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第1章 召喚編
011 Fランク冒険者
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#011 Fランク冒険者
朝食の後、リリアーナさんが急いで手配してくれた冒険者用の服と革鎧を着て、金貨を十枚ほど持たされて屋敷を出た。
俺が力を使わなくても良いように、事前に渡しておこうと言うのだ。
金貨十枚って1000万Rだよね?数年は暮らせるよ?
とにかく冒険者ギルドで正規の登録を終えないと身分証として機能しないので薬草を納めにいく。
屋敷を出て左に行って、2本目を右に行って・・・左に曲がって・・・あれ、段々人気が少なくなって来たような?それに建物も古いような気がするし。
おかしいな言われた通りに曲がったはずなのに道を間違ったかな?脇道をスルーしたのが不味かったか?やっぱり最初はクレアについて来てもらうべきだったかも。
進んでも戻っても場所がわからないなら進んでみよう。前向きに生きないとね。
どうやら俺はスラムに迷い込んだらしい。通りは狭いわけじゃないんだけど、周囲の家は家のていを為してないし、所々に普通に人が寝ている。
ゴミも落ちているし、匂いもする。これは進まずに戻ったほうがよかったパターンか。
「おうにいちゃん、良い鎧着てんじゃねえか。ちょっと貸してくんねえか?」
正面から歩いてきた三人組が絡んできた。どうやら俺の真新しい鎧が目当てのようだ。手に入る最高級品をって言ってたから多分見た目も高く見えるんだろう。
「えっと、これは貰い物なので貸すわけには・・・」
と言うか貸してくれって言ってるけど、寄越せってことだよな?こんな奴らにやる鎧はない!
と言うことで、後ろをむいて全力で走り出す。
俺は喧嘩したこともないんだ。スラムのやんちゃなおっさんどもと喧嘩して勝てる気がしない。
必死に走るが、俺の体力なんてしれた物だ。すぐに息が上がる。
ゼェゼェ
もうダメ。走れない。後ろからまだ追ってくる足音がするけど限界だ。
膝に手をついて息を整えていると、三人が追いついてきた。
「にいちゃん、いきなり逃げるなんてひでえな。これは鎧だけじゃなくて身ぐるみはいじゃわないといけねえな」
ゲハゲハと笑っているが、俺はそれどころじゃない。酸素、酸素を寄越せ。
その途端、周囲に風が吹き、俺の髪を揺らした。
うん?息が楽になったな。ちょっとは落ち着いてきたのか。
ふと気になって後ろを見ると、三人が素っ裸で立っていた。
どうやら服は細切れになって足元に落ちているようだ。
「ぷっ!」
思わず笑ってしまった。いかんいかん。相手はスラムの不良ども。笑っては挑発してるように見えてしまう。
相手が素っ裸になって何が起こったか分かってないうちに逃げさせてもらおう。
とにかく一直線に行けば城壁に当たるだろうと真っ直ぐに走る。今度は追ってこないようなので、途中で歩きに変えた。何度も息が苦しくなるような走りはしたくないもんね。
歩いていると段々と家がまともになり、地面も綺麗になって行った。多分スラムを抜けたのだろう。そのうち大通りに出て、道を歩いている人に冒険者ギルドの場所を聞いた。
大通りを進んで2本目の大通りを左に曲がれば良いらしい。
もしかしてクレアから聞いた道も大通りを数えて何本だったのかな?
冒険者ギルドにつくと、相変わらず中からは喧騒が溢れていた。開いている扉から入ると、やはり十人ほどが並んでいる。
今回はちゃんとカウンターの上に書いてある、「達成依頼報告所」の文字を確認して並んだ。
30分ほどで順番が回ってきたので薬草を提出すると一度はダメだと言われかけたが、俺がGランクだと分かってからは買取額が半分になるので良ければ、と言うことで依頼完了となった。報酬は大鉄貨二枚だった。
まあ薬草一本で二十円なら十分な報酬か?よくわからんけど。
と言うかよく薬草一本で依頼達成にしてくれたな。自分で用意しておいてなんだけど、普通10本1束とかで計算しない?
俺の顔に疑問が溢れてたのだろう、受付嬢は親切に教えてくれた。これはGランククエストとしての成功であって、普通は50本以上で依頼達成になるらしい。
一本20Rが半額だから実際は40R。それが50本だと2000R。なるほど。これなら最低限食事はできる金額だな。安宿の値段は知らないからベッドで寝れるかは分からないけどね。
とにかく1件の依頼達成で無事Fランク冒険者として登録された。
「パチパチパチ」
受付嬢さん、せめてちゃんと手で拍手しましょうよ。口で言われても嬉しくないよ。
「おめでとうございます。これでジンさんも冒険者の仲間入りです。是非とも依頼をこなして有名になってくださいね」
ああ、俺は冒険者登録はジンで登録した。カンザキだと発音しにくいらしい事を聞いたからだ。
「では次のかた~」
ああ、俺の祝福は口でのパチパチで終わりなのね。まあ新米冒険者に構ってもいられないか。
俺は念のため掲示板を見る。
もちろんFランク推奨の場所だ。多分あの力?を使えばドラゴンでも倒せそうな気はするけど、そんな危険に自分から挑みたくない。
Fランクは薬草採取に大工の手伝いにスライムの討伐。後は手紙の配達とかか。大体大銅貨五枚程度と。宿が大銅貨五枚位と聞いてるから、最低限生活できる金額ってことかな。
まあ良いや。冒険にも憧れはあるけど、まずは社畜人生の垢を落とさないと。働くのはそれからでも十分だ。
朝食の後、リリアーナさんが急いで手配してくれた冒険者用の服と革鎧を着て、金貨を十枚ほど持たされて屋敷を出た。
俺が力を使わなくても良いように、事前に渡しておこうと言うのだ。
金貨十枚って1000万Rだよね?数年は暮らせるよ?
とにかく冒険者ギルドで正規の登録を終えないと身分証として機能しないので薬草を納めにいく。
屋敷を出て左に行って、2本目を右に行って・・・左に曲がって・・・あれ、段々人気が少なくなって来たような?それに建物も古いような気がするし。
おかしいな言われた通りに曲がったはずなのに道を間違ったかな?脇道をスルーしたのが不味かったか?やっぱり最初はクレアについて来てもらうべきだったかも。
進んでも戻っても場所がわからないなら進んでみよう。前向きに生きないとね。
どうやら俺はスラムに迷い込んだらしい。通りは狭いわけじゃないんだけど、周囲の家は家のていを為してないし、所々に普通に人が寝ている。
ゴミも落ちているし、匂いもする。これは進まずに戻ったほうがよかったパターンか。
「おうにいちゃん、良い鎧着てんじゃねえか。ちょっと貸してくんねえか?」
正面から歩いてきた三人組が絡んできた。どうやら俺の真新しい鎧が目当てのようだ。手に入る最高級品をって言ってたから多分見た目も高く見えるんだろう。
「えっと、これは貰い物なので貸すわけには・・・」
と言うか貸してくれって言ってるけど、寄越せってことだよな?こんな奴らにやる鎧はない!
と言うことで、後ろをむいて全力で走り出す。
俺は喧嘩したこともないんだ。スラムのやんちゃなおっさんどもと喧嘩して勝てる気がしない。
必死に走るが、俺の体力なんてしれた物だ。すぐに息が上がる。
ゼェゼェ
もうダメ。走れない。後ろからまだ追ってくる足音がするけど限界だ。
膝に手をついて息を整えていると、三人が追いついてきた。
「にいちゃん、いきなり逃げるなんてひでえな。これは鎧だけじゃなくて身ぐるみはいじゃわないといけねえな」
ゲハゲハと笑っているが、俺はそれどころじゃない。酸素、酸素を寄越せ。
その途端、周囲に風が吹き、俺の髪を揺らした。
うん?息が楽になったな。ちょっとは落ち着いてきたのか。
ふと気になって後ろを見ると、三人が素っ裸で立っていた。
どうやら服は細切れになって足元に落ちているようだ。
「ぷっ!」
思わず笑ってしまった。いかんいかん。相手はスラムの不良ども。笑っては挑発してるように見えてしまう。
相手が素っ裸になって何が起こったか分かってないうちに逃げさせてもらおう。
とにかく一直線に行けば城壁に当たるだろうと真っ直ぐに走る。今度は追ってこないようなので、途中で歩きに変えた。何度も息が苦しくなるような走りはしたくないもんね。
歩いていると段々と家がまともになり、地面も綺麗になって行った。多分スラムを抜けたのだろう。そのうち大通りに出て、道を歩いている人に冒険者ギルドの場所を聞いた。
大通りを進んで2本目の大通りを左に曲がれば良いらしい。
もしかしてクレアから聞いた道も大通りを数えて何本だったのかな?
冒険者ギルドにつくと、相変わらず中からは喧騒が溢れていた。開いている扉から入ると、やはり十人ほどが並んでいる。
今回はちゃんとカウンターの上に書いてある、「達成依頼報告所」の文字を確認して並んだ。
30分ほどで順番が回ってきたので薬草を提出すると一度はダメだと言われかけたが、俺がGランクだと分かってからは買取額が半分になるので良ければ、と言うことで依頼完了となった。報酬は大鉄貨二枚だった。
まあ薬草一本で二十円なら十分な報酬か?よくわからんけど。
と言うかよく薬草一本で依頼達成にしてくれたな。自分で用意しておいてなんだけど、普通10本1束とかで計算しない?
俺の顔に疑問が溢れてたのだろう、受付嬢は親切に教えてくれた。これはGランククエストとしての成功であって、普通は50本以上で依頼達成になるらしい。
一本20Rが半額だから実際は40R。それが50本だと2000R。なるほど。これなら最低限食事はできる金額だな。安宿の値段は知らないからベッドで寝れるかは分からないけどね。
とにかく1件の依頼達成で無事Fランク冒険者として登録された。
「パチパチパチ」
受付嬢さん、せめてちゃんと手で拍手しましょうよ。口で言われても嬉しくないよ。
「おめでとうございます。これでジンさんも冒険者の仲間入りです。是非とも依頼をこなして有名になってくださいね」
ああ、俺は冒険者登録はジンで登録した。カンザキだと発音しにくいらしい事を聞いたからだ。
「では次のかた~」
ああ、俺の祝福は口でのパチパチで終わりなのね。まあ新米冒険者に構ってもいられないか。
俺は念のため掲示板を見る。
もちろんFランク推奨の場所だ。多分あの力?を使えばドラゴンでも倒せそうな気はするけど、そんな危険に自分から挑みたくない。
Fランクは薬草採取に大工の手伝いにスライムの討伐。後は手紙の配達とかか。大体大銅貨五枚程度と。宿が大銅貨五枚位と聞いてるから、最低限生活できる金額ってことかな。
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