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第2章 ロザリア王国編
053 メイドの結婚事情
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#053 メイドの結婚事情
場所を移動してサンクマン伯爵とその子息、そしてクロイゼさんと俺の4人で話を始める。
「ジン殿、私は伯爵家長男のガイズです。どうかガイズと呼び捨てにしてください」
いや、貴族のそれも上級貴族の嫡男を呼び捨てには出来ないですよ。
「じゃあ、ガイズくん、よろしくね」
「よろしくお願いします、ジン殿」
あ、君は殿付けなんだね。
コンコン
「サーシャです」
「入れ」
入ってきたのは可愛い系のおっとりとした子だった。妊婦さんだってことだけどまだお腹は膨れてないらしい。
「おお、サーシャ、元気だったか?子供を授かったと聞いたが、体調に問題はないか?何か困ってないか?ガイズ殿は優しくしてくれてるか?」
「もう、お父様、そんなに一度に言われても答えられないわ。とにかく元気ですし、優しくしてもらってます」
「そうかそうか。良かった。サンクマン伯爵の事だから大丈夫だとは思っていたが、実際にあってみないとわからないことも多いからな。もう少し頻繁に手紙をよこしなさい」
「そうですね。もう少し手紙を増やしますわ」
「それで生まれるのはいつなのだ?来月か?再来月か?」
「まだ分かったばかりですよ。来年になるんじゃないでしょうか」
「そ、そうか。生まれたら抱きに来てもいいだろうか?いや、抱かせて欲しい。初孫だ。きっとお前に似て可愛いだろうな」
クロイゼさんが貴族の顔じゃなくておじいちゃんの顔になっている。
「もう。抱きに来てくださるのは構いませんよ。でもお父様に赤ちゃんを抱っこできるのかしら?」
「もちろん出来るとも!お前が生まれた時だって抱っこしたんだぞ?」
「でもお母様は抱き方がぎこちなくて危なっかしかったって聞いてますよ?」
「そ、それは最初の時だけだ。今はもう大丈夫だ」
「まあ構いませんが。それよりもお義父様を放っておいて良いんですか?」
「おお、そうだった、サンクマン殿、申し訳ない。ついこちらだけで盛り上がってしまった」
「構いませんよ。私にとっても初孫ですからね。楽しみで仕方がありません」
初孫かぁ。
大学卒業と同時に結婚して子供が生まれてたら14歳。うん、まだ初孫の歳じゃないな。
ただ、この世界、成人が16歳だから初孫がいてもおかしくないんだよね。
話はガイスくんとの出会いなどにまで遡って展開される。その度にサーシャさんとガイスくんが甘々の空気を出すからたまったもんじゃない。こちとら独り身なんだ勘弁しほしい。
「ジン殿には細君はおられないのですかな?」
おや、話がこっちに回ってきた。
「ええ、めぐり合いが悪かったようで、結婚はしていません」
「それはいかん。誰か紹介しましょうか?大分歳が離れてしまいますが、商人の娘などいかがですかな?懇意にしている商会が確か娘がいたはず。器量までは分かりませんが、一度会ってみては?」
いや、嫁を斡旋されても困ります。陛下にも注意するように言われたしね。
「いえ、もう結婚は諦めてますから。いい歳ですからね。今から若い嫁をもらっても持て余すでしょうし」
「その年で枯れてるとか。もったいないですな。私はまだまだ現役ですぞ」
いや、そんなの自慢されても。それに俺はまだ枯れてない。その証拠にクレアにドキドキしてる。まあ直接的な欲求なので恋人的なものではないが。
「それなら良い娼館を・・・」
「お義父様!私の前でそんな話をなさらないでください!」
「すまん」
ごもっともですな。女性の前で話す話じゃない。酒でも飲んで話す話だ。ただ娼館の話は聞いてみたいかも。
話の流れが途切れたことで一旦お開きになった。
クロイゼさんはまだサーシャさんと話をするそうなので俺は当てがわれた部屋に移動した。
「クレアは恋人とかいないの?」
なんとなく話の流れ的に聞いただけなんだけど、クレアの動きが止まった。
「ジン様、人には聞いてはいけない事もあるんですよ?
私は騎士団に入って剣に磨きをかけ、その後、リリアーナ様のメイドになりました。騎士団にいる間はそんな雰囲気ではありませんでしたし、メイドになってからは周りに男はいませんし。
いつの間にかこんな歳になってしまいました」
あ、地雷踏んだな。
「私は貴族ではありませんので、平民が相手となりますが、会う男性といえば御用商人の子供くらい。それも公爵家の御用商人ですから大体は婚約者がいます。
私も相手がいれば・・・」
うう、俺が悪かった。そんな話を振って。だから愚痴はその辺に・・・
「・・・なんですよ!」
分かった分かった。俺に友人が出来たら息子を紹介してもらうから。そんなにヒートアップしないでくれ。それに俺からみたらクレアもまだ若いし焦る必要はないと思うんだけど。
「・・・メイドは出会いが少ないのです。基本一生お仕えするので職業に理解のある方でないといけませんし。使用人が結婚するのは難しいんですよ?これでも出会いを求めて・・・」
泣けてきた。そんなに使用人って出会いが少ないのか。でも貴族の使用人って世界を見渡せばたくさんいるよね?それでも回ってるって事はちゃんと結婚できてるって事じゃないの?」
「・・・リリアーナ様が屋敷に男を雇わないのが問題です。普通に男性がいればその知人を紹介されたりするんですが、女ばかりだとむしろ自分が、ってなってしまって話になりません。それに・・・」
ごめんよ。俺が悪かった。だからもう許して。
場所を移動してサンクマン伯爵とその子息、そしてクロイゼさんと俺の4人で話を始める。
「ジン殿、私は伯爵家長男のガイズです。どうかガイズと呼び捨てにしてください」
いや、貴族のそれも上級貴族の嫡男を呼び捨てには出来ないですよ。
「じゃあ、ガイズくん、よろしくね」
「よろしくお願いします、ジン殿」
あ、君は殿付けなんだね。
コンコン
「サーシャです」
「入れ」
入ってきたのは可愛い系のおっとりとした子だった。妊婦さんだってことだけどまだお腹は膨れてないらしい。
「おお、サーシャ、元気だったか?子供を授かったと聞いたが、体調に問題はないか?何か困ってないか?ガイズ殿は優しくしてくれてるか?」
「もう、お父様、そんなに一度に言われても答えられないわ。とにかく元気ですし、優しくしてもらってます」
「そうかそうか。良かった。サンクマン伯爵の事だから大丈夫だとは思っていたが、実際にあってみないとわからないことも多いからな。もう少し頻繁に手紙をよこしなさい」
「そうですね。もう少し手紙を増やしますわ」
「それで生まれるのはいつなのだ?来月か?再来月か?」
「まだ分かったばかりですよ。来年になるんじゃないでしょうか」
「そ、そうか。生まれたら抱きに来てもいいだろうか?いや、抱かせて欲しい。初孫だ。きっとお前に似て可愛いだろうな」
クロイゼさんが貴族の顔じゃなくておじいちゃんの顔になっている。
「もう。抱きに来てくださるのは構いませんよ。でもお父様に赤ちゃんを抱っこできるのかしら?」
「もちろん出来るとも!お前が生まれた時だって抱っこしたんだぞ?」
「でもお母様は抱き方がぎこちなくて危なっかしかったって聞いてますよ?」
「そ、それは最初の時だけだ。今はもう大丈夫だ」
「まあ構いませんが。それよりもお義父様を放っておいて良いんですか?」
「おお、そうだった、サンクマン殿、申し訳ない。ついこちらだけで盛り上がってしまった」
「構いませんよ。私にとっても初孫ですからね。楽しみで仕方がありません」
初孫かぁ。
大学卒業と同時に結婚して子供が生まれてたら14歳。うん、まだ初孫の歳じゃないな。
ただ、この世界、成人が16歳だから初孫がいてもおかしくないんだよね。
話はガイスくんとの出会いなどにまで遡って展開される。その度にサーシャさんとガイスくんが甘々の空気を出すからたまったもんじゃない。こちとら独り身なんだ勘弁しほしい。
「ジン殿には細君はおられないのですかな?」
おや、話がこっちに回ってきた。
「ええ、めぐり合いが悪かったようで、結婚はしていません」
「それはいかん。誰か紹介しましょうか?大分歳が離れてしまいますが、商人の娘などいかがですかな?懇意にしている商会が確か娘がいたはず。器量までは分かりませんが、一度会ってみては?」
いや、嫁を斡旋されても困ります。陛下にも注意するように言われたしね。
「いえ、もう結婚は諦めてますから。いい歳ですからね。今から若い嫁をもらっても持て余すでしょうし」
「その年で枯れてるとか。もったいないですな。私はまだまだ現役ですぞ」
いや、そんなの自慢されても。それに俺はまだ枯れてない。その証拠にクレアにドキドキしてる。まあ直接的な欲求なので恋人的なものではないが。
「それなら良い娼館を・・・」
「お義父様!私の前でそんな話をなさらないでください!」
「すまん」
ごもっともですな。女性の前で話す話じゃない。酒でも飲んで話す話だ。ただ娼館の話は聞いてみたいかも。
話の流れが途切れたことで一旦お開きになった。
クロイゼさんはまだサーシャさんと話をするそうなので俺は当てがわれた部屋に移動した。
「クレアは恋人とかいないの?」
なんとなく話の流れ的に聞いただけなんだけど、クレアの動きが止まった。
「ジン様、人には聞いてはいけない事もあるんですよ?
私は騎士団に入って剣に磨きをかけ、その後、リリアーナ様のメイドになりました。騎士団にいる間はそんな雰囲気ではありませんでしたし、メイドになってからは周りに男はいませんし。
いつの間にかこんな歳になってしまいました」
あ、地雷踏んだな。
「私は貴族ではありませんので、平民が相手となりますが、会う男性といえば御用商人の子供くらい。それも公爵家の御用商人ですから大体は婚約者がいます。
私も相手がいれば・・・」
うう、俺が悪かった。そんな話を振って。だから愚痴はその辺に・・・
「・・・なんですよ!」
分かった分かった。俺に友人が出来たら息子を紹介してもらうから。そんなにヒートアップしないでくれ。それに俺からみたらクレアもまだ若いし焦る必要はないと思うんだけど。
「・・・メイドは出会いが少ないのです。基本一生お仕えするので職業に理解のある方でないといけませんし。使用人が結婚するのは難しいんですよ?これでも出会いを求めて・・・」
泣けてきた。そんなに使用人って出会いが少ないのか。でも貴族の使用人って世界を見渡せばたくさんいるよね?それでも回ってるって事はちゃんと結婚できてるって事じゃないの?」
「・・・リリアーナ様が屋敷に男を雇わないのが問題です。普通に男性がいればその知人を紹介されたりするんですが、女ばかりだとむしろ自分が、ってなってしまって話になりません。それに・・・」
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