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陰キャなオレには、スローライフなんてむいてない
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しおりを挟む「すみませんでした」
嘔吐したことで落ち着いたエルフの少年は、今まさに土下座していた。
「……いや、元はといえば、俺が君を踏んだせいだから」
暁の服をげろまみれにした彼は、悲惨な格好の暁を前にして、罪悪感で青ざめている。
「まさか神庭から出てくる人がいるなんて思わなかったんです。僕はここで見張り番をしていまして」
「見張り番って、思い切り寝てたじゃないか」
ひどい人見知りを吹っ飛ばす出会いだったため、暁はぞんざいに返す。げろまみれにされて遠慮するほど、暁はお人好しではない。
「まあ、昼間は平和なんで、サボっていたのは事実です」
「素直なのは良いことだ。くそ、ここから泉まで戻ると、かなりかかるぞ」
一刻も早く、服を洗いたい。
「僕の家に来てください。お風呂を用意して、服も洗濯しますから」
「風呂があるの?」
暁は風呂の単語に食いついて、前のめりに近づく。エルフの少年は、ズザッと後ろに下がった。そういえば肩が軽いと思えば、フォレスも距離をとっている。
「くさいから寄るなよ、アカツキ」
「ちくしょーっ」
暁自身もくさくてかなわないので、フォレスが嫌がるのは当然だ。しかし吐いた本人までのけぞるのは腹が立つ。
少年は気まずげに頬を引きつらせ、誤魔化すかのように、再び土下座した。
「万物の宿る地ガイアをすべられる、十二柱が一柱、森の神フォレス様におめもじつかまつる光栄に、このエジリエストリエンリッターノ、感謝感激にたえません」
「楽にするがよい、耳長よ」
フォレスはほわっとした胸を張り、えらそうに返した。暁は首を振る。
「こんなフクロウに、そんなにへりくだらなくてもいいのに」
「何をおっしゃいますか。神と対面するなど、恐れ多いことですよ。あなたは人間のように見えますが、どちらのやんごとないお方でしょうか」
エジリエストうんたらかんたらな少年は、興味を込めて暁を伺う。
「俺は宵谷暁だよ。アカツキって呼んでくれ。えーと、エジリエストなんちゃら君」
「エジと呼んでください」
助かった。長ったらしくて覚えられそうにない。
フォレスが暁のことを説明する。
「エジよ、この者は私が異世界から召喚した、私の下僕……」
「おい!」
「冗談だ。神庭の番人だよ。この神庭を再生できるのは、非常に不本意だが、この者しかいない」
暁が止めたので言い直したが、フォレスのことだから下僕と思っているに違いない。
「フォレス様にお仕えする大神官様なのですね!」
「別に仕えてねえよ。元の世界に戻るために、協力しているだけだ」
「お会いできて光栄です!」
「なあ、聞いてる?」
感激で顔をキラキラさせているエジの耳は、暁の言葉が右から左へと素通りしているようだ。
「ご無礼して失礼しました。さあ、僕の村へ参りましょう!」
「まあ、風呂に入れるのはありがたいかな」
外出しない日はともかく、外で過ごしたのに風呂に入らないなんてありえない程度には、暁は綺麗好きだ。
エルフが暮らす村を期待して、微妙に距離をとって歩くエジと、エジの肩に乗り移ったフォレスの後についていくことにした。
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