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第1章 召喚編
001 社畜
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# 001 社畜
今日は何とか終電で帰れそうだ。昨日は徹夜だったから早く帰って風呂に入りたい。
会社から最寄りの駅に向かう途中でコンビニに寄りタバコを購入する。一緒に買うコーヒーをブラックか微糖かで迷ったが、疲れてる時は糖分が必要だと自分に言い訳して微糖を買う。
「はあ、やっぱり転職しようかなぁ。全然給料上がんないし、休みもほとんど無いし。そろそろ体力的にもきついんよね」
俺ももう37だ。毎日終電はきついものがある。部下も育ってきてはいるが、やはり離職率が高く、ある程度実力がつくと辞めていってしまう。これではいつまでたっても楽にならない。
「はぁ、どっか田舎でのんびり畑でも耕すか?確か最近は過疎化が進んでるとかで補助金が出る地域があったはず。この年でも応募できるのかは知らないけど調べてみるくらいは良いかもしれないな」
最近独り言が多くなったと感じるのは仕事が終わってからだ。仕事中は集中しているのでそれほどでも無いんだが、仕事が終わって気が抜けたら結構独り言を喋っている。
「ふぅ、そろそろ終電に乗るか」
缶コーヒーを飲み干し、タバコを消す。
時間を調整したのもあり、終電はすぐにきた。
金曜の夜だからか終電でも座れなかった。他の曜日なら確実に座れるのだが。
つり革を持って、移住に関しての情報をスマホで検索していたら、急ブレーキがかかった。
やべ、つり革から手が離れた!
立っている人数はそれほど多く無いが、それぞれが転倒するなりしていて足場は混乱している。
そんな中、俺はうまく着地する事も出来ずにゴロゴロと転がって端のドアまで行ってしまう。
ゴツン
頭がドアにぶつかって止まった。
ふう、スーツは汚れただろうけど、怪我しないでよかった。頭は角にぶつけたのか結構痛いが、手をやってみても血は出てないだろうし、たんこぶくらいで済みそうだ。
『飛び込みがありましたので急ブレーキをかけました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。事後処理がありますのでしばらくお待ちください』
どうやら自殺志願者が飛び込みをしたようだ。迷惑なやつだ。
スマホを拾って確認すると画面が少し割れていた。何処かにぶつけたんだろう。一応動いているが、これは修理案件かな?保証には入ってないから実費なんだよな。修理に何万もかけるくらいなら買い直すか?
そんな事をつらつらと考えていたら電車が再び動き出した。
『お待たせしました。この電車は10分遅れで運転を再開ました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません』
実際には事故にならなかったのだろう。もし轢いてたら警察とかきて何時間も拘束されただろうしな。
電車が進むにつれて頭痛がしだした。さっき頭打ったのが悪かったかな?帰りにコンビニで痛み止めでも買うか。
俺の降りる駅に到着する頃には頭痛は激痛と言っても良いくらいに酷かった。吐き気はするし、目は霞むし。
この時間だと病院も薬局はやってないし。でも救急車って感じでも無いんだよな。電車で頭打って痛いから救急車呼んだって聞いたら俺でも呆れるからな。
駅前のコンビニで痛み止めを買おうと寄るが、コンビニ前には不良が数人屯しており、ヤンキー座りで缶コーヒーを飲んでいる。タバコ吸ってないだけマシか。
痛み止めを買ってコンビニから出ると、たむろしていたヤンキーに取り囲まれた。
「おっちゃんよ、俺たちお金に困ってるんだわ。ちょっとカンパしてくんね?」
俺はそれどころじゃ無いんだ。頭が痛いから早く薬を飲みたいんだ。
いっその事数千円程度渡してしまってこの場を収めようかと考えたが、俺もそれほど余裕はない。それにここは俺のアパートの近くだ。一度金を渡したら金づるにされて何度もせびりに来るだろう。
「すまんが他をあたってくれ。俺は早く家に帰りたいんだ」
「おいおい、そんなつれない事いうなよ。おっさんこの近くに住んでんだろう?何回か見た事あるから間違いないはずだぜ?よかったら一緒に家まで行ってやろうか?家知ってたらタカリ放題だからな」
他の連中もゲラゲラ笑っているが、俺はそれどころじゃ無い。どんどん頭が痛くなってきてそろそろ意識がなくなりそうだ。
あ、ダメだ。地面になんか模様が浮いてる幻覚が見えてきた。
「なんだ、これ、地面が光ってねえか?」
「おいおい、こんなの初めて見たぞ」
「やべえんじゃねえ?」
頼むから喋らないでくれ。耳から入ってくる音がガンガンと頭を揺すってるんだ。
目の前が真っ白になった。ああ、これは気絶したな。
「ようこそアタラクシアへ。私は今回の召喚担当を担当しましたリリアーナと申します。
この世界は皆様からすれば異世界ということになります。この世界は魔王の脅威にさらされています。皆様には魔王を倒すためにお力をお借りしたいと思っております」
意識を失ったのは一瞬だけだったようだ。今は地面に倒れてひたすら頭痛に耐えている。
何やら女性が喋っているが頭に入ってこない。
「召喚・・・もしかして勇者召喚か!」
「すげー、本当にあるんだっ」
「俺も勇者だよな?!違ったら泣くぞ?!」
男の声は頭に響くからやめてくれ。
「えっと、そちらの方はまだ起きていらっしゃらないのでしょうか?マリー、起こして差し上げてください。説明は一度にしたいので」
頼む、動かさないでくれ。今は痛みに耐えるので精一杯なんだ。
「お嬢様、この方頭を怪我されているようです。意識はあるようですが・・・」
「え、それはいけませんね。すぐに医師を呼んでください。ビリー、あの方を客室に。私は他の方に説明を続けますので」
医者に見せてくれるのか。頼む、痛み止めをくれ。持っていた袋に入ってるはずだから。
今日は何とか終電で帰れそうだ。昨日は徹夜だったから早く帰って風呂に入りたい。
会社から最寄りの駅に向かう途中でコンビニに寄りタバコを購入する。一緒に買うコーヒーをブラックか微糖かで迷ったが、疲れてる時は糖分が必要だと自分に言い訳して微糖を買う。
「はあ、やっぱり転職しようかなぁ。全然給料上がんないし、休みもほとんど無いし。そろそろ体力的にもきついんよね」
俺ももう37だ。毎日終電はきついものがある。部下も育ってきてはいるが、やはり離職率が高く、ある程度実力がつくと辞めていってしまう。これではいつまでたっても楽にならない。
「はぁ、どっか田舎でのんびり畑でも耕すか?確か最近は過疎化が進んでるとかで補助金が出る地域があったはず。この年でも応募できるのかは知らないけど調べてみるくらいは良いかもしれないな」
最近独り言が多くなったと感じるのは仕事が終わってからだ。仕事中は集中しているのでそれほどでも無いんだが、仕事が終わって気が抜けたら結構独り言を喋っている。
「ふぅ、そろそろ終電に乗るか」
缶コーヒーを飲み干し、タバコを消す。
時間を調整したのもあり、終電はすぐにきた。
金曜の夜だからか終電でも座れなかった。他の曜日なら確実に座れるのだが。
つり革を持って、移住に関しての情報をスマホで検索していたら、急ブレーキがかかった。
やべ、つり革から手が離れた!
立っている人数はそれほど多く無いが、それぞれが転倒するなりしていて足場は混乱している。
そんな中、俺はうまく着地する事も出来ずにゴロゴロと転がって端のドアまで行ってしまう。
ゴツン
頭がドアにぶつかって止まった。
ふう、スーツは汚れただろうけど、怪我しないでよかった。頭は角にぶつけたのか結構痛いが、手をやってみても血は出てないだろうし、たんこぶくらいで済みそうだ。
『飛び込みがありましたので急ブレーキをかけました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。事後処理がありますのでしばらくお待ちください』
どうやら自殺志願者が飛び込みをしたようだ。迷惑なやつだ。
スマホを拾って確認すると画面が少し割れていた。何処かにぶつけたんだろう。一応動いているが、これは修理案件かな?保証には入ってないから実費なんだよな。修理に何万もかけるくらいなら買い直すか?
そんな事をつらつらと考えていたら電車が再び動き出した。
『お待たせしました。この電車は10分遅れで運転を再開ました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません』
実際には事故にならなかったのだろう。もし轢いてたら警察とかきて何時間も拘束されただろうしな。
電車が進むにつれて頭痛がしだした。さっき頭打ったのが悪かったかな?帰りにコンビニで痛み止めでも買うか。
俺の降りる駅に到着する頃には頭痛は激痛と言っても良いくらいに酷かった。吐き気はするし、目は霞むし。
この時間だと病院も薬局はやってないし。でも救急車って感じでも無いんだよな。電車で頭打って痛いから救急車呼んだって聞いたら俺でも呆れるからな。
駅前のコンビニで痛み止めを買おうと寄るが、コンビニ前には不良が数人屯しており、ヤンキー座りで缶コーヒーを飲んでいる。タバコ吸ってないだけマシか。
痛み止めを買ってコンビニから出ると、たむろしていたヤンキーに取り囲まれた。
「おっちゃんよ、俺たちお金に困ってるんだわ。ちょっとカンパしてくんね?」
俺はそれどころじゃ無いんだ。頭が痛いから早く薬を飲みたいんだ。
いっその事数千円程度渡してしまってこの場を収めようかと考えたが、俺もそれほど余裕はない。それにここは俺のアパートの近くだ。一度金を渡したら金づるにされて何度もせびりに来るだろう。
「すまんが他をあたってくれ。俺は早く家に帰りたいんだ」
「おいおい、そんなつれない事いうなよ。おっさんこの近くに住んでんだろう?何回か見た事あるから間違いないはずだぜ?よかったら一緒に家まで行ってやろうか?家知ってたらタカリ放題だからな」
他の連中もゲラゲラ笑っているが、俺はそれどころじゃ無い。どんどん頭が痛くなってきてそろそろ意識がなくなりそうだ。
あ、ダメだ。地面になんか模様が浮いてる幻覚が見えてきた。
「なんだ、これ、地面が光ってねえか?」
「おいおい、こんなの初めて見たぞ」
「やべえんじゃねえ?」
頼むから喋らないでくれ。耳から入ってくる音がガンガンと頭を揺すってるんだ。
目の前が真っ白になった。ああ、これは気絶したな。
「ようこそアタラクシアへ。私は今回の召喚担当を担当しましたリリアーナと申します。
この世界は皆様からすれば異世界ということになります。この世界は魔王の脅威にさらされています。皆様には魔王を倒すためにお力をお借りしたいと思っております」
意識を失ったのは一瞬だけだったようだ。今は地面に倒れてひたすら頭痛に耐えている。
何やら女性が喋っているが頭に入ってこない。
「召喚・・・もしかして勇者召喚か!」
「すげー、本当にあるんだっ」
「俺も勇者だよな?!違ったら泣くぞ?!」
男の声は頭に響くからやめてくれ。
「えっと、そちらの方はまだ起きていらっしゃらないのでしょうか?マリー、起こして差し上げてください。説明は一度にしたいので」
頼む、動かさないでくれ。今は痛みに耐えるので精一杯なんだ。
「お嬢様、この方頭を怪我されているようです。意識はあるようですが・・・」
「え、それはいけませんね。すぐに医師を呼んでください。ビリー、あの方を客室に。私は他の方に説明を続けますので」
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