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第2章 ロザリア王国編
065 教会の実情
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#065 教会の実情
「・・・という事があったんですよ」
定例と化したハルフェ殿下とのお茶会だ。どうやら俺がこの国にいる間は毎日するらしい。
その場で教会で会ったことを話してみたのだが、眉を潜めはしたものの明確な批判は出なかった。
「前はお布施に金額は設定してなかったのですが、今の司教様になってから金額が決まったそうです。ですが、それまではヒールが必要ない方でも求めてきたり、銅貨1枚しか払わなかったりと酷かったそうです。本当に必要な方が来た時には魔力が残ってないとかもあったそうで。
なので今の司教様のやり方が悪いとは言い切れないのです」
まあそういう面もあるか。あの「貧乏人が」というセリフさえなければ信用してしまいそうだ。
「司教様が外から食事を運んでもらってるそうですが、それが普通なのですか?」
「いえ?普通は神官と同じものを食べてると思いますけど。違ったのですか?」
「ええ、毎食外から運んでくるそうです。それに毎日1本はワインを飲んでるみたいですね」
「それはおかしいですね。予算は最低限だったはずですが」
「ヒールで取ってるお金の管理はどうなってるのですか?」
「それは教会内部の問題ですので国は関与していません。援助金については使用内容を報告させていますが」
つまり必要最低限の事は援助金で賄って、ヒール代は司教様の懐に入ると。
いや、うがった見方なのは分かるんだよ?でもあの態度を見るとねえ。
「スラムへの炊き出しなんかはどのくらいされてるか把握していますか?」
「詳しくは知りませんが、月に1回程度だったのと思います。せめて週に1回はして欲しいと言ってはいるんですが」
月に1回ってほとんどやってないじゃん。別に毎日やれとは言わないけど、もうちょっとやっても良いと思う。
総合的に言って、司教様はグレーな点をうまくついてると思う。ヒールの回数なんて調べようがないから懐に入れ放題だろうし、国からの援助金は神官の生活費や炊き出しなんかの費用に充ててるのだろう。
神官たちはおかしいと思ってないのかね。あれだけヒールの費用を取っておいて自分たちの食事が芋スープと堅パンだけって。
ん?教義で貧清を尊ぶ?だから神官の食事は貧相だ?ワインは問題ない?
つまり表向きあの司教様は教義を破ってないのか。
聴けば聴くほど不愉快な気分になってくるな。ハンバルニ王国ではこんな事・・・なかったよな?俺って奥殿とかは連れて行かれたけど、現場見た覚えないわ。
「・・・夫人の腕輪が綺麗で、動くたびにシャランと音がするんですよ。色も金と銀で品よく出来てて。素晴らしいと思いません?」
よく聞いてなかったけど、どうやらどこかのご婦人の付けていたアクセサリーが綺麗だったという話らしい。
さっきまで教会の真面目な話をしてたはずなんだけど、どういう経緯でアクセサリーの話になったのやら。
「それよりも殿下、俺の帰国に関してなんですけど・・・」.
「ハルフェですわ。呼び捨てにしてください」
「あー、ハルフェ様?」
「つーん」
いや、つーんって。
「ハルフェさん?」
「・・・」
「ハルフェ?」
「はいなんでしょうか?!」
うーん、今はクレアと殿下のメイドさんしかいないから良いけど、他の人とかいる場所だと困るんだけどなあ。
「俺の帰国の護衛のことなんですけど」
「ああ、お父様が止めてる件ですね」
陛下が止めてる?
「今各国に婚約の通知が送られてるので、届いた頃に許可が下りると思いますよ」
思ったより行動が早かった!
ってもう使者が出てるなら撤回は難しいじゃん!
こんな所でお茶してる場合じゃなかった。冒険者を雇うなりして早く国に戻らないと。
別にハルフェ殿下が嫌いなわけではないが、ちょっと歳の差がありすぎる。恋愛対象の年齢じゃないんだよね。親子でおかしくない歳の差なんだよ?
日本だと純愛だと主張しても通らないと思うよ?法的には結婚可能だから罪にはならないかもしれないけど、社会的にはアウトだろう。
まあ、そんな事主張しても引っ込めなさそうだし逃げるしかない。
「あ、ジン様が戻られる時は私も同行しますのでよろしくお願いしましね」
「は?」
「ですから私もハンバルニ王国へ一緒に行くと言ってるんです。ジン様は貴族ではありませんからハンバルニ王の許可も必要ありませんしね。
メイドも何人か連れて行きますので身の回りの世話は大丈夫ですわ」
いやいや、今でもリリアーナさんの屋敷にお世話になってるのに連れて帰っちゃダメでしょ。
「いや、俺は公爵家にやっかいになってるので勝手には出来ないというか・・・」
「ならお屋敷を買えばいいですわ。二人とメイドだけですからそれほど大きな屋敷でなくてもいいですし」
断わる理由間違えた?!
「いや、俺の保証人は公爵様なので・・・」
「ならお父様が保証人になってこの国に住むというのはどうでしょう?」
何か話がどんどん悪い方に行ってる気がする。
「・・・という事があったんですよ」
定例と化したハルフェ殿下とのお茶会だ。どうやら俺がこの国にいる間は毎日するらしい。
その場で教会で会ったことを話してみたのだが、眉を潜めはしたものの明確な批判は出なかった。
「前はお布施に金額は設定してなかったのですが、今の司教様になってから金額が決まったそうです。ですが、それまではヒールが必要ない方でも求めてきたり、銅貨1枚しか払わなかったりと酷かったそうです。本当に必要な方が来た時には魔力が残ってないとかもあったそうで。
なので今の司教様のやり方が悪いとは言い切れないのです」
まあそういう面もあるか。あの「貧乏人が」というセリフさえなければ信用してしまいそうだ。
「司教様が外から食事を運んでもらってるそうですが、それが普通なのですか?」
「いえ?普通は神官と同じものを食べてると思いますけど。違ったのですか?」
「ええ、毎食外から運んでくるそうです。それに毎日1本はワインを飲んでるみたいですね」
「それはおかしいですね。予算は最低限だったはずですが」
「ヒールで取ってるお金の管理はどうなってるのですか?」
「それは教会内部の問題ですので国は関与していません。援助金については使用内容を報告させていますが」
つまり必要最低限の事は援助金で賄って、ヒール代は司教様の懐に入ると。
いや、うがった見方なのは分かるんだよ?でもあの態度を見るとねえ。
「スラムへの炊き出しなんかはどのくらいされてるか把握していますか?」
「詳しくは知りませんが、月に1回程度だったのと思います。せめて週に1回はして欲しいと言ってはいるんですが」
月に1回ってほとんどやってないじゃん。別に毎日やれとは言わないけど、もうちょっとやっても良いと思う。
総合的に言って、司教様はグレーな点をうまくついてると思う。ヒールの回数なんて調べようがないから懐に入れ放題だろうし、国からの援助金は神官の生活費や炊き出しなんかの費用に充ててるのだろう。
神官たちはおかしいと思ってないのかね。あれだけヒールの費用を取っておいて自分たちの食事が芋スープと堅パンだけって。
ん?教義で貧清を尊ぶ?だから神官の食事は貧相だ?ワインは問題ない?
つまり表向きあの司教様は教義を破ってないのか。
聴けば聴くほど不愉快な気分になってくるな。ハンバルニ王国ではこんな事・・・なかったよな?俺って奥殿とかは連れて行かれたけど、現場見た覚えないわ。
「・・・夫人の腕輪が綺麗で、動くたびにシャランと音がするんですよ。色も金と銀で品よく出来てて。素晴らしいと思いません?」
よく聞いてなかったけど、どうやらどこかのご婦人の付けていたアクセサリーが綺麗だったという話らしい。
さっきまで教会の真面目な話をしてたはずなんだけど、どういう経緯でアクセサリーの話になったのやら。
「それよりも殿下、俺の帰国に関してなんですけど・・・」.
「ハルフェですわ。呼び捨てにしてください」
「あー、ハルフェ様?」
「つーん」
いや、つーんって。
「ハルフェさん?」
「・・・」
「ハルフェ?」
「はいなんでしょうか?!」
うーん、今はクレアと殿下のメイドさんしかいないから良いけど、他の人とかいる場所だと困るんだけどなあ。
「俺の帰国の護衛のことなんですけど」
「ああ、お父様が止めてる件ですね」
陛下が止めてる?
「今各国に婚約の通知が送られてるので、届いた頃に許可が下りると思いますよ」
思ったより行動が早かった!
ってもう使者が出てるなら撤回は難しいじゃん!
こんな所でお茶してる場合じゃなかった。冒険者を雇うなりして早く国に戻らないと。
別にハルフェ殿下が嫌いなわけではないが、ちょっと歳の差がありすぎる。恋愛対象の年齢じゃないんだよね。親子でおかしくない歳の差なんだよ?
日本だと純愛だと主張しても通らないと思うよ?法的には結婚可能だから罪にはならないかもしれないけど、社会的にはアウトだろう。
まあ、そんな事主張しても引っ込めなさそうだし逃げるしかない。
「あ、ジン様が戻られる時は私も同行しますのでよろしくお願いしましね」
「は?」
「ですから私もハンバルニ王国へ一緒に行くと言ってるんです。ジン様は貴族ではありませんからハンバルニ王の許可も必要ありませんしね。
メイドも何人か連れて行きますので身の回りの世話は大丈夫ですわ」
いやいや、今でもリリアーナさんの屋敷にお世話になってるのに連れて帰っちゃダメでしょ。
「いや、俺は公爵家にやっかいになってるので勝手には出来ないというか・・・」
「ならお屋敷を買えばいいですわ。二人とメイドだけですからそれほど大きな屋敷でなくてもいいですし」
断わる理由間違えた?!
「いや、俺の保証人は公爵様なので・・・」
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