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第2章 ロザリア王国編

044 ロザリア王国からの使者

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#044 ロザリア王国からの使者

「ジン様、王宮から呼び出しが来ておりますが、どうされますか?」

 朝食後にクレアが教えてくれたが、使者が来たのは結構な早朝だったらしい。
 そんなに急いでるなら起こしてくれればいいと思うのだが、使者がそれには及ばないと言ったらしい。要は俺が今日の予定を決める前に手紙が届けばいいと良う事らしい。
 王宮からの使者なんだから、起こしてでも連れて来いって言っても誰も怒らないだろうに。

 手紙を読むと何やら他国からの使者とあって欲しいらしい。使者は一月ほど滞在するからその間に訪問してほしいとある。
 ちょっとリリアーナさんと相談かな?


「リリアーナさん、この手紙どう思いますか?」

「ジン様、柔らかく書かれていますが、事実上の召喚です。すぐにでも王宮に向かってください」

 ありゃ、一月以内って書いてあるから明日にでも行こうかと思ってたんだけど。向こうの都合とかはいいのかね?

「朝早くに届いたと言うことは今日中に来てほしいと言う事を暗に示しています。それに使者と時間を合わせるのであれば、手紙ではなく使者と時間のやり取りをしたでしょう。こう言う場合はすぐにでも王宮に行って、使者の時間が空くのを待つのが通例です。
 特に今回は他国からの使者とあります。他国の貴族からの使者ではありませんので、国からの使者です。待たせるわけにはいきません」

 なるほど。そこまで深い意味があったのか。

 俺は普段着、とは言っても公爵家が用意した普段着なので高級だが、で王宮に向かった。


 いつもとは違う応接室で待たされる事数時間。もうお昼の時間かと考えてた頃に使者の時間が出来たらしい。

「初めてお目にかかります。ロザリア王国で伯爵位を賜っておりますクロイゼと申します」

「初めまして。異世界人のジンといいます。とりあえずお座りください」

 立場としては向こうの方が上のはずなんだが、なぜか俺がホスト的な立ち位置になっている。

「早速ですが、お昼まで時間もない事ですし、本題に入らせていただきますが、ロザリア王国に訪問されるつもりはありませんか?」

「えっと、それは公的な、ですか?」

「どちらでも構いません。本当なら勇者様を公的にお迎えしたいところなのですが、まだ訓練中だそうですので、ジン様に代理で来ていただけないかと言う事です。
 勇者様ではありませんので公私どちらでも構いません。異世界の話などを陛下や貴族たちにしていただければと思う次第です」

 ああ、勇者たちはまだ牢に繋がれてるのか。影武者はまだ用意できてないのかな?

 まあ堂々と旅行が出来るのはありがたい。俺だけで旅したいと言ったらリリアーナさんが発狂しそうだしね。

「それは構いませんが、俺の保護者はマクダウェル公爵なので公爵の許可が出れば、となりますが。それと行く場合は私用でお願いします」

「承知しました。すぐにでも公爵様とお会いして許可を取りましょう。
 私の滞在期間が3日ほどですので、一緒に戻っていただけるのが一番ありがたいのですが、ご都合はいかがですかな?」

「あれ、一月だったのでは?」

「勇者様をお迎えできるならその予定でしたが、そうで無いのなら一度国に戻ります」

「なるほど、俺は暇してるのでいつでも大丈夫ですよ」

「承知しました。では予定に関しても公爵様とお話しさせていただきますね」

 ふふふ、隣国か。東の国だって話だし、もしかしたらファンタジーでお馴染みの日本食や文化があるかもしれないな。あれはお約束だしな。
 まあそれほどホームシックにはなってないから米に対してそれほど強い願望はないが、洗い場のある風呂には入りたい。


 なぜかその後陛下から呼び出されて、進捗を聞かれた。

「お主、ロザリア王国に行くつもりか?」

「ええ、せっかくのお誘いですし、この世界を見てくるのも良いかと思いまして」

「ふむ。ロザリア王国も異世界人とは懇意にしたいと言ってたからな。最初は勇者どもを公式訪問させると言う話だったのだが、あいつらを行かせるわけにはいかん。影武者では異世界の話はできんしな。
 そこでお主の出番だが、行く上でいくつか頼みたい事がある」

 おや、わざわざ俺に頼むってのは何かあるのかね。

「まず、科学とやらの詳細を話さないこと。これはどんな物があったかは話しても構わないが、その理論を話さないでほしいと言う事だ。ロザリア王国とは友好関係にあるが、異世界の技術を持たれると変に拗れかねん。お互いに秘密が多ければ多いほど関係が悪くなる傾向にあるからな」

 なるほど。まあこの世界、大概の製品は魔道具でなんとかしてるから理論させ伝えなければいいと言う話か。まあ科学や化学についてこの世界で実用化されると戦争の引き金にさえなりかねないからね。

「それとロザリア王国国王に密書を届けてほしい。おそらく異世界人であるお主なら国王と私的な会談が設けられるだろうからその時にでも渡してほしい。
 勇者の実情に関しての連絡事項だ。国王にはちゃんと伝えておかないと今後の魔族との戦争に問題が出るからな」

 密書ね。まあ渡すだけなら問題ないか。

「最後に」

 まだあるのか。

「女をあてがわれても断ってほしい」

 うん?なんでそんな話になるんだ?

「異世界人の知識は本人でないと分からんが、異世界人の力は遺伝する可能性がある。もちろん女神様の加護も。
 お主が加護なしという話はしたのだが、この世界に加護がない者はおらんので信じてないようなのだ。なのでお主が魔法を使えない事も加護がない事も信じておらん。それゆえに遺伝を期待して配偶者や女の斡旋をしてくる可能性がある」

 俺の血筋って言ってもね。俺の先祖は多分どっかの小作人ですよ?それにグリッドさんの加護は一代限りだろうし。
 魔力はわかんないけどね。魔力の測定の後で聞いたんだけど、俺の魔力回路?はズタボロらしい。そのせいで魔法が使えない可能性もあると。
 もし本当だとしたら遺伝で強力な魔術師が誕生する可能性はあるかもね。

「以上が頼みたい事だ。受けてもらえるな?」

「はあ、構いませんが、そんなに重要な事ですか?」

「うむ。知識も血筋も重要だ。密書も貴族にバレないように渡せるのはお主くらいだろうからな」





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