異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス

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第1章 召喚編

023 お見合い?

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#023 お見合い?

 コマを購入して帰って、新しい湯屋についてリリアーナさんと話していると、ハルファさんが入ってきて手紙が届いたという。

 俺は仕事かと思って部屋を出ようとしたのだが、読むだけなので部屋にいて良いと言われた。

 リリアーナさんが手紙を読み進めるうちに表情が死に始めた。何かよくない事が書かれてたんだろうか。

 俺が手紙の内容を聞くのも憚られるのでお茶を飲んでいると、最後まで読み終わったリリアーナさんはため息をはいた。

「はぁ」

「大丈夫ですか?」

「ええ、ただの縁談の申込みですわ。私は公爵という貴族では最高位の地位についていますが未だに独身です。男性の影もないので逆玉の輿を狙ってたまに縁談が来るんですよ。
 国内のはあらかた断ったんですが、未だに外国からは届くんです。今回はロザリア王国の伯爵家からですね。3男との見合いを希望されているようです」

「えっと、国が違うからかもしれませんが、公爵家に伯爵家の3男が婿入りするってのはありなんですか?」

「普通はありません。ですが、私はこの国のほとんどの見合いを断ってきましたので順番的にはそのくらいになってしまうんです。殆どは身分の差で諦めるんですけど、この家は先日も次男の見合いを持ちかけてきた家ですね。次男がダメなら3男ってのはどうかと思いますけど」

 公爵家って偉いらしいからな。ダメもとで手紙を書いてきたんだろう。手紙を出すのは大してお金も時間もかからないからね。

「それで近々その3男がこの街に来るというのです」

 え、来ちゃうの?見合いを承諾してないのに?

「観光に向かうからとりあえず会うだけでもっていう理由のようですね」

「それって普通なんですか?」

「まあ強引ではありますが、客として訪問されてしまえば対応せざるを得ませんし。お見合いという体裁ではないので適当に雑談して終わるだけですが」

 それはまた面倒な話だな。伯爵と言えば上級貴族だ。他国の上級貴族の息子が会いたいと言ったら一応は会わないといけないのだろう。

「面倒な話ではありますが、これも仕事の一環です。こういう話がなくなれば私ももう少し暇が出来るんですが」

「リリアーナさんは結婚する気はないんですか?」

「今のところありませんわ。
 結婚しても私が当主だというのは変わらないのに、自分が当主になれると思ってる馬鹿も多いですし」

 それはただの世間知らずだと思う。

「現実的なところでいうと、他国の王子あたりが候補になるでしょうか。そういう話はまだ来てませんが、その辺になると理由がないと断るのも難しいですね」

 そう言えばリリアーナさんはまだ王位継承権持ってるんだよね。序列的には4位らしい。まあまず回ってこない順位だね。

「それで顔色が悪かったのは縁談のせいですか?」

「いえ、縁談と同時に金の無心をしてきまして。相当困ってるようで、婿に取ってもらって、ついでに家の立て直し資金を出して欲しいという無心ですね。
 私が男なら側室に入れて、その代わりに資金援助をするというのもあるんでしょうけど、私の場合は女ですので側室という概念がありません。なので当然正夫扱いです。
 どうやらこの伯爵はそこの所を誤解しているようですね。貴族が商会に娘をやって資金援助を願うのはありますが、私に対してする行為ではありませんね」

 つまり不敬だという事か。
 まあ伯爵家の3男ってどのくらいの意味があるのか分からないけど、貴族の3男にそれほど権力があるとは思えないし、それを公爵家の当主の夫に据えようなんて傲慢にも程があるわな。

「それではどうするんです?」

「もちろん無心は断りますし、3男の面会も断ります。
 これだけ厚顔無恥な要望を出してくる相手と面会でもしようなら、噂をばらまかれて迷惑する未来しか浮かびません。なので最初から会わないのが最善です」

 そんな馬鹿なことする奴がいるのか。
 もしかして勝手に婚約したとか噂を立てて強引に話を進める?いや、より上位の貴族がやるならともかく、他国の、それも伯爵程度が出来る事じゃないな。いや、本人は出来ると思ってるのか?

 でもそれだとリリアーナさんの結婚相手って候補はいるのか?他国の王子の年齢は知らないけど、国内でも結婚相手はいくらでもいるだろうし、わざわざ海外に婿入りさせるような人はいるんだろうか。

「年齢的に合うのは一人だけです。今年24歳になるアレグスト帝国の皇子です。ですが、王族としての仕事は全くしておらず、冒険者の真似事をしているそうです。
 皇帝陛下も居場所を知るだけでも苦労するくらいあちこち飛び回っているようですので、縁談どころではないでしょうね」

 皇子が冒険者の真似事ねぇ。わざわざ危険な真似しなくても生きていけるだろうに。


 まあ人の縁談は置いといて、俺にも見合いの話が出てるそうだ。
 勇者と違って乱暴でもなく常識人だという認識をされているようで、この世界に残るつもりなら是非、という話らしい。
 俺は戻る気だから断ってもらうが、異世界の血に興味を示す貴族は一定数いるらしい。
 別に魔力がすごいとか、体格がいいとか全くないから俺の血なんか入れても何も良い事ないと思うんだけどね。



 
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