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六章 おっさん、初めてのクエスト
第百十九話・苦労したんだね...
しおりを挟む「なぁ、レンヤ!俺の言っている事は正しいよなっ!なぁぁあっ!!」
未だ興奮の冷めやまぬギルマスが、レンヤの左右の肩を叩く様に両手で
ガバッと掴むと、先程熱く語った熱論の同意を顔を近づけ求めてくる。
ギヤアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!
あ、暑苦しいいいいぃぃいぃいいぃいぃいぃいいっ!!!
...と、俺は声にならない絶叫を心の中で思いっきり荒らげ、
「わ、分かったっ!お前の気持ちは良~く分かったからっ!正直、
早口過ぎて何を言っていたのか、全然聞き取れなかったが......け、けど、
多分、お前は正しい事を言っていたとは思う!だ、だから少し落ち着け!
そして取り敢えず離れろやぁぁぁあっ!!」
この鬱陶しくもグイグイと接近してくるギルマスに、俺は嫌味を含んだ
ニガ笑いを最大限にこぼしながら、こいつの熱論に当たり障りのない
言葉を口にして何度かの頷きを見せた後、ギルマスの両手を左右の肩から
ググッと無理矢理に引き剥がし、そして逃げる様に後退りしてギルマスから
距離を取った。
ゼェ...ゼェ...ゼェ...
ホ、ホント、マジでやめろや。ハゲマッチョのドアップは寿命と身体に
悪過ぎるわ!
しかしこいつのこの態度を見るに、相当なストレスが貯まって
いやがるな―――
「―――ハッ!?」
だ、だからかっ!?
だから、そんな寂しい頭になってしまったのか、ギルマスッ!?
ううぅ...お可哀想に......。
俺はキラキラと虚しく光るギルマスの頭をチラッと見て、そんなになるまで
苦労したんだ...本当に大変だったねと、ギルマスに同情の念を抱(いだ)く。
「でもレンヤの言った通り、家族や恋人からの訴えはやっぱりあるんだ?」
「ははは...そうですねぇ。何せ殆どの家族や恋人さんはルールなんて
知りませんので。ですが、ご安心下さい!そんな訴えは一切通る事は
ございませんから!あ。当然、貴族様からによる理不尽な訴えも同様に
通る事はございませんので、そこも安心して下さいね!」
ルコールの問いに対し、サオリナさんが苦笑を洩らしながら、補足情報を
加えてつつ、答えを返してくる。
「......貴族」
聞いてもいない貴族の事を付け加えてくるって事は、あいつらギルドにも
ちょっかいをかけてくるのか。
「ホント録でもないな、あの連中は......っ!」
クソッ!あの城での出来事が、また頭によみがえってきやがったっ!
あの城にいたお偉いさんどもが、ニヤニヤと馬鹿にした顔で俺の事を
卑下したり、見下してきたのを、ふと思い出してしまう。
ったく...どいつもこいつも勇者がおっさんだからといって、馬鹿に
しやがってさぁっ!
俺だって、俺だってなっ!
好き好んでこの世界に来たんじゃないんだぞっ!!
俺はあの時の怒りも再燃してきてしまい、あいつらに対しての愚痴と
不満をブツブツとこぼしていたその瞬間、
―――バンッ!!
突如俺の背中方面の奥...ギルドの出入りの方角から、扉を開ける大きな
音がギルドの中に響く。
俺はその音にビクッとなって驚き、音が聞こえた方角に顔を振り向けると、
「あ、あんたがゴザイさん達...いや、ゴザイの野郎どもを掴まえたって
いう冒険者だよな!だったらさ、お願いだぁぁっ!ランカさんを助けて
やってくれよっ!お願いだからぁぁぁあっ!!」
「わ、わたしからもお願いします、おじさまぁぁぁあっ!!」
そこには少し幼さが残る面立ちをした冒険者らしき少年と少女の二人がいて、
切羽詰まったような表情で嘆願を吐きながら、俺の元へ走って近づいてくる。
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