上 下
7 / 79
第二章 新たな出会い

2話・馬車乗り場へ向かう途中、テンプレ発動!

しおりを挟む
エクトス学園への転校準備を全て終えた俺は、幼馴染の二人に別れの
手紙をポストに入れた後、王都に向かう馬車に乗るべく、馬車乗り場へと
急ぎ駆けていた。


―――それから更に幾数十分。


「ふう...あの路地を左に曲がった場所にある商店街を北に抜けると、
その先に馬車乗り場があるんだったよな?」

俺は馬車乗り場に向かう為、目の前に見える路地を左へと曲がった瞬間、

「あ、あの...もういい加減、その手を離してもらえませんか!」

少し離れた建物の壁際で、誰かと誰かが言い争っている場面シーンが、俺の
目線に入ってきた。

「そっちのあなたもです!そこを退いて下さい!わたし急いで行かなきゃ
いけない所があるんですよっ!」

「ぐへへ...いいじゃん、いいじゃん、ちょっとだけだからよ~ヒック!」

「そうそう、ヒック!少しだけあの酒場に寄って、その後にあそこに見える
建物の中でちょいとひと休みするだけだからよ~♪......ヒック!」

俺は足をもう少しだけ進め、言い争っている連中のいる場所に近づいて
みると、そこでは顔を...いや、身体全体を真っ赤にしてベロンベロンに
酔っぱらっている、厳ついおっさん二人が嫌がっている女の子を囲う様に
ナンパしていた。

「おいおい、マジかよ。こんな朝っぱらからナンパかよ......」

やれやれ参ったなぁ。

さて、どうしようか?

あの道を通らないと馬車乗り場にはいけないし、ナンパが終わるまで待つ
時間もないし......

「よし...しょうがない。ここはあいつらに気づかない様にして、ゆっくりと
後ろを通過して行くか......」


え?女の子は助けないのかって?

助けない、助けない。

ハッキリ言って、ああいう酔っぱらいと関わっても良い事なんぞ、
ひとつもないもん。

それに見てみなよ、あの酔っぱらい達をさ。

厳つい顔に筋肉隆々なんだぞ。

それに加え、ベロンベロンに酔っているんだ。

あんなのとマトモにやり合えば、面倒くさい事になるのは想像しなくても
目に見えてくる。

会って間もない女の子の為にそんな面倒ごとに首を突っ込む程、
俺は正義さんでも聖人君子でもないのだ。

大体あれに関わったら、馬車の時間に確実に間に合わないだろうしな。

まぁこの周辺が治安の悪い場所だったら、助けに入るのも吝かではないかも
しれない。

がしかし、

このエリアはランベール学園が近くにあるからか、治安がかなり良い。

それに商店街もすぐ側だ。

なので、あの酔っぱらいどもには誰かがその内気づいて、直に引っ捉えて
くれるはず。

......ってなわけで、済まないな。名も知らないお嬢さんよ。

今日中に王都へと着く為には、朝出発の馬車に乗り遅れる訳にはいかんのだよ!

俺は酔っぱらいどもに絡まれている少女に軽く詫びると、ゆっくりな速度で
酔っぱらい二人の背後にソッと忍ぶ様に入り、そして少女の目線の死角に入る
上手い角度で音を立てずに少しずつ移動して行く。

そろ~り、そろ~り、そろ~り......

よ、よし!後もう少しで通過で―――

「だ~か~ら!嫌だって、何度も言っているじゃないかぁぁぁあっ!」

「―――へ!?」

叫声が聞こえた瞬間、酔っぱらいのひとりが俺に向かって物凄い勢いで
ぶっ飛んで来た。

「ち、ちょ!?タン――――まぎゃはっ!?」

いきなりぶっ飛んで来る酔っぱらいどもの体当たりを避ける間もなくマトモに
食らった俺は、その反動で思いっきりぶっ飛んでしまい、地面を派手にゴロゴロと
転がって行く。

「お、おのれぉお......」

「こ、このクソアマがぁあ......」

少女にぶっ飛され、これでもかと地面に顔を強打した酔っぱらい達が、強打した
箇所を擦りながらゆっくり起き上がる。

そして、

「よ、よくもやりやがったなぁあああっ!」

「絶対に......許さんぞぉぉぉおッ!」


ナンパを拒否された上、こんな目に合わされた少女に対し相当頭にきたのか、
ナイフを懐から取り出して手に持つと、それを大きく振り上げ襲いかかって行く。

...だが、

「おい、おい。流石にそれはやめとけよ、おっさん!いくらなんでもその行為は
ナンパの領域を完全に越えた行為だと思うぞ?」

「な、何だ!貴様は!?俺の邪魔をするんじゃ――――うぎゃあぁあ!」

俺は転がりから素早く復帰すると、酔っぱらいの振り上げたナイフを持つ腕を
ガッと力強く掴み、そしてグイッと回し、捻り上げる。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者がパーティーを追放されたので、冒険者の街で「助っ人冒険者」を始めたら……勇者だった頃よりも大忙しなのですが!?

シトラス=ライス
ファンタジー
 漆黒の勇者ノワールは、突然やってきた国の皇子ブランシュに力の証である聖剣を奪われ、追放を宣言される。 かなり不真面目なメンバーたちも、真面目なノワールが気に入らず、彼の追放に加担していたらしい。 結果ノワールは勇者にも関わらずパーティーを追い出されてしまう。 途方に暮れてたノワールは、放浪の最中にたまたまヨトンヘイム冒険者ギルドの受付嬢の「リゼ」を救出する。 すると彼女から……「とっても強いそこのあなた! 助っ人冒険者になりませんか!?」  特にやることも見つからなかったノワールは、名前を「ノルン」と変え、その誘いを受け、公僕の戦士である「助っ人冒険者」となった。  さすがは元勇者というべきか。 助っ人にも関わらず主役級の大活躍をしたり、久々に食事やお酒を楽しんだり、新人の冒険者の面倒を見たりなどなど…………あれ? 勇者だったころよりも、充実してないか?  一方その頃、勇者になりかわったブランシュは能力の代償と、その強大な力に振り回されているのだった…… *本作は以前連載をしておりました「勇者がパーティーをクビになったので、山に囲まれた田舎でスローライフを始めたら(かつて助けた村娘と共に)、最初は地元民となんやかんやとあったけど……今は、勇者だった頃よりもはるかに幸せなのですが?」のリブート作品になります。

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

ああああ
恋愛
クラスメイトに死ねコールをされたので飛び降りた

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

恋人を寝取られ死刑を言い渡された騎士、魔女の温情により命を救われ復讐よりも成り上がって見返してやろう

灰色の鼠
ファンタジー
騎士として清くあろうとし国民の安寧を守り続けようとした主人公カリヤは、王都に侵入した魔獣に襲われそうになった少女を救うべく単独で撃破する。 あれ以来、少女エドナとは恋仲となるのだが「聖騎士」の称号を得るための試験を間近にカリヤの所属する騎士団内で潰し合いが発生。 カリヤは同期である上流貴族の子息アベルから平民出身だという理由で様々な嫌がらせを受けていたが、自身も聖騎士になるべく日々の努力を怠らないようにしていた。 そんなある日、アベルに呼び出された先でカリヤは絶望する。 恋人であるエドナがアベルに寝取られており、エドナが公爵家令嬢であることも明かされる。 それだけに留まらずカリヤは令嬢エドナに強姦をしたという濡れ衣を着せられ国王から処刑を言い渡されてしまう———

最強美少女達に愛されている無能サポーター 〜周りの人から馬鹿にされ続けてもう嫌なのパーティメンバーの天才たちが離してくれない〜

妄想屋さん
ファンタジー
 最強の美少女パーティメンバーに囲まれた無能、アルフ。  彼は周囲の人の陰口に心を病み、パーティメンバー達に、 「このパーティを抜けたい」  と、申し出る。  しかし、アルフを溺愛し、心の拠り所にしていた彼女達はその申し出を聞いて泣き崩れていまう。  なんとかアルフと一緒にいたい少女達と、どうしてもパーティを抜けたい主人公の話。

処理中です...