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第1章 召喚編

013 使用人

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#013 使用人

 リリアーナさんの屋敷は広いので、管理にも使用人をたくさん雇っている。

 俺も全員の名前を知っている訳ではないが、掃除、洗濯、炊事、庭師、護衛といろんな仕事をしている。
 それぞれ専門職らしく、洗濯を担当している人は染み抜きなども高度な技術を持っているらしい。

 そんな中でも俺が注目しているのでハルファさんだ。大抵の分野が出来るらしく、新人の教育係になっているらしい。
 小柄で力がなさそうなのに重い花瓶を持っているのを見たことがある。手伝おうとしたが、俺には持てなかった。どうやらあの身長でも俺より力があるらしい。恐ろしいな異世界。

 俺もそのおこぼれで、紅茶の入れ方を習ったりしている。沸騰しているお湯ではダメだとか、数秒蒸らすだとか、色々と教えてもらった。
 さらに彼女はハーブティーを趣味にしているらしく、俺にもリラックス効果のあるお茶などを分けてくれたりする。

 寝る前に飲むとこれがよく寝れるんだわ。

 他にも逆に興奮を誘う物なども作れるらしいが、使用用途は教えてもらえなかった。でも多分あれだよね?リリアーナさんには不要だろうけど、男の当主だったら必要だろうしね。ハッスルハッスルってか。

 他にもテーブルマナーとか手紙の書き方とかを教えてもらった。貴族同士の手紙の書き方は複雑でよく理解できなかったが、普通の手紙の時候の挨拶などの定型文はいくつか教えてもらった。

 テーブルマナーは、まあ、なんと言うか、失礼にならないレベル?にしかならなかったけど、食器とナイフの当たる音がするのはダメとか普通に無理でしょう?
 ひたすら繰り返して力加減を覚えるのだとか。だからマナーはその人の生まれを象徴する一つでマナーがしっかりしていると、裕福な商人や貴族だろうと認識される。つまり一つのステータスだ。

 クレアも一通りは出来るそうだが、ハルファさんに教えられたそうだ。ハルファさんってまだ20代に見えるんだけど、一体何歳なんだ?




 他の使用人として俺が知ってるのはミリアさんだ。この屋敷の警備を担当している。

 最初に会ったのは夜に寝れなくて庭で黄昏ていたら、声をかけられたのだ。もちろん不審者として。
 特に明かりを持ってなかったので俺だとは気づかなかったようだ。すぐに謝られてが、こんな夜中にあかりも持たずに立っている俺が悪い。

 彼女は元冒険者でCランクまで上がったらしい。Cランクってのはベテラン冒険者に当たり、そこそこ信用があるそうだ。謙遜してるんだろうけど、Dランクが一番多いって聞くからCランクはそれなりに強いんだと思う。

 彼女には暇を見て剣を習っている。別に冒険者で生計を立てようなんてこれっぽっちも考えていないが、体を動かしたいと言ったら教えてくれる事になった。
 この世界、ランニングの習慣すらないから運動といえば戦闘訓練を指すらしい。一般人はストレッチ程度しかしないとか。ヨガとかやったら流行るかね?俺も出来ないからそんな未来はないけど。



「ジン様、聞かれましたか?」

「うん?何を?」

 俺が部屋で魔法の本を読んでいると声をかけられた。
 ちなみに魔法の本は資料集みたいなやつで、本格的に使い方を学ぶと言うよりもどんな魔法があるかを図鑑的に載せているやつだ。
 俺は”普通の”加護がないので魔法は使えない。あの力は別として。
 だけど魔法には興味がある。男なら誰だって興味があるよね?それでどんな魔法があるかだけでも知ろうと本を買ってきたのだ。一冊金貨二枚なりだ。

「勇者様方が訓練を開始されたようです」

「勇者?ああ、あのヤンキーね。え、今まで訓練してなかったの?」

「ええ、ヤンキーが何かは知りませんが、勇者様方は初日に体力訓練の途中で打ち切ってから参加されなくなったとか。なんでも自分たちには十分に実力があるから今更訓練の必要はないとかで。
 ただ、最近騎士の一人と衝突し、剣を合わせて負けたとかで王命で訓練をさせる事になったようです。一般騎士に負けるんだから当然ですよね」

 ちょっとトゲがある言い方だが、確かに一般騎士に負けるようじゃ、わざわざ異世界から呼んだ意味はないわな。

 勇者に関しては良い噂は聞かない。傍若無人で奴隷はいないのかとか言ってるらしい。

 この世界、奴隷はいる。犯罪奴隷、借金奴隷、いろいろだ。中には性奴隷もいるので決して間違いじゃないけど、勇者いは戦闘力を期待されているのだ。訓練もせずに奴隷を求めるなんて通るはずがない。

 それもだんだんとエスカレートしているらしく、先日は王女様の胸を触ったとか。正面から堂々と揉んだらしい。
 普通なら間違いなく打首だ。家族郎等処罰されても文句は言えない。だけど勇者だと言う事で謹慎で済まされた。まあ外を出歩いている連中じゃないから謹慎が罰になってるかは知らないが。
 揉まれた王女は数日は部屋から出てこなかったらしい。見知らぬ男にいきなり胸を揉まれたのだ、ショックだっただろう。

 同じ異世界人として評判を落とすような事はやめてほしい。まあヤンキーに常識を説いても無駄か。
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