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本編 第一部
57. 治療という名目で ※R15表現あり
しおりを挟む※R18よりなので、背後に気を付けてください。
☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡
自分から迫るなんて、そういえば初めてだ。
シオンが困り果てているので、僕はヘッドボードの柵に手をついて、シオンの口に軽くキスをした。
驚くシオンが、ちょっと面白い。
「乙女を手ごめにしようとする犯罪者って、こんな気分なんでしょうか」
軽口を叩く僕に、シオンは眉を寄せる。
「女性を襲ったら、即座に断頭台行きですよ」
「そうなんですか? 冒険ものの小説には出てきたのに」
前の世界のことを話すわけにいかないので、僕は物語のせいにした。
「ディル様、自分を大事にしてください。こんな真似はしなくていいのです」
「それで心得のある人を呼ぶんでしたら、僕のプライドに差し障りますね。どうして苦しんでいる婚約者候補の世話を、他人にゆずらねばならないんですか」
「あ、あなたは世話される側の人間で、する側では……っ」
シオンがうるさいので、僕は再び唇を重ねた。
「シオン、僕に夢を見すぎですよ。大事に守られる姫君扱いされても、ちっともうれしくありません。尊重はしてほしいですが、過保護がすぎると馬鹿にされているみたいに感じます。僕はもう大人なので」
ディルレクシアは十七歳だが、本来の僕は二十歳だ。シオンやネルヴィスとは同年代だ。
タルボは兄として慕えるが、彼らとはあくまで肩を並べていたい。オメガなので、現実では僕がずっと上の位置にいるかもしれないが、精神的に。
「だいたい、あなたも知ってるでしょう。とっくに綺麗な体ではありませんよ」
ふっと自嘲気味に、僕は笑う。
シオンの眼差しがキッと強くなり、歯噛みした。
「あおらないでください。私は独占欲が強いんです。どれほどあなたが欲しいか、分からせたくなる」
「それなら僕が嫌な気分になることも、だいたい察してくれるでしょう? それとも、僕ではその気になりませんか」
僕が下ばきの上から、盛り上がったシオン自身をなでると、シオンの体がぶるりと震えた。
「ディ、ディル様っ」
シオンはうめく。
「こんな状態でなかったら、襲っていますよ。どれだけ危険なことをしているか、分かっているんですか?」
「シオン、呆れるほど優しい人ですね。治療ですから、気にしないでください。あなたが良いと言わないから、こうして誘ってるんじゃないですか。今更、僕が部屋を出て行って、僕では相手にならないようですなんて、周りに言わせるなんてひどい真似、しませんよね」
女性を大事にする世界だ。例えば妻が夫を誘ったのに、夫が追い払ったりしたら、妻に恥をかかせたと大問題になるのではないか。
予想は当たった。シオンが目に見えて動揺する。
「そ、そんな、あなたを馬鹿にしたわけでは」
「僕の名誉を守ると思って」
「あなたの名誉を……」
毒で高熱が出ている頭では、上手く考えられないのだろう。シオンはどこかうつろな目をしながら、ゆるゆると頷く。
病人の弱みにつけこんでいるみたいだが、やっぱり浮気なんて許せない。
言いくるめたのを良いことに、僕はシオンに再び口づける。やはり迷いと困惑がまじった態度だったが、シオンはキスを返す。最初は恐る恐るとしたものだったが、次第に夢中にはり始めた。
舌をからめ、深く。心地よさに頭がぼーっとなってきたところで、僕はキスをしている場合ではないことを思い出した。
軽く息をしながら、シオンから離れる。
「シオン、あの……失礼しますね」
そういえば、自分からこちらを触ったことがない。
王太子はすぐに突っ込みたがったし、ネルヴィスは僕にがんばらせなかった。
下ばきをずらすと、天をつくように立ち上がった立派なものが現れる。
(大きい)
なんというか、太い。
興奮作用のせいだろうが、それでも一般より大きいはずだ。
つい、王太子のものと比較してしまい、さすがに失礼だと思いなおす。シオンのものはすでに先走りで濡れていた。
「とりあえず、手でやってみますね」
寝屋についての授業で教わった時以来だ。恐る恐る握ると、シオンがうめいた。
「えっ、痛かったですか? ごめんなさい、手でやったことがなくて」
「いえ、大丈夫です」
シオンはそう返すが、ぐっと歯を噛みしめている。
僕は彼の反応を見ながら、ゆっくりと手を動かし始めた。ゆるやかに根本から雁首までを愛撫する。これだけ興奮していたら、少し触られただけで痛いだろうとはらはらしていたが、シオンが目を閉じて感じ入っているのを見て、もう少し力を入れてみた。
「……っ」
すると、シオンは極まったようだった。突然、白濁の液体が飛ぶ。
「……あ」
僕はびっくりして、瞬きをした。
予期していないタイミングだったせいで、僕の顔にどろりとした感触がある。シオンがぎょっとした。
「す、すみませんっ。すぐに拭いてください。危ないので……。宿ならたぶん、そこの引き出しにタオルがあるはず」
毒を出すためなのだから、気を付けないといけないのだと思い出して、僕はタオルを取ると、急いで顔をぬぐう。
「毒のせいですから、気にしないで。それよりもっとがんばりましょうね」
出るのが早かったのが恥ずかしいのかもと思ったのだが、シオンは僕の表情に見とれて、ゴクリと喉を鳴らす。
いったんは勢いをなくしたシオン自身が、再び立ち上がった。
「なんの拷問なんだ、これは」
シオンが苦しそうにつぶやくので、僕はなぐさめる。
「毒のせいですから、そんなに落ち込まないで」
「……そうじゃないんですが、なんでもありません」
シオンはどこかうつろな目をして、深いため息をついた。
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