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四章 リタイの町
第五十八話・受付嬢ランクを上げる為
しおりを挟む「と、所で、レンヤ様。少しつかぬことをお聞きしたいのですが、
そちらのルコール様が、この素材を「あたしの分身たち!」...とか
仰っていたのはどういった意味だったのでしょうか?」
「――っ!?」
ヤバ!?お、俺達の会話が聞こえてたっ!?
「え、えっと...それは......」
俺はどう言い訳をしようか、ニガ笑いをこぼしつつ戸惑っていると、
「......はっ!?ス、スイマセン、レンヤ様!冒険者の深い内情には
詮索をしない。それが受付嬢のルールでしたのに、つい好奇心で干渉を
してしまいました!本当に申し訳ありませんでしたっ!」
ミュミュがハッと我に返り、冒険者への深入りは禁物というルールを
思い出すと、慌てて頭を深々と下げてその行為に対しての謝罪を口にする。
「......コホン!そ、それで、レンヤ様。この竜の素材をオークションに
出品いたしますか?日数は少々かかりますけど、ここでお売りするよりも、
数段上の値段で売れると思われますけど?」
そして空気感を変えるべく、ミュミュが軽く咳払いをして真面目な表情へ
切り替えると、改めてオークションをするかしないか、それをレンヤに
聞いている。
「そっか。オークションだと、数倍も売値が違うんだ......」
う~んだったら、しないという選択はないかな?
「それに......」
レンヤはギルドカードをチラッと見ると、
「うん。それじゃ、ミュミュ。オークションの件、お願いしてもいいかな?
そうした方がミュミュの受付嬢ランクもあがるだろうしさ♪」
「わ、私のランク!?あわわ、レ、レンヤ様、ありがとうございますっ!」
レンヤの厚意に気付いたミュミュが、瞳をパァッと輝かせながら何度も
頭をペコペコと下げて感謝をしてくる。
「はは、いいって♪だって、ミュミュは俺の担当受付嬢だしね♪それより、
ミュミュ。さっきのアイテムの査定を早く頼むよ。その資金がないと
宿に泊まれなくなって、野宿を決めなきゃいけなくなるからさ♪」
「あ、そうでしたね!あまりにも衝撃な事があり過ぎたので、スッカリ
忘れていました!で、では早速、査定をしてきますね!」
レンヤに頭をペコともう一度深々と下げると、ミュミュが急ぎ奥の部屋に
入っていく。
ふう、ミュミュって大人しそうなのに、テンション中々高いよな。
まぁ、俺も人の事は言えないくらい、テンション高めだけど。
「おっと、そう言えばルコール。お前、自分のサポートをしてくれる
担当受付嬢の所には行かなくていいのか?」
「う~ん、行きたいのは山々だけどさ、多分その子もう死んでると思う。
だってこのギルドに来たのって、実に三桁年ぶりだしねぇ!」
「あ、ああ。そう言えば、お前って、うん百歳過ぎのババアだったっけ?」
「......レンヤ。もう一度それを言ったら、こうだって言ったよ......ねっ!!」
「ハッ!し、しま――っ!?」
レンヤが失言に気付くが時既に遅く、ルコールが表情にニコッとした微笑みを
浮かべながら、右手を静かにスッと前に突き出してくる。
「ま、まま、待って、ルコールさん!じ、冗談だからぁぁあっ!ちょっとした、
軽い冗談だか――――いだぁあ!?あいだだだあぁぁぁああぁぁあっ!!?」
それを見て、レンヤが慌て口調で言い訳をするが、ルコールは全く聞く耳を
持たず、そのままレンヤの顔面を思い切りガシッと右手で掴むと、ゆっくり、
ゆっくり締め上げていく。
―――顔を締め上げられる事、数分後。
「......ったくっ!あたしはプリチーな可愛い女の子って言っているっしょ!
何度も言わせないのっ!」
「いててて...か、可愛い女の子はな、こんな顔中がアザだらけになる様な
クロー攻撃なんて、やら―――」
「ん~?レンヤ、今なにか言った~?あ~もしかしてもう一回、あたしの
クロー攻撃を味わいたいって言ったのかな~~♪」
「はひぃぃぃいい!ち、ち、違いますっ!ルコールは何てプリチーで、
可愛い娘さんなんだろうと言ったんでぇぇぇえすっ!!」
ニコニコしているのに、瞳の奥が全く笑っていないルコールを見た俺は、
慌て様で垂直にビシッと立ち上がり、そしてあたふたしながら誤魔化しと
言い訳を口にしていく。
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