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第2章 ロザリア王国編
056 城塞都市
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#056 城塞都市
街に入ると、すごい活気だった。
入り口で長い事待たされたからもしかして、とは思っていたが、国境の街だけあって栄えていた。いや、国境の街だからじゃなくて穀倉地帯だからかもしれない。
商人だけじゃなく、冒険者も歩いていた。護衛として移動するものや、魔物の素材を抱えてものもいる。
「あれ、冒険者多くないですか?」
「そりゃそうですよ。ここの近くにはダンジョンがありますからね。初級と聞いてはいますが、オークがよく出るそうですよ」
なるほど。麦が取れて肉も供給される。商売にもなりやすいな。しかも国境沿いの街なら交通の要所だよね。ここだけで一国できるんじゃない?
「ここは一応辺境伯爵領ですからね。陛下からも信頼の厚い貴族が納めています。なので反乱や独立などの心配はないですよ」
「辺境伯爵ってのは伯爵とは違うんですか?」
「そうですねえ。伯爵以上、侯爵未満って感じでしょうか。辺境の重要地点を任されている貴族を辺境伯爵としています。侯爵などは王都の近くに土地を持ってますしね。戦争が起こったときの守りの要って感じですね。
今は各国の仲がいいので戦争の事は考えなくても良くなりましたが、国境の要所には変わりありません。関所がないだけに犯罪者の取り締まりなんかも厳しいそうですよ」
ふーん。上級貴族の中でもさらにお偉いさんということか。まあ俺には関係ないか。
それよりもさっきから美味しそうな匂いがしてるんだよね。馬車に入り込んだ匂いが暴力的だ。
「クロイゼさん、美味しそうな匂いですね」
俺は買い食いの期待も込めて話しかけた。
「そうですね。セグレス辺境伯爵の晩餐が待ち遠しいです」
いや、やっぱり屋台で食べるというシチュエーションも込みで美味しさがあるというか。それに上級貴族って事はマナーとかも厳しそうだし。
「大丈夫ですよ。セグレス辺境伯は豪快な方です。裏表もない方なのでお付き合いしやすいですよ」
そう言われてもね。俺には屋台とか大衆食堂があってると思うんだ。
「そういえば今日は辺境伯爵様の屋敷に泊まるんですね?当日に行ったら失礼に当たるのでは?」
「昨日のうちに先ぶれを出しので大丈夫ですよ。セグレス辺境伯も私が帰りにも寄るのは分かってたはずですし。まあ予定より早く帰ってきてしまいましたが」
「なんか勇者がすいません」
「いえいえ、ジン殿のせいではありませんぞ。たまたま勇者があれだっただけで」
いやなんか、あんなヤンキーの肩を持つのはいやだけど、同郷というだけでなんとなく申し訳なく思ってしまう。リスモット様ももっと真面目なスポーツ少年とかを呼んできたらよかったのに。
「む、馬車を止めてください!」
なんだ、いきなりクロイゼさんが馬車を止めたぞ。
「ちょっと失礼します」
そのまま馬車を降りて屋台に向かって行った。辺境伯の晩餐はどうした。
護衛が慌てて追いかけている。
「ジン殿もひとついかがですかな?」
俺は渡されたものを見て困惑していた。どう見てもパイナップルだ。それも切られて串に刺さっている。
「クロイゼさんこれは?」
「これはドラゴンフルーツです。南の領地で取れるのですが、私はこれに目がなくて。下品だと分かっていてもやめれないのですよ」
食べるとやっぱりパイナップルだった。
「私の領地も南にあるので取れるのですが、一晩冷やして食べると最高なんです」
俺も嫌いじゃないけど、5本も一気食いするとは思わなかった。
「ふう、落ち着きました。付き合わせてしまって申し訳ありませんでした。このドラゴンフルーツは好みが分かれましてな。酸っぱいのが苦手だという人も多くて。ですが私はこの酸っぱいのがたまらないのです」
まあパイナップルは俺も嫌いじゃない。というか酸っぱいのは全般的に好きだ。八朔とか梅干しとか。パイナップルは高いのあまり買わなかったが。夏祭りなんかで売ってるとつい買ってしまう程度には好きだ。
「気が合いますね。俺も酸っぱいのは好きですよ」
「そうですかそうですか。同好の士を持てて嬉しいですよ」
「でも南国のフルーツがここで売ってるんですね。そんなに輸送が簡単なんですか?」
「ああ、このドラゴンフルーツは傷みにくいんですよ。なので長期の輸送でも耐えれます。この串一本大銅貨1枚するんですよ?現地では銅貨1枚です」
10倍か。まあ馬車で運んでくるんだろうからその位はするのかな。
「いえ、珍しいだけあって暴利です。でも買ってしまうんですな。
ドラゴンフルーツは一つのサイズが大きいので串に直すと何十本分にもなります。つまり一個で銀貨数枚。馬車で運ぶとなれば100個くらい運べますので一回で金貨数枚ですね。現地で100個買っても銀貨数十枚程度。運ぶ距離が長いとはいえ高いです」
「それでも売れるんですね」
「ええ、私のように酸っぱいものに目がない者には耐えがたい誘惑です。他に売ってる者がいなければそこで買うしかありません。
酸っぱいものというのは意外と少ないんですよ。フルーツにも酸っぱいものはありますが、どれも長距離の運送に耐えれませんし」
日本のように簡単に配送できる感覚とは違うんだね。パイナップルを荷台に乗せて延々と馬車の旅。それも多分一人で。俺には耐えれないな。
街に入ると、すごい活気だった。
入り口で長い事待たされたからもしかして、とは思っていたが、国境の街だけあって栄えていた。いや、国境の街だからじゃなくて穀倉地帯だからかもしれない。
商人だけじゃなく、冒険者も歩いていた。護衛として移動するものや、魔物の素材を抱えてものもいる。
「あれ、冒険者多くないですか?」
「そりゃそうですよ。ここの近くにはダンジョンがありますからね。初級と聞いてはいますが、オークがよく出るそうですよ」
なるほど。麦が取れて肉も供給される。商売にもなりやすいな。しかも国境沿いの街なら交通の要所だよね。ここだけで一国できるんじゃない?
「ここは一応辺境伯爵領ですからね。陛下からも信頼の厚い貴族が納めています。なので反乱や独立などの心配はないですよ」
「辺境伯爵ってのは伯爵とは違うんですか?」
「そうですねえ。伯爵以上、侯爵未満って感じでしょうか。辺境の重要地点を任されている貴族を辺境伯爵としています。侯爵などは王都の近くに土地を持ってますしね。戦争が起こったときの守りの要って感じですね。
今は各国の仲がいいので戦争の事は考えなくても良くなりましたが、国境の要所には変わりありません。関所がないだけに犯罪者の取り締まりなんかも厳しいそうですよ」
ふーん。上級貴族の中でもさらにお偉いさんということか。まあ俺には関係ないか。
それよりもさっきから美味しそうな匂いがしてるんだよね。馬車に入り込んだ匂いが暴力的だ。
「クロイゼさん、美味しそうな匂いですね」
俺は買い食いの期待も込めて話しかけた。
「そうですね。セグレス辺境伯爵の晩餐が待ち遠しいです」
いや、やっぱり屋台で食べるというシチュエーションも込みで美味しさがあるというか。それに上級貴族って事はマナーとかも厳しそうだし。
「大丈夫ですよ。セグレス辺境伯は豪快な方です。裏表もない方なのでお付き合いしやすいですよ」
そう言われてもね。俺には屋台とか大衆食堂があってると思うんだ。
「そういえば今日は辺境伯爵様の屋敷に泊まるんですね?当日に行ったら失礼に当たるのでは?」
「昨日のうちに先ぶれを出しので大丈夫ですよ。セグレス辺境伯も私が帰りにも寄るのは分かってたはずですし。まあ予定より早く帰ってきてしまいましたが」
「なんか勇者がすいません」
「いえいえ、ジン殿のせいではありませんぞ。たまたま勇者があれだっただけで」
いやなんか、あんなヤンキーの肩を持つのはいやだけど、同郷というだけでなんとなく申し訳なく思ってしまう。リスモット様ももっと真面目なスポーツ少年とかを呼んできたらよかったのに。
「む、馬車を止めてください!」
なんだ、いきなりクロイゼさんが馬車を止めたぞ。
「ちょっと失礼します」
そのまま馬車を降りて屋台に向かって行った。辺境伯の晩餐はどうした。
護衛が慌てて追いかけている。
「ジン殿もひとついかがですかな?」
俺は渡されたものを見て困惑していた。どう見てもパイナップルだ。それも切られて串に刺さっている。
「クロイゼさんこれは?」
「これはドラゴンフルーツです。南の領地で取れるのですが、私はこれに目がなくて。下品だと分かっていてもやめれないのですよ」
食べるとやっぱりパイナップルだった。
「私の領地も南にあるので取れるのですが、一晩冷やして食べると最高なんです」
俺も嫌いじゃないけど、5本も一気食いするとは思わなかった。
「ふう、落ち着きました。付き合わせてしまって申し訳ありませんでした。このドラゴンフルーツは好みが分かれましてな。酸っぱいのが苦手だという人も多くて。ですが私はこの酸っぱいのがたまらないのです」
まあパイナップルは俺も嫌いじゃない。というか酸っぱいのは全般的に好きだ。八朔とか梅干しとか。パイナップルは高いのあまり買わなかったが。夏祭りなんかで売ってるとつい買ってしまう程度には好きだ。
「気が合いますね。俺も酸っぱいのは好きですよ」
「そうですかそうですか。同好の士を持てて嬉しいですよ」
「でも南国のフルーツがここで売ってるんですね。そんなに輸送が簡単なんですか?」
「ああ、このドラゴンフルーツは傷みにくいんですよ。なので長期の輸送でも耐えれます。この串一本大銅貨1枚するんですよ?現地では銅貨1枚です」
10倍か。まあ馬車で運んでくるんだろうからその位はするのかな。
「いえ、珍しいだけあって暴利です。でも買ってしまうんですな。
ドラゴンフルーツは一つのサイズが大きいので串に直すと何十本分にもなります。つまり一個で銀貨数枚。馬車で運ぶとなれば100個くらい運べますので一回で金貨数枚ですね。現地で100個買っても銀貨数十枚程度。運ぶ距離が長いとはいえ高いです」
「それでも売れるんですね」
「ええ、私のように酸っぱいものに目がない者には耐えがたい誘惑です。他に売ってる者がいなければそこで買うしかありません。
酸っぱいものというのは意外と少ないんですよ。フルーツにも酸っぱいものはありますが、どれも長距離の運送に耐えれませんし」
日本のように簡単に配送できる感覚とは違うんだね。パイナップルを荷台に乗せて延々と馬車の旅。それも多分一人で。俺には耐えれないな。
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