上 下
29 / 124
第1章 召喚編

029 馬鹿な伯爵家3男

しおりを挟む
#029 馬鹿な伯爵家3男

「ジン様、お嬢様がお呼びです。出来れば応接室に来ていただきたいと」

 クレアさんが呼びに来たけどなんだろう?最近は呼ばれる時は執務室で軽く話す程度のが多いからわざわざ応接室ってのも不自然だけど。

「貴族と面会の最中のようです。どうやらジン様にも同席して欲しいようです」

「貴族との面会に同席?俺がいても何も出来ないけど」

「私にもわかりませんが、お嬢様はそうお望みです」

「そう。じゃあ顔だけでも出しますか」

 俺は気軽な気持ちで行く事を決めたがちょっと早まったかもしれない。



 コンコン

「お嬢様、ジン様をお連れしました」

「入ってちょうだい」

 俺が入ると、部屋の中にはリリアーナさんとメイドのマリーさん、そして知らない20代のイケメンがいた。

「やー、君がジンくんか。異世界から来たんだって?大変だったねー。今度リリアちゃんと結婚することになったケルンっていうんだ。申し訳ないんだけど君には出て行ってもらうからそのつもりでいてねー」

 この人は何を言ってるんだろうか?
 リリアーナさんが結婚?初めて聞いたが。今決まったんだろうか?

 リリアーナさんを見ると首を振っていた。

 リリアーナさんの隣に座るとメイドのマリーさんがお茶を入れてくれたので一口。うん、美味しい。

「ジン様、来ていただいてありがとうございます。この方が話を聞いてくれなくて」

「リリアちゃーん、この方なんて他人行儀な呼び方せずにさ、ダーリンとか呼んでよねー」

 再度思うが、この人は何を言ってるんだろうか?

「失礼ですが、どちら様でしょうか?」

「あれー、聞いてない?僕っちはロザリア王国の伯爵家の3男でケルンって言うんだよー。今日から俺っちもここに住むからよろしくねー」

「リリアーナさん?」

「いえ、承諾した覚えはないんですが、勝手に言ってるだけです。でも何を言っても聞いてくれなくて」

 なるほど、以前言ってた他国の3男か。金の無心をしてるんだっけか。

「ケルン様、リリアーナさんは結婚するつもりはないようですよ?」

「そんなわけないジャーン。俺っちが結婚してあげるって言ってるんだよ?もう決まったも同然じゃん。リリアちゃんも可愛いしwin-winだーね!」

 いや、お前実家から何言われてきたんだ?

 こそっとリリアーナさんが手紙を渡してくる。

『背景リリアーナさま
本日はお日柄もよく・・・
・・・・・・
・・・という訳で息子のケルンとの結婚を承諾願いたく思います。
結納金は金貨五百枚程度をお願いします。

親愛なる ケビン=マリンドルフより』

 うん?結納金って迎える側が出すんだっけ?男が出すんだっけ?あれ?
 それにこの手紙、誤字というか書き方が間違ってるというか。この世界の手紙の書き方ってこんな感じなのか?

「手紙はめちゃくちゃです。こんな手紙は初めて見ました」

 こっそり教えてくれたリリアーナさん。こんな一方的な通告無視しちゃえば?

「内容はめちゃくちゃですが、仮にも他国の伯爵家当主からの手紙です。むげには出来ません。結婚も結納金も論外ですが」

 なるほど。なら問題ないね。

「クレア、誰か呼んできて。このたわけを放り出して」

「はい、承知しました」

「ちょっとちょっとー、何かってに進めちゃてるのー。出て行くのは君だよ君ー。新婚の邪魔になるから出てけって言ってるんだよー」

「ご当主さまには後で断りの手紙を送らせていただきますのでお帰りください」

 俺がいるので安心したのか、ようやくリリアーナさんも断固たる態度が取れたようだ。

「ちょっとー、じゃあ俺っち今晩どこに止まれってのー。もうお金ないしー」

 知らん。着てる服でも売れば一晩くらい宿が取れるだろう?

「ちょ、離せってば、俺っちは伯爵家の人間だよ?そんな態度とって、ああ、連れてかないでー」

 うるさいやつだった・・・。

「ジン様、お手を煩わせて申し訳ありませんでした。私だけでは女だと侮られて話にもならなくて。来てくださって助かりました」

「いや、別にあのくらいどうって事はないですが、放り出して問題なかったですよね?」

「ええ、結婚とか以前にアポイントもなく来て泊めろという方が礼儀に反しています。食事程度ならわからないでもないですが」

「うん、なら早いうちに追い出して正解でしたね。ああいうのは少しでも譲歩すると際限無く要求してきますから。最初のうちに断固として断ってしまった方がいいです」

 社畜時代にもいたんだよ。そういう上司が。徹夜してようやく仕事を終わらせたら、軽い気持ちで採算の合わない仕事とってきて、今日中にやっといてとかいうやつが。自分は重役出勤+定時帰りのくせに。
 こちとら休みも返上、徹夜までして頑張ってるのに適当なことするんだよな。そして文句でも言おうものなら急にキレて、自分の方が上司だから言うこと聞けっていうんだ。あんな連中とは2度と関わりたくない。

「リリアちゃーん!」

 外で何か叫んでる奴がいるが迷惑だ。護衛の人に追い払ってもらおう。場合によっては衛兵を呼んでもらってもいいしね。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

処理中です...