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六章 おっさん、初めてのクエスト
第百一話・受付嬢、謝罪する
しおりを挟む――厳つい顔をした男達を退治してから数十分後。
俺とルコールは冒険者ギルドに辿り着き中に入ると、先程ちょっかいを
かけてきた厳つい顔をした二人を受付テーブル前にポイと投げ捨てる。
それを見て慌てる様に近寄って来た男性スタッフ達に、どうしてこいつらが
こうなっているのか、その理由を大方話し終えた後、厳つい顔の男達は
奥の部屋に連行されていった。
それからしばらく経った後、
受付嬢達のいるテーブルの奥の方に見えるドアの一つが、大きな音を
立ててバンッと開くと、ショートボブカットの女性が、顔の表情を
真っ青に変えて、こちらに駆ける様して近づいてきた。
そして俺達の前まで来ると、
「わ、わたしの担当する冒険者達が大変に失礼な事を!ほ、本当に...
本当に申し訳ございませんでしたぁぁぁああっ!!」
ショートボブカットの受付嬢が乱れた息も整えず、俺とルコールに対し、
土下座をする勢いで頭を深々と下げて謝罪してきた。
それを見た俺は少し慌てて、
「べ、別にいいですよ!あ、あなたがそこまで謝らなくてもっ!悪いのは
そいつらであって、あなたではないんですからっ!」
ショートボブカットの受付嬢を落ち着かせる為、自分がそこまで怒って
ない旨を優しい言葉口調で伝えていく。
「そう言ってもらえると大変助かるのですが、担当者としてはそうも
いかないんです!で、ですので、こ、これは担当者であるわたしからの
お詫び金です......ど、どうか懐にお納め下さいませっ!」
ショートボブカットの受付嬢が、懐から取り出した硬貨の入った皮袋を
俺の手前近くのテーブル上へとポンと静かに置いた。
「へぇ。これ、全部金貨じゃないの?しかも結構入っているじゃん?」
ルコールがテーブルに置かれた皮袋を手に取って中身を確認すると、
中には金貨数十枚入っていた。
「――はう!き、金貨!?それもこんなに!?ホ、ホントいいんですよ、
こんな事しなくても!あ、えっと...すいません、よろしければあなたの
お名前をその...聞いてもよろしいでしょうか?」
「あ、は、はい。勿論です!わ、わたしは『サオリナ・ハイローダ』と
申します!こ、このリタイ町の冒険ギルドにて、受付嬢をやって
おります!ど、うか、これからお見知りおき下さいませ!」
ショートボブカットの受付嬢...サオリナが最初に名前を名乗って
いなかった事に気づき、めちゃくちゃ慌てて出しながら、急ぎ自分の
自己紹介をレンヤにする。
「サオリナさんですね。俺は『レンヤ・シロカワ』と申します。そして、
こっちの子が......」
「あたしは『ルコール・ア・ジョッキン』だよ。よろしくね、ロザリナ♪」
「サオリナだ!サ・オ・リ・ナ・さんっ!」
「冗談だよ、冗談。んじゃ、改めてよろしくね、サオリナ♪」
サオリナさんの自己紹介に続き、俺とルコールも自己紹介をそれぞれ返す。
「レンヤ様にルコール様ですね!こちらこそ、よろしくお願いします!」
レンヤとルコールの自己紹介に、サオリナが再び頭を深々と下げてくる。
「自己紹介を済んだ事だし、ではサオリナ。このお金はありがたく
頂いておくねぇ♪」
ルコールがそう言うと、ご機嫌な顔をしながらテーブル上のお金の
入った皮袋をパッと手に取る。
「こ、こら、ルコール!勝手に懐に入れようとするんじゃない!」
それを見た俺は慌ててルコールの手を掴み、それを阻止しようとするが、
「まあまあ、そう言わずに貰っておいてよ、レンヤさん。それを貰って
くれないとさ、サオリナの受付嬢ランクポイントが下っちゃうのよ♪」
サオリナさんの横で受付をしていた、ナイスバディな受付嬢こと...
ランカさんが俺の手を取り、そして「察してよ、ね♪」と言わん笑顔で
金貨の入った皮袋を俺の胸前にちょんと突き返す。
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