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五章 おっさんとテンプレ
第八十一話・おっさん、からかわれる
しおりを挟む「ぐぬぬ...わ、悪かったですねぇっ!どうせわたしはボン!キュ!ボン!
じゃなく、ストンッですよ、スットンッ!!」
レンヤの皮肉に、宿屋の元気な娘さんが悔しそうな顔をして自分の腰に
手をソッと当てると、そのあまりのくびれの無さに、頭をガクッと
大きく垂れてしまう。
「全く...手痛い因果応報を食らってしまいました......コ、コホンッ!
では気を取り直して...わたしの自己紹介しますねぇ♪わたしはこの宿の
娘で、名前をプレシアといいます。以後、お見知りおき下さいねぇ♪」
咳払いをして気持ちを切り替えた宿屋の元気な娘さんこと、プレシアが
元気良く俺に自己紹介をしてきた。
「へぇ、プレシアっていうんだ。元気いっぱいなキミらしくて、とても
いい名前だね♪」
「はにゃ!?」
レンヤはニコッと笑顔をプレシアに向け、そう返す。
もうこのおじ様、さっきはあんな意地が悪かった癖に、今度はこんなにも
爽やかな笑顔でそんな事を言うだなんて......
――ハッ!?
おっと!いかん、いかん!?
わ、わたしったら、こんなおじ様に何をトキメキ感じちゃてるんですか!?
プレシアがハッと我に返ると、赤く染まった頬を両手でパンパン叩き、
熱を取る様に、首を左右にブルブルと大きく振る。
そして、
「うふふ♪あれれ、お客様?先程はあんな事を言っていらっしゃったのに、
そんな言葉を吐いちゃうなんて。やはりわたしの事をお口説きになられたい
ようですねぇ~♪」
先程の気持ちを誤魔化す為、プレシアが強引に笑顔を作ると、ニヤニヤ表情で
レンヤに顔の数センチ前まで近づいていき、再びからかってくる。
「だ、だからぁ~!なんでそうなるんだよっ!俺は思った事をただ率直に
述べただけであって、べ、別に他意なんてないぞ!」
あ!おじ様ったら、今ちょっとだけ目線を横に向けて照れを見せま
したよねっ!?
くふふ~ニヤリ、
「またまた~♪本当の事をおっしゃってもよろしいんですよ、お客様~♪」
レンヤが照れてくれたのがよほど嬉しかったのか、プレシアは更に
からかいを続けていく。
「ううぅ...わ、若い娘の気まぐれ行動には、もうおっさんは着いていけんっ!
おい、ルコール!この子を何とかしてく.........て、あ、あれ!?いないっ!?」
プレシアからのからかいに、これ以上付き合いきれんと隣にいるルコールに
バトンタッチしようと目線を向けるが、そこにはルコールの姿がなく、
周りを見渡してもその姿を見つける事ができなかった。
「おや、おじ様?あのサイドテールの子をお探しですか?あの子でしたら、
少しほど前に食堂の方へ入っていきましたよ?」
「な、なんですとぉぉぉおっ!?」
あ、あの野郎!?
この状況を面倒だと思い、この場からちゃっちゃと逃げやがったなっ!?
「そ、そっか、先に行ったのか?それじゃ、ルコールの奴を待たせる訳にも
いかないし...お、俺もこの辺で失礼させ――――」
「おっと!逃がしませんぜ、おじ様♪」
この場を逃げる口実を口にした後、俺はルコールを追う為に食堂のある方角へ
身体を向けた瞬間、プレシアが待ったをかけて俺の背中にぴょんと飛び移り、
羽交い締めにする様に、俺の背中にギュッと強く抱き付いてくる。
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