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第1章 召喚編

040 短剣

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#040 短剣

 公爵家の御用商人という店に来た。他の店でも買い物はするらしいが、高価なものはここで買ってるらしい。

「紹介状はございますか?」

 まず初めに聞かれたのがこれだ。

「いえ、特には持ってませんけど」

「では申し訳ありませんが、ご入店はご遠慮願います。当店は一見様お断りになっております」

 ありゃ、上級の商人ってそういう感じなのか。よほど高価なものだけ扱ってるのだろう。中には展示されてるものはないし、この受付さんだけがいる。

「こちらを」

 クレアが自分の身分証を出した。確かあれには公爵家の使用人だと書かれているはずだ。

「公爵様のお使いでしたか。失礼しました。私は受付のエヴァと申します」

「あ、ジンです。よろしくお願いします」

「それでは奥の応接室でお話をお伺いしますのでこちらにいらしてください」


 奥に案内されると高級だけど品の良さそうな応接室があった。成金的な部屋じゃなくて良かった。もしそういう店なら絶対利用しなかったらだろうしね。

 エヴァさんはお茶だけ出して部屋を出ていってしまった。会長がいるらしく呼んでくるそうだ。


「ようこそ、アトランタ商会へ。公爵家の方だとか。今日はどのようなご用件で?」

「こちらのジン様の短剣を買いに来ました。出来れば何かエンチャントのかかったものがあればと」

「なるほど。ジン様はどのくらいの腕前ですかな?」

「あ、初心者です。護身用に一本欲しいと思っただけで、安いのでもいいですよ?」

「当商会では安物は扱っておりませんぞ。公爵家の方にお売りできる短剣となりますと純金の短剣とかいかがですかな?護身用だとの事ですし、見栄え重視というのもありかと思いますぞ」

「いや、普通につかれば良いので」

「残念ながら現在エンチャント付きの短剣の在庫がございません。普通の長剣ならあるのですが。
 なのであとはドワーフの名工が作った短剣くらいでしょうか。切れ味は良いですし、耐久力もあります。装飾も品がよく、普段から差していても恥ずかしくありません」

 最初からそれだそうよ。最初に純金の短剣なんて成金の出されても困るよ。

「金貨で二十枚ほどになりますがいかがですかな?」

2000万R?!短剣の値段じゃないよ?!

「ジン様、いかがなされますか?使われるのはジン様ですので気に入ったのを買われるのが良いかと思います。
 ちなみにドワーフは鍛冶技術に優れ、その作品は人族が作ったものと比べ物にならないくらい優秀だと聞いております」

 うーん、高くても20万Rくらいだと思ってたんだよね。いやそれでも高いんだけどさ。
 エンチャントされてなくても2000万Rって。

「ちなみにオーダーメイドでしたらエンチャントの付いた短剣もご用意できますぞ。時間は半年ほどいただきますが、必ずご満足いただけるものをご用意させていただきます」

 うーん、ここで買うのはなしかな。なんか金銭感覚がおかしくなりそうだ。

「すいませんが、そこまで高いのはちょっと・・・」

「そうですか。残念ですな。当商会では高級品をメインに扱っておりますから美術品や芸術品などが必要であればご相談ください」

 やっぱりこの店を選んだの失敗じゃないかな?俺の欲しいものとジャンルが違うよ。


「申し訳ありません。以前エンチャントの武器も扱っていると聞いたのでご紹介したのですが。まさか高級品”のみ”扱ってるとは思ってもいませんでした」

 まあ仕方ないのかもね。公爵家で使うのなんて家具から食器まで高級品だろうし。

「まあ勉強にはなったかな。
 普通の武器屋に行こうか。表通りなら何かあるでしょ」



 武器屋の看板がかかっている店に入ってみた。

 樽には長剣が無造作に突き立てられているし、壁にはやりがかかっている。盾や防具なども置かれており、ザ武器屋と言った感じだ。

「いらっしゃい」

「すいません、初心者用の短剣が欲しいんですけど」

「あいよ、これなんかどうだい?鍛冶屋の弟子が作った品だ。もちろんその分安いですぜ?」

「いや、初心者用と言っても一応ちゃんとしたのが欲しいです」

「そうか、ならこっちはどうだ?一応ちゃんとした鍛冶屋が作ったもんだ。ただ鉄と銅を混ぜて作ろうとして強度が犠牲になったやつだな。切れ味は悪くないんだぜ?」

「いえ、もうちょっとましなのを」

「じゃあ、これなんかどうだ?ちゃんとした鍛冶屋が牙猪の牙から磨けあげた品だ。問題は鉄のと違って、研ぐとひとまわり小さくなるって事だな。切れ味は悪くないぜ?」

 この武器屋商売する気あるのか?欠点ばかり上げてくるが。

「えっと、普通の鉄のはないですか?」

「ん?初心者用っていうから訳ありの安いやつが欲しいんだと思ったんだけど違うのか?
 普通のならこっちだ。まあ鉄の短剣だな。可もなく不可も無くってやつだな。面白味にはかけるが、まあ普通のどこにでもある短剣だ」

 それが欲しかったんだよ。

「いくらですか?」

「銀貨三枚ってところだな」

「わかりました、それください」

「おう、こっちが鞘だ。ここの紐でベルトに括り付けるといい」

 「ありがとうございます」

 ふう、短剣はなんとかなったな。


「ジン様、先日も言いましたが、新米冒険者は武器を買うお金もなく採取用のナイフすら変えずに薬草採取を行ったりしてようやく武器を買います。
 そんな冒険者が最初に買うのが、先ほどのような訳あり品です。なので初心者用の武器と言われるとああいった訳あり品が出てきます。
 なので初心者用とか言わないで普通に短剣が欲しいと言った方が良かったと思いますよ」

 先に言おうよそういうのは。



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