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三章 おっさん勇者の初めての人命救助

第三十三話・おっさん、最上級の面倒事に巻き込まれる

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「な、なんだと...」

こ、皇后様!?皇女様!?

「そ、それじゃ、このお二人...もしかしなくても王族って事ですかっ!?」

俺は目を見開いて二人のいる方へ恐る恐る振り向くと、その目線には
ニコリと微笑みを見せるキサリ皇后様の姿が映った。

「や......」

やべええぇぇぇぇぇえ―――――――っ!!

立派な紋章だから、ひょっとして高貴なお家柄なんじゃとは思っては
いたけど、まさか王族だったとはっ!?

あの忌々しい城のせいで、もう二度と王族とは関わらないぞと心の中で
密かに誓ったばかりだっていうのに、

その決意の根も乾かず、再び王族と関わってしまうとはぁぁぁああっ!!

そりゃ~チューの為には、多少の面倒はしょうがないとは思ったよ!

思ったけれどもさ、

いざその面倒事の蓋を開いてみれば、それが王族ですとぉぉぉおおっ!?


多少どころか、最上級の面倒事に巻き込れてしまったぁぁぁぁあ―――っ!!


俺が心の中でそう叫声を上げながら、頭を抱えて悶えていると、

「おい、貴様!それ以上動くんじゃないぞ。もし動いたら、問答無用で
ブスッといくからなぁっ!」

悶えている俺の後頭部に、後ろに立っている人物が先端の尖った物をツンツンと
突きつけてながらそう述べ、注意を促してくる。

「ちょっと待ちなさい、マッシュ将軍!その御方は違うん......」

「良いのです、キサリ皇后様!こんな盗賊風情にお情けをかけなくとも!」

「だ、だから、違うんです!その御......」

「この下賎な盗賊風情が!いつまでその汚らわしい身をキサリ皇后様達に
近づけるかっ!」

「うべぇっ!?」

キサリの言葉をまるで聞かないマッシュと呼ばれた初老の将軍が、キサリ達の
乗っている馬車から、レンヤの首根っこを掴んで外へ引きずり出すと、
そのまま地面へと放り投げた。

「おい、ジェント!こいつを連れて行き、手枷をはめておけっ!」

「はっ!了解です!マッシュ将軍っ!」

そして馬車の外で待機していた部下のひとり...ジェントがビシッと敬礼をし、
マッシュ将軍の命令に従う。

「いつまでも転んでないで、さっさと立ってこっちへ来い!」

「はぐんっ!?」

地面に転がっているレンヤをジェントが足蹴にして強引に立たせると、
自分達の乗って来た馬車へと連れて行く。

「ふう、これは参ったな......」

あのマッシュとか言う男、証人のひとりであるキサリ皇后様の言う事に
まるで耳を貸しやしない。

それにルコールの奴も気づけば、どこにもいないしよ。

ったく...あいつめ、一体どこに行ったんだ?

俺はキョロキョロと辺りを見渡して見るものの、ルコールらしき姿が
どこにも見当たらなかった。

「ああ!さてはあいつ!俺を置いて逃げやがったなぁあっ!」

俺がルコールの文句を述べていると、

「失敬だな!このあたしがこんな連中如きから、逃げ出す訳ないじゃんかっ!」

ルコールが近くの巨木の上から俺達の目の前に颯爽と降り立つ。

「のわっ!?き、貴様、どこから出―――」

『相手を切り刻め、風の旋風たちよっ!ドラゴン・ソニックゥウッ!』

「な、なんだ、この風は!?き、切れる!?俺が斬り刻ま―――」


「ウギャアアァァァァア―――――ッ!!」


いきなり目の前に現れたルコールに、ジェントがビックリして動きを止めると、
その隙を見計計らうように、ルコールが口から空気を切り裂く衝撃波を無数に
放って、ジェントの身体を切り刻んでいく。

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