白家の冷酷若様に転生してしまった

夜乃すてら

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3幕 美女画の怪

2.5 こちらの気も知らないで ※R18表現あり (加筆部分)

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 まさか寝屋に直行すると思ってもみなかったので、碧玉は毛織の羽織や厚手の布地の衣を重ね着していた。
 天祐は碧玉に口づけしながら、碧玉の頭に手を伸ばし、髪紐を解く。今日は離れから出る用事もなかったので、紐で結っていただけだ。
 代わりに、碧玉は天祐の冠を外す。こうして髪に触れられるのは、家族や近しい世話人くらいなものなので、天祐はうれしそうに表情を緩めた。こちらに体重をかけないように配慮しながら、額からこめかみ、耳へと口づけの雨を降らす。

「兄上」
「んん」

 耳殻を甘噛みしながら、天祐はささやいた。吐息が刺激になり、碧玉は思わず赤子がむずがるような声を漏らしてしまい、わずかに眉をひそめる。

「兄上って耳が弱いですよね」
「うるさい。そのような場所、普段は誰も触らぬだろう」
「触れる者がいるほうがまずいですよ。俺が暴れてもいいんですか?」
「まったく……」

 かわいい弟の顔でいたいけな態度をとってみせる天祐に、碧玉は呆れの視線を向ける。

「冗談のつもりで、本気だろう。そなたが暴れては困る」
「うぐっ」

 碧玉は弟にしつけをする兄の態度で、天祐の鼻を軽くつまんだ。天祐はわざとらしくうめく。二人して、そのおかしさに笑いをこぼす。たまにはこんなふうにじゃれあうのも悪くはないが、天祐という狼は、そこで止まるわけもない。天祐の顔が碧玉の首筋に寄せられ、ぺろりとなめられた。

「あっ」

 ゾクリと肌が粟立ち、声をこぼす。それに気を良くした天祐は、碧玉の首筋に、ちゅっちゅっと口づけを続けた。
 そうしながら、天祐は碧玉の帯を解いて、隙間から手を差し入れた。肌に触れられた瞬間は指先の冷たさにひやりとしたが、怒っていただけあって、天祐の体温はいつもより高い。すぐに肌になじんだ。

「脱がせぬのか?」
「もう少し体が温まってからにしますよ。火鉢はありますけど、部屋が冷えていますから」
「最近では、寒さはこたえぬようになったぞ」

 さすがに毒を飲んで倒れた直後からしばらくは体が弱り、白領の寒さに震えていた。修業を再開してからは、少しずつ体力もついてきて、以前のように寒さに耐性がついてくるようになった。

「それでも、です。俺の留守中に寝こまれては嫌ですから」

 天祐はそんなことを言うが、どうせ天祐に抱かれた翌日は、寝所から出られずに寝て過ごすはめになる。茶化してやろうかと頭をよぎるが、風邪を引かせたくないという意味だと分かってはいるので、碧玉は余計なことは言わないでおいた。

「ああ、この前つけた痕が、もう消えてる」

 天祐は少し残念そうに言って、碧玉の左の鎖骨に噛みついた。にぶい痛みがした後、天祐がその痕をいたわるようになめた。そして、そのまま下にずれて、肌をきつく吸う。

「んっ」

 甘い痛みをもたらされるのにも、少ししゃくだが、碧玉はすっかり慣れた。
 剣だこのある硬い指先が、碧玉の胸の飾りに触れる。やわやわともんだり、突起をつまんだりされるうちに、胸がじんと痺れてきた。最初の頃は、胸では何も感じなかったのにと、変化に戸惑う。

「あっ」

 天祐が胸の飾りをやわく噛んだので、碧玉の声に甘さが混じった。天祐はしばらく胸を愛撫すると、ふっと笑う。

「ああ、兄上の白い肌に、紅梅が咲きましたね」
「……うるさい」

 詩的に表現されると、逆にいたたまれないものがある。碧玉とて、羞恥を感じないわけではないのだ。天祐は碧玉の顔を覗きこんだ。

「ふふ。顔も赤い。恥ずかしいですか?」
「当たり前だろうが」

 天祐の右の親指が、碧玉の下唇に触れる。このどうしようもない気持ちを逃がそうと、碧玉はその親指に噛みついた。

「……っ」

 天祐はびっくりした様子で、こちらを凝視する。

「な、なんだ」

 もごもごと問うと、天祐の目がすわった。

(……まずい)

 それが何か分からないが、本能的に、碧玉は自分がやらかしたことを悟った。

「兄上、あんまりかわいい真似をしないでください。今日は余裕がないので」

 天祐はそっと右手を取り返すと、衣の上を脱いだ。たくましい裸体がさらされる。それから碧玉の衣の合わせを解いて下着だけ脱がせた。新雪のような白い足が現れる。天祐はごくりと喉を鳴らすと、碧玉の膝に手をかけ、性急に割り開く。
 体への愛撫もそこそこに、天祐は牀榻脇の几の引き出しを開けて香油を取り出し、中身を手へと垂らす。そして、碧玉の秘めた場所へと触れた。

「……っ」

 手の平で温めた香油でも、冷たいものは冷たい。その刺激にぴくりと足が揺れた。
 天祐はまるで碧玉をあやすように、頬に口づける。そうしながら、指先がつぷりと中に入ってきた。
 何回目だろうと、この感覚は不慣れだ。碧玉が眉を寄せたのに気づいたのか、天祐は碧玉自身に左手で触れた。香油に濡れた手がゆっくりと竿を上下にこすると、反応してしまう。そちらに碧玉が気をとられている間に、天祐は中を丁寧にほぐしていく。

「……くっ。同時はやめよ」

 碧玉はたまらずにうめく。
 兆し始めた碧玉自身の亀頭を、天祐がぐりぐりと親指の腹で刺激しながら、中の良い場所をぐっと押したせいだ。
 天祐は碧玉自身から手を離し、代わりに中を責めたてた。

「うあっ、あっ、ううっ。――あ?」

 あと少しで達するというところで、天祐は中から指を抜いた。
 碧玉が恨みがましい目で見たせいか、天祐は困ったように笑う。

「言ったでしょう? 今日は余裕がない、と。どうせなら、俺ので達してください」
「あっ」

 天祐は下衣を緩め、すっかり起き上がっている陽根をさらした。そして碧玉の足をぐいと開かせると、陽根に香油をまとわせてから、碧玉のほうへ腰をぐっと押しこんできた。指よりも太くて熱いものが、碧玉の中に入ってくる。充分にほぐされているので痛みはないが、この瞬間の圧迫感には息がつまる。
 天祐は浅い所で陽根を抜き差しする。良い場所に当たるので、碧玉の意識はあっという間にそちらにさらわれた。
 天祐はゆっくりと腰を動かしていたが、碧玉の腰を掴むと、強く揺さぶり始める。

「ひっ。あ、あっ、急に……っ」
「はあ。兄上の中は気持ちいい」

 碧玉は天祐の肩に爪を立てながら、刺激に思わず閉じた目を開ける。天祐は悦に入った赤い顔をして、こちらをらんらんと見つめていた。一瞬、碧玉は猛禽ににらまれた鼠の気分を味わった。

「ああっ」

 奥を強くえぐられ、碧玉は悲鳴を上げる。強い刺激から無意識に逃げようとする腰を、天祐はがしりと掴んで引きずり戻す。勢いをつけて腰を打ちつけ、肌が鳴った。

「兄上、逃げないでください」
「うう……」

 のけぞった碧玉の喉を、天祐は甘噛みする。

「朝まで離しませんから」

 視線と声に執着をじりじりとにじませて言うと、天祐は碧玉の喉をなめてから、身を起こす。そして腰を押さえて、強く腰を振り始めた。

「あ、あ、やめっ。――っ。あああああ」

 先ほど達しかけていた碧玉の体は、やすやすと高みに上らされた。奥を強く突かれ、碧玉はたまらず達する。
 そしてそれに遅れて、天祐も中へと精を放った。その刺激にも、碧玉は身を震わせる。

(……そんなに嫌ならば、行かなければよいだろうに)

 雪深く険しい時期に、家族を――いや、恋人が旅立つのを見送りたい者などいるのだろうか。
 碧玉は心に不満を抱えながら、天祐の背をぎゅっと抱きしめた。



 そんなふうに一夜を共にしてから、天祐は明け方には白家を出発した。大きな鳥に変化させた式神の背に乗り、門弟を一人だけ連れていった。
 結局、それから二週間後。門弟だけ帰ってきて、天祐が行方知れずになったことを報告したのだった。
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