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第2章 ロザリア王国編

063 お土産探し

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#063 お土産探し

 今日は本格的に土産物を探そうとクレアと王都に出ていた。
 もちろん騎士達は俺たちの周りを囲んでいる。しかも何故か人数増えてるし。

「殿下の婚約者を守るのは当然です。これでも少ないくらいです」

 いや、王都の中なら問題ないでしょう?そんなに治安悪いの?



「ハルフェ様が婚約されたらしいぞ」
「何っ。あのハルフェ様がか!」
「王様が手放さない事で有名なあの王女様が?!」

 すでに街中で噂になってるっぽい。
 ほんの数日でこれだけ噂になってるって事は誰かが広めたんだろうなぁ。これも国王様の囲い込みの手だとしたら怖いなぁ。

 俺はたまに聞こえてくる婚約話にうんざりしながらも街中を歩く。

 うーん、リリアーナさんはどんなお土産が喜んでくれるだろうか。アクセサリーなんて腐る程持ってるだろうし、食べ物は腐るからダメだし。便利な魔道具とかかな。何かこの国ならではってのがあると良いんだけど。

「ジン様、この国は商業の国です。大抵のものは揃いますよ。値段はともかくとして」

「でも商業って事は特産がないって事だよね。お土産に困るんだよね」

「お嬢様ならなんでも喜んでくれると思いますよ。アクセサリーとかどうでしょうか。ドレスに合わせたりするのでいくら持ってても邪魔にはなりませんし」

 アクセサリーも候補になるのか。それならまだ探しやすいかな。



 うん?ポーション屋?そんな商売があるのか。

 商品を覗くと確かにビンに入った液体が並んでいる。

「おっさん、どうだい?ポーションは一家に一本が基本だぜ。備えあれば憂いなしってやつだ。ポーションも時間が経つと効果が薄れるからな。定期的に買い換えないと、いざ使うって時に効果がないって事もあるんだぜ?」

 そうかポーションて消費期限があるのか。でもそれなら余計にお土産としては不適切だな。

「ちなみに普通はどのくらいの期間使えるんですか?」

「まあせいぜい半年だな。こっちの高いやつなら一年はもつぜ。その分高いけどな」

 よく聞くと、ポーションにも等級があって下級、中級、上級とあるらしい。さらにその中でも不純物が多いと効果が低かったりと細かく分かれてるらしい。

 ちなみに下級の一番安いのは大銅貨5枚。ちょっとした切り傷が治る程度。薄めて手を洗うのに使うと手荒れが防げるそうだ。まあそんな使い方する人はいないらしいが。

「お兄さん、こっちの色のついてのはなんですか?」

「こっちは毒消しポーションと麻痺消ポーションだな。冒険者が買っていくんだ。薄めて飲むと腹が降ってても治るぜ」

 なんかポーションのイメージというより家庭用医薬品といった感じだな。

「ジン様、そのくらいのポーションでしたらお嬢様の屋敷には常備されています。お土産にはならないかと」

「良いんだよ。単に興味で見てただけだから」



 他の店を見ると、圧倒的に食べ物屋が多いが、アクセサリーも結構売っている。冷やかしながら移動してると、

 うん、ここは魔道具を扱ってるのか。どんなのがあるかな。

「お姉さん、ここは魔道具店ですか?」

「そうだよ。あんた金持ってそうだね。この魔道具とかどうだい?」

 見せてくれたのはカード型の魔道具だ。名刺サイズで何やら図柄と文字が彫られている。

「お金を入れておけるカードだよ。現金を持ち歩かなくても良いから便利だよ。持ち主を登録するには商業ギルドで登録する必要があるけどね。
 今なら銀貨5枚に負けとくよ!」

 ふむ。お金を持ち歩かないでも済むのか。この世界のお金って硬貨だからジャリジャリとうるさいんだよね。

「ちなみにいくらまで入れられるんですか?」

「何億でも入れれるよ」

「じゃあそれ・・・」

「ジン様」

「うん?」

「それ多分使用済みです」

「使用済み?」

「はい。他の人がすでに登録したやつです。おそらくギルドに持っていっても登録出来ません」

「え、そんなの売ってるの?詐欺じゃん」

「店主は使えるなんて一言も言ってません。それに商業ギルドに行けば普通に発行してくれます。それに支払いに使えるのは対応した店だけです。大手の商会か各種ギルドくらいでしか使えません」

 あ、カードリーダーが普及して無い感じ?
 いや、それよりも使えないカードって何に使うんだ?

「お姉さん、彼女はこれは登録済みだと言ってるけど、どうなの?」

「チッ、えっと、お客さん、こっちの魔道具とかどうですかね?着火の魔道具で火をつけるのに便利だよ」

 明らかに話を逸らしたな。これは黒だろう。この店はダメだな。普通のも売ってるみたいだけど、詐欺まがいの売り方してる時点でアウトだ。



 その店を離れて別の店を探す。

 うん?ちゃんと屋台になってなくって、地面に布を敷いて商品並べてるな。こういう方が露店って感じで気になるな。

「お嬢さん、ここは何を扱ってるの?」

「あ、お客さん、ここは私の作った魔道具を扱っています。見た目は悪いですけど、結構性能は良いんですよ?」

 確かに見た目は良く無い。というか悪い。継ぎはぎだらけのバッグや傷の入った魔道具など。

「このバッグは何の魔道具?」

「あ、マジックバッグになります。容量は大きいですよ?!」

 マジックバッグって高級品じゃなかったっけ。上級冒険者が持ってるとかいう。

「いくら?」

「えっと、いくらにしましょうか・・・初めてのお客さんだし・・・ぎ、銀貨1枚で!」

 え、まじで銀貨1枚?安すぎない?

「全部私が作りましたし、材料費もそれほどかかってませんからお安いですよ」

 まあ確かに幾つもの皮をつなぎ合わせたようにしか見えないからね。

「ちなみに大きさは?」

「はい、バッグの大きさの3割増です」

 3割増し・・・誤差では?こんな小さな布袋の3割って。ちょっと大きな袋持ってれば良い話だよね。魔道具にする意味ってあるのか?

「ちょっと小さく無い?」

「えっと、ちゃんとしたマジックバッグはもっと良い材料を使って作るので高いんです。あ、付与には自信がありますので効果は間違い無いですよ!」

 もっとこうクローゼットサイズとか位無いもんかね。この小さいバッグの3割増だと財布を入れるのがやっとだと思うんだが。

「えっと、こっちにもっと大きなのもありますよ!」

 出してきたのは普通のデイバッグ。継ぎはぎだらけだが。

「なんと1割増しでで銀貨20枚です!」

 いや、1割増しって・・・。

「重さが軽減されるとか、時間が停止するとかは?」

「そんなのは滅多に出回りませんよ。せいぜい上級冒険者が運が良ければ持てる程度のものですよ。そんな高級品、こんな露店で売ってるわけないじゃ無いですか」

 まあそうだよな。

「ジン様、能力もそうですが、素材が素材ですので耐久性に不安が残ります」

 ああ、確かに。継ぎはぎだらけだしな。

「その辺どうなの?」

「えっと、使ってみた事ないのでわかりません!」

 いや使って確認しようよ。商品だよね?

「じゃあ3割とか言ってたのは?」

「理論値です!」

 ああ、こりゃダメだ。他の店に行こう。


 結局良いお土産は見つからなかった。
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