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四章 リタイの町
第五十三話・ルコールおばば様
しおりを挟む「ねぇ、受付嬢さん。ギルドカードのここに『受付孃ミュミュ』って
書いてあるんだけど、これってもしかしてキミの名前かな?」
俺はギルドカードの右下に『受付孃ミュミュ』と書かれているのを
発見し、それがこの受付孃の名前なのかと訊ねてみた。
「は、はい!わたしがそのミュミュで間違いありません!」
いきなり名前を呼ばれてビックリしてしまったのか、受付孃のミュミュが
目を丸くしながら、レンヤの問いに返事を返す。
「それじゃ、今からキミの事はミュミュさんって呼ぶけどそれでいいかな?
それとも、さっきまでの受付孃さんって呼び方の方がいい?」
「あ!ミュミュの方で是非お願いします!」
レンヤの述べる選択に対し、ミュミュが迷いを見せず、速攻で答える。
「後それからもうひとつお願いしてもいいですか?わたしはレンヤ様より
年下なのに、さん付けで呼ばれると、何か照れてしまいます。ですので、
これからはわたしの名前は、呼び捨てで呼んでもらえないでしょうか?」
「い、いやしかし...は、初対面の人をいきなり呼び捨ては呼ぶのは...」
「お願いします!あと、敬語もしなくていいですからっ!」
「――はうっ!?」
ミュミュがレンヤの両手をギュッと力強く握り、相手にもの言わせぬ口調で
熱望してくる。
うう...先程のネガティブモードと違って、めっちゃくちゃ攻めてくるな、
ミュミュさん。
「うう...わ、わかりました!わかりましたよ、ミュミュさ...いや、
わかったよ、ミュミュ。これで...いいか?」
「はい♪」
タメ口で話す事にやや抵抗があったレンヤだったが、意を決してタメ口で
話すと、ミュミュが屈託のない笑顔を浮かべて喜んでいる。
「そっか、そっか。初対面の人をいきなり呼び捨てでは呼べないかぁ♪
あれ?でもあたしの時はレンヤってば、躊躇なく呼び捨てで呼んで気が
するんだけど、違ったっけか♪」
ルコールがワザとらしいニヤニヤした表情で俺に意地悪を言ってくる。
「なんだ、ルコール?そんなに敬語で呼んでほしかったのか?だったら、
お前の事を今からルコールおばば様って呼ぼうか?」
そんなルコールの意地悪に対し、俺は仕返しと言わんばかりの皮肉を
タップリ込めた返事を返す。
「うふふ、レンヤ。もしそんな呼び名をしたら...これだからね♪」
そんなレンヤに、ルコールがニコッと微笑みを見せると、広げた手のひらを
静かに前へスッと突き出し、その広げた手のひらをグッと強く握り締める!
ああ...そのジェスチャー、もし言ったら俺の頭をこんな風に握り潰すぞって、
意思表明か......
俺はそれを理解すると、ルコールに向かってビシッと見事な敬礼をして、
「決してその様な発言は絶対にいたしません!」と言わんばかりに完璧な
了解ポーズを取った。
「.....たっく。そんな事より、ギルドカードの最後の登録をさっさと
済ませなさいな!」
「最後の登録?」
「ギルドに来る前に血の契約の事を説明したでしょう?。あんたの
血をそのギルドカードに一滴垂らす事で、そのギルドカードの登録は
初めて完了するのよ!だからほら、この針でブスッといきなさいっ!」
ルコールがそう言うと、針をレンヤに手渡す。
「こ、これで指先を指すのか......何かちょっと怖いな......」
指先を傷付ける事に対して、俺が躊躇していると、
「ハァ...いい年したおっさんが何を言っているかなぁ。あんたが
出来ないっていうんなら、代わりにあたしがやってあげるよ!うりゃっ!」
「―――はぎゃ!?」
ルコールがやれやれと嘆息を吐いた後、自分の爪を鋭く尖らせて
レンヤの指先をパシッと斬った。
爪で斬った切り傷から血がポトンとギルドカードに落ちて当たった瞬間、
ギルドカードがピカッと光輝く。
「よし、これでギルドカードの登録完了だねぇ♪ほれ、レンヤ♪」
数秒後に光が収まったギルドカードをルコールが手に取ると、
それをレンヤに手渡した。
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