幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する

あおアンドあお

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閑話 三人の先輩達

5話・ミカリの葛藤

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わたしの名前はミカリ。

エクトス学園の二年生で、誰が見ても地味な見た目の女の子で、
特に目立つ事もない存在だ。

ふん、地味で目立たなくても結構ですよ。

みんなは何で人から注目されたいとか、目立ちたいとか思うんだろうか?

わたしにはそれが全く分からないし、理解に苦しむ。

人は目立てば、目立つ程、役目や行動に制限が掛かってくる。

そう...その目立ちが例え良い立場であろうが、悪い立場であろうがだ。

わたしは羨望の眼差しなんて、絶対に食らいたくない。

ましてや、蔑んでくる目線など御免被る。

それにわたしは自分だけのゆっくり寛げる時間が欲しい。

だというのに、知らない人から注目されたり、話しかけられたりして、
その時間を邪魔されてしまうのは、不快極まりない。

そこでわたしは、とあるスキルを必死になって身に付けた。


―――その名は≪認識阻害≫というスキル。


これを身に付けた事により、わたしに話し掛けてくる連中の数が
めっきり減った。

よっしゃ、大成功だぜ。

それからわたしは、優越な自分だけの時間に浸り、楽しい学園生活の
日々を過ごしていた。


――しかし、そんなわたしの時間を邪魔する存在が現れる。


「ねぇ、あなた。いつも本を読んでばっかいるみたいだけどさ、たまには
身体を動かした方がいいよ?」

「―――へ?」

いつもの様にクラスの端っこで本を読んでいると、いきなりわたしに誰かが
話し掛けてきたのだ。

わたしはその事にビックリして、目を大きく見開いて茫然としていると、

「え、ど、どうしたの?そんな鳩が豆鉄砲食らった様な顔をして!?」

わたしに声を掛けてきたその人物が、どうしてそんな表情をしているのと、
ビックリして戸惑っている。

「い、いや...だって、わたし...≪認識阻害≫のスキルを......」

何故わたしがこんなリアクションをとっているのか、

その理由を辿々しい言葉ながらも、わたしに声を掛けてきたその人物に
述べると、

「ああ、それねぇ!実は私、≪気配察知≫のスキルを持っているからよ♪」

「け、気配察知!?で、でも例えそれを持っていたとしても、わたしの
≪認識阻害≫のスキルって、レベル4なんだよ!?」

「うふふ。私の≪察知スキル≫もね、レベル4なのだよ♪」

「な、なんだと......っ!?」

自分で言うのもなんだが、レベル4にまでスキルレベルを上昇させるには
かなり努力と根性が必要不可欠になってくる。

それだというのに、こんなおどけた顔をした人がスキルをレベル4に
上昇させたですって!?

ぐぬぬぅ、く、悔しいぃぃいっ!

わたしがあんなになってまで必死に足掻き、やっと上げたレベル4だって
いうのに、この天才はこんなあっさりした感じで、わたしのその努力を
土足で踏み躙るのかよっ!

そう...わたしに声を掛けてきた、この人物の名は『アンネ』さんといって、
今年入った一年生の中でも、トップ5に入る程の実力の持ち主なのだ。

「......それで、そのエリート様のアンネさんが、地味で平凡なわたしに
一体何のご用意でしょうか?」

わたしは貴重な時間を邪魔されて、かなりご立腹だという口調と表情で
アンネさんをジロリと睨む。

「うぐ、何かトゲのある物言いだね。いやね、別に用事という用事は
特にないんだけどさ、何か御飯も食べずに黙々と本読みに夢中になっている
みたいだったから、御飯はちゃんと食べた方がいいよって、声を掛けたく
なってさ......」

「それはお気遣い、ありがとうございます、アンネさん。だけどご安心
下さい。御飯は本読みの合間合間に摂取はしていますので!」

わたしはそう言うと、食いかけの入ったブロック型の栄養クッキーを
アンネに見せる。

「ええぇぇ!?それがミカリちゃんのお昼御飯なの~!?だ、駄目だよ
ミカリちゃん、そんな食事じゃ!?午後の実習...ダンジョン授業に力が
入らないよっ!?」

「ふん!余計なお世話です!わたしの身体はこれで十分に満足しているん
ですから、放って置いてくれませんかねぇっ!」

わたしの食事を見て、心配そうにしているアンネさんに、わたしはムスッと
した表情で、栄養クッキーを押し込む様に口に頬張りモグモグと食べる。

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