって石鹸を手に入れた。


　次は服屋だ。別に服が欲しいわけではない。欲しいのは布だ。王宮では最高級の布を使っているのだが、吸水性が悪いように思うのだ。多分俺が思ってるタオルとは違う目線で最高級なんだと思う。

　俺が探してるのは毛の長いタオルだ。吸水性に優れ、擦るように体を吹かなくてもポンポンと皮膚を叩くだけで水を吸ってくれるタイプのものだ。
　擦るように体を拭くと大事な油分なども一緒に取れてしまうので乾燥が進むのだ。

　タオルを見せてもらうとどれも似たようなもので、基本拭って体を拭くものだ。

　俺は要望を伝えると、まだ布の段階の物が出された。

「まだ何に使うのかは決めてないんですけどね。吸水性はバッチリですよ。ただその分乾くのに時間がかかるんです。雨の日や冬とかだと乾きにくいんです」

「毛が長く確かに吸水性は高そうですね。これでタオルは作れますか？」

「え、でも洗った後乾かすの大変ですよ？肌触りはいいのでクッションにでもしようかと思ってたんですが」

「タオルを２枚お願いします。別に乾きが悪いからって返品しませんよ」

「そうですか。なら夕方くらいに来てもらえますか？それまでに作っておくので」

「お願いします」


「ジン様、乾燥肌なんですか？今まで一度も聞きませんでしたが」

「普段は気をつけてるんだけどね、体を拭くときって汚れを落とすためにゴシゴシ擦るでしょう？それだと大事な油分とかも一緒に落ちちゃうんだよね。だから柔ない布が欲しかったんだ。
　王宮で使ってるものも基本は拭うためにある程度硬いのを使ってるでしょ？柔かいのでどのくらい汚れが落ちるかにもよるけど、使えるなら使いたいね」

「石鹸でも似たようなことを仰ってましたけど、それほど乾燥肌はひどいんですか？」

「まあそうだね。俺はバスタブの中で体を洗うのが苦手だからさ。基本体を拭いて汚れを落としてるんだ。バスタブはつかるだけだね。
　だから汚れを拭き取る布は大事なんだよ」

「確かにジン様はあまり風呂は使われませんね。異世界の文化かと思って黙ってましたが」

「洗ってる間はいいんだけど、洗い終わった後に、体から出た汚れの浮いてる風呂に入ってるかと思うとスッキリしないんだよね。
　俺の世界では洗い場ってのがあって、そこで体を洗ってから風呂はきれいなお湯のまま入るものなんだ。だからお湯の中で石鹸を使うのが慣れなくって」

「そうでしたか。お嬢様のお屋敷に洗い場のあるお風呂を増築されますか？１階に作れば排水も大丈夫だと思いますし」

「それって作るのに時間かかるよね？それに俺は数年でいなくなるからそのために作ってもらうってのもね」

　どうせ増築するにも時間がかかるんだ。できる頃には帰る時期じゃないだろうか？


　戻ってから風呂を入れてもらい、桶にお湯を入れて買ったばかりのタオルを濡らす。それに石鹸を塗りつけて体をふく。洗うのと感触は違うが、布がふかふかしていて気持ちい。
　もう一枚で石鹸を拭き取り湯船に入る。

　うん、肌もヒリヒリしないし、汚れも落ちてる。お湯が気持ちいい。

　ただ、洗うと乾燥が大変だと言うのでそれも試してもらわないといけない。

　あとは旅の途中とどうするかだな。旅に出るとどうしても体が汚れる。それをこの柔らかいタオルで洗ったらすぐに汚れてしまうだろう。毛が長くて感触がいいのは逆にタオルの汚れが落ちにくいと言う意味でもある。

　試してみないと分からないけど、旅の途中は今までのタオルを使ったほうがいいかもしれない。