おっさん、勇者召喚されるがつま弾き...だから、のんびりと冒険する事にした

あおアンドあお

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四章 リタイの町

第五十二話・おっさん、歳劣った事を嘆く

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「それにさ、冒険者ってやつは危険と隣り合わせの職業だって聞く。
だからキミの噂の真相なんて、所詮そんな偶然が重りあったうえの
不幸が生んだ副産物に過ぎないと、俺は思うんだよ......」

......多分ね。

うん、多分であって下さい!

お願いしますよ、神様ぁぁぁあっ!

俺は心の中で、そうであれと嘆願するように必死に祈る。

「あ、ありがとうございます、レンヤ様!その言葉、とても痛み入り
ますっ!」

レンヤに頭を撫でられている受付嬢が、頬を赤く染めて心からの感謝を
口にする。

「コホンッ!所で、レンヤさんよ。いつまでその女性の頭をナデナデ
しているおつもりなのかな?」


「「はう!?」」


突如、レンヤと受付嬢の近くに現れたルコールが、咳払いと共にジト目を
して受付孃の頭をナデているレンヤを軽く窘めると、慌ててレンヤと
受付孃がパッと距離を取って離れていく。

「ス、スイマセン。女性の頭を軽々しく撫でてしまいまして!そ、その、
つい親類の子を落ち着かせる時の癖が出てしまいました...あはは」

「い、良いんですよ、レンヤ様!...む、寧ろ、もっとナデて欲しかった
くらいですし......えへへ」

俺の言い訳に対し、顔を真っ赤にしている受付孃が、モジモジしながら
か細い小さな声で何かを呟いている。

「......え?あ、あの受付嬢さん。今の言葉...特に最後の方がうまく聞き
取れませんでしたので、もう一度言ってもらっても良いでしょうか?」

「へ!?き、聞こえていないなら、別にいいんですよ。大した事なんて
言っていませんから、だから気にしないで下さいっ!」

受付孃の述べた言葉を聞き取れなかった俺は、申し訳ない表情をしながら
もう一度言ってもらえないかと頼むが、何故か受付孃がテンパった表情に
なって、俺の頼みをやんわりと断ってくる。

「そ、そうなんですか?そうおっしゃるのでしたら、これ以上深くは
お聞きしませんが......」

う~ん、でもあの慌てよう、何かめっちゃ気になるなぁ。


―――ハッ!?


ひ、ひょっとして、「このセクハラ野郎め!」とか言われたんじゃ!?

もしそうだったら、軽く死にそうだな。

.....よし、

これ以上の追及はやめておこう。

そんな事を言われたと知った時の絶望感が、恐ろしかった俺は、
この話をここでやめにした。

「コ、コホン!そ、それよりも、レンヤ様!これがレンヤ様の
ギルドカードです!ど、どうぞお受け取り下さいっ!」

変な空気になっている場の空気感を、受付孃が咳払いで振り払うと、
手に持ってきたギルドカードをレンヤに手渡した。

「おお!これが冒険者の証明、ギルドカードかぁ~!」

俺は手に受け取ったギルドカードを見て、感動のあまり、裏から表、
端と端と、隅々まで手渡されたギルドカードを見回す。

表には俺の名前と職業。

そしてその横に、今の冒険者ランクが書いてあるな。

因みに職業は『無し』と記入した。

流石に『勇者』とは書けないしな。

「おや?レンヤったら、真面目に本名を書いたんだ?あたしは
てっきり、痛々しく尖った冒険者名をつけるものだと思ってたよ?」

俺のギルドカードを覗き見してきたルコールが、俺が偽名ではなく
本名を書いている事に対し、失礼な言葉を吐きながら驚いている。

「......痛々しいって。ったく、失敬なやつだな!まぁ確かにお前の
言う様、最初は俺も偽名の方がいかにも冒険者ぽくっていいかなって、
思いはあったんだけどさ......」

でもそれやると、名前を呼ばれた時に頭の思考が、その名前を自分だと
認識しない可能性が大きい。

いや、確実に気づかないでスルーすると思う。

だって、おっさんだからねっ!

......ハァ。

ホント歳を取るって、悲しいなぁ......。

歳のせいでそういう事が起きうるだろうと安易に想像できる事に、
俺は思わず深い溜め息を吐いてしまうのだった。

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