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六章 おっさん、初めてのクエスト

第百四話・元気なババア

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「......まぁいい」

それより、よくよく考えてみたら、その簡易型魔物図鑑とやらに
ルコールが登録されなくて正解だったかもしれんな。

だってこんなチートドラゴンが登録でもされようものなら、
絶対大騒ぎになる可能性が高い。

もしそうなってしまった場合、

どんな奴だったとか、

どこで出現したとか、

ギルドから根掘り葉掘りと問われるのは必至だろう。

そんな面倒くさいことに巻き込まれるなんぞ、死んでもゴメンだ。

俺はもしもの未来を想像し、その未来に対して思いっきり嫌厭した
表情をこぼしていると、

「...あ、あの?レ、レンヤ様、何やらお困りというか、ご不満そうな
顔をしていらっしゃいますが?も、もしかして私の今のご説明で
何かお分かりになられない箇所がございましたでしょうか?も、もし
おありでしたら、もう一度改めて最初からご説明いたしますが?」

厭う表情で何かを思考しているレンヤに気付いたミュミュが、
先程伝えた自分の説明に何か不備でもあったのかと焦りを見せると、
申し訳ありませんという表情をこぼしながら、レンヤに再度クエストの
説明をやり直すかどうかを聞いてくる。

「......あ、ゴメン、ゴメン。別にミュミュの説明がどうのこうので、
こんな顔をしていた訳じゃないんだよ。ただちょっと気になった事が
あって、それを考えていただけなんだ。だからミュミュがそんな畏まって
謝る必要なんてないんだよ」

恐る恐ると聞いてくるミュミュに、俺は苦笑いをこぼしつつ、何故こんな
表情をしていたのか、その訳を口にする。

「そ、そうなんですか?それでしたら良かったです!私って、こういった
説明があんまり得意ではないものでして、ちゃんと伝えきれていなかった
のではと思い、ついつい焦ってしまいました!」

レンヤの説明を聞き、自分が勘違いしている事に気付いたミュミュは、
少し恥ずかしさを見せつつ、安堵でホッと胸を撫で下ろす。

「ふう...ミュミュの誤解もどうやら無事解けたみたいだし、それじゃ
ルコール。そろそろクエストに行こうか!」

俺はミュミュの安堵を確認した後、横にいるルコールに顔を向けて
そう声を掛ける。

「おお!やっとクエストタイムかぁ!ったく...せっかく朝から意気揚々と
クエストをやりに来たっていうのに、こんな下らない事にいつまでも
時間を割きおってぇ!もう待ちくたびれたっていうのっ!うっしゃあっ!
そうと決まれば、善は急げだぜぃっ!うぉぉぉぉぉ―――っ!!」

ルコールが軽く愚痴をこぼした後、拳を天に突き上げ高々と気合いを
入れ直すと、ギルドの出入りに早足で勢いよく駆けて行った。

「......やれやれ。相変わらず元気なババアだよな、あいつ」

若い連中のように元気いっぱいのテンションでギルドから出て行った、
数百歳のババアに対し、俺は目を細めた呆れ顔で軽く嘆息を吐き、
そして肩を竦める。

「コホン...それじゃミュミュ。俺らも頑張って成果を上げてくるから、
そっちも受付の仕事をしっかりと頑張れよ!」

俺はミュミュに軽いエールを送ると、ギルドから駆け足で颯爽と出て行った
元気なババア...ルコールの後を急ぎ追いかけるべく、ギルドの出入りに
身体をクルッと振り向けようとしたその時、

「あ、あの!ま、待って下さい、レンヤ様っ!」

突如ミュミュが、ギルド内に響き渡る様な大きな声で俺の事を呼び止めてきた。

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