異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス

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第1章 召喚編

030 乗馬

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#030 乗馬

 数年くらいは何もしないで過ごそうと思っていたが、思ったより暇だ。毎日グータラとして生活できると思っていたのだが、思ったよりも俺は活動的だったようだ。

 そんな訳で今、馬小屋にいる。

 屋敷の外に出るのはクレアさんとか他の護衛などの問題で予定を立ててから出ないとダメなので屋敷ないで何か出来ることがないかと思って思いついたのが乗馬だ。

 日本で乗馬をしようと思ったら、年会費で100万、一回数万円の費用がかかる。だけどこの屋敷では普通に暇そうにしてるし、時々運動させないといけないらしく、牧場にお金を払って運動させているとか。

「キャシーさん、俺を振り落とさないような大人しい馬はいませんかね?」

「そうだな、この馬なんかどうだ?牝馬だから性格は大人しいし、あたいの言う事は聞くから安全だと思うぞ」

 それなら安心かな。

「じゃあこの子にしようか。名前はなんていうんですか?」

「キティホークだ」

 なんか強そうな名前が出てきたな。ホークって鷹とかじゃなかったっけ?鷲だっけ?

「今鞍をつけるから待ってな。キティ、今からあの人を乗せてやってくれ。初心者だからゆっくりな」

 なんか俺が馬に教えてもらうような話になってるけど、馬ってそこまで賢いのか?

「馬ってのは結構賢いぞ?細かいこと言っても伝わらないけど、道沿いに歩くだけなら放っておいても普通に進むし、慣れたやつなら馬車のすれ違いなんかも器用にこなすぞ?
 人間が操るってのは上級者の話だ。普通は馬に指示だけ出したら馬任せだ。その方が馬も人間も疲れずに済むんだ」

 なるほど。馬は経済動物だと思ってたから家畜扱いかと思ったら、馬は友達でしたか。

「さあ、鞍の用意は出来たぞ。
 まず最初に注意点だ。大きな声は出すな。急に動くな。以上だ」

「それだけでいいんですか?」

「馬は賢いと言っただろう。普通に乗ってたら並足くらいはしてくれる。早く走らせたりするなら人間にも技術が求められるけどな」

 それならなんとかなりそうだな。

「ところでさっきからやたらと顔を擦り付けてくるんですけど、こういう馬なんですか?」

「いや、確かに大人しい馬だけど、ここまで好かれるとは思ってなかったな。馬の好きな匂いでも出してるんじゃないのか?」

 いや、そんな特殊な匂いは発してないはず。多分馬が合うんだろう。

「じゃあ、とりあえず乗ってみようか。
 鐙に左足をかけて、手は馬の背中、鐙は補助程度に考えて、一気に飛び上がるようにして乗ってくれ」

 ふむ。
 左足を鐙にかけて・・・

 なぜ座ってるのかな?キティホークちゃんや。もしかして俺乗せたくないとか?泣いていい?

「こりゃ驚いたね。馬の方からこの体勢を取るなんて。この高さなら飛び上がらなくても乗れるだろう。またいで乗っちまえ」

「いいんですか?馬が座ってる時に乗っちゃっても」

「いいんだ。乗ろうとしてる時に座るのは馬が乗りやすいように考えてくれてるってことだ。よほど気に入られたんだな」

 ああ、俺が乗りやすいようにね。確かに座ってる状態だと跳び箱程度だから簡単に乗れるけど。

 俺が跨ぐと、キティーホークは立ち上がり、俺の目線がかなり高くなる。

 うぉ、結構怖いな。自分の足で立ってないだけに余計に怖さが増幅される。

「最初はあたいが手綱を持って歩かせるから安心しろ。背は伸ばして尾骶骨でのる感じだ。前に体重かけるんじゃないぞ。馬が走れって言われてると感じるからな。それと体勢を保つのは太ももだ。鐙に体重はかけるな」

 そんなこと言われてもね。尾骶骨で体重を支えるって感覚的には後ろにのけぞってるように感じるんだよね。馬が前に進むもんだから上半身が置いてかれそうになる。
 これは結構腹筋や背筋が必要な感じ?

 最初は真っ直ぐに進んでたんだけど、当然曲がり角というのはあるもので、その時には横に体重が移動して、鐙に体重が乗ってしまった。馬は止まってくれたが、普通はその動きを嫌って走り出したりすることもあるらしい。
 大人しい馬でよかった。

 太腿でしっかりと体を支えてないからだと叱られ、何度も回る練習をさせられた。

「うん、だいぶ慣れたな。じゃあ手綱を離すぞ。止まる時はちゃんと後ろに重心をかけて手綱を引くだけだ。強く弾きすぎないようにな」

 え、もう一人で乗るの?こういうのって何ヶ月もかけて訓練するんじゃないの?

「キティが気に入ってるようだしな。もともと大人しい馬だし大丈夫だろう。乗るのに慣れたら問題ない」

 そ、そんなもんですかね。俺は渡された手綱を握って真っ直ぐに歩かせる。途中でちょっとだけ手綱を右に引っ張ってやると右に曲がる。

 だんだん面白くなってきたぞ!

 キティホークは従順だし、体勢も安定している。曲がっても落ちそうにならなくなったし。ただ尾骶骨が痛い。太腿も筋肉が張ってるのを感じるし、そろそろ終わった方がいいだろうか。

 なんかキャシーさんはすでにこっちを見ておらず、馬小屋で自分の仕事してるっぽいんだけど。

 俺は乗った場所まで戻って降りようと思ったけど降り方がわからない。飛び降りるんだろうか?

 何気なく馬の首をトントンと叩いたら座ってくれた。本当に賢いな。俺の言いたいことが伝わってるかのようだ。
 座ってくれると地面が近いので簡単に降りることができた。

 顔を擦り付けてくるので思わず他てがみをくしゃくしゃとやってしまったが大丈夫だろうか。

「おう、もう終わりか。ちゃんと降りれたみたいだな。
 あとは馬の汗を拭いてやって終了だ。
 馬は汗を放っておくとすぐに風邪をひくんだ。だから運動させたら汗を拭いてやらないとけない。自分が乗った馬は自分でそこまでやるのが一般的だ。あんたもやってみるといい」

 俺はキティホークの手綱を引いて馬小屋に連れて行き、そばにあった布巾で体を拭っていく。歩いてただけの割には結構汗をかいているようで、拭き終わる頃にはタオルが濡れてしめっていた。

 拭いてる最中にも顔を擦り付けてこようとするので、お尻の辺りを拭こうとしたら体勢が変わってぐるぐると追いかける羽目になったりもしたが。

「ああ、そうだ。呼ぶ時はキティって呼んでやれ。正式にいはキティホークなだけど、呼びかける時はキティだ」

「キティ、今日はありがとうな。楽しかったよ」

 なんか髪を甘噛みされてしまったが、まあ大丈夫だろう。後で髪を洗っておこう。
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