上 下
32 / 119
三章 おっさん勇者の初めての人命救助

第三十二話・フォーラム家

しおりを挟む
「こ、こら、アリア!命の恩人に対して、何て口を聞くんですか!」

せっかく助けてくれたのに、愚痴ばかりを述べるアリアに対し、キサリが
プンプンと頬を膨らませ怒っている。

あ、怒った顔も美人ですね♪

「はは、いいんですよ。年頃の女の子がこんな目にあったんです。きっと
心が乱れての愚痴だと思います。だから気にしないで下さい。それに俺が
おっさんだっていうのも、紛うことなきですし♪」

俺はそれとなく、可愛い子ちゃんへのフォローを入れておく。

「ほ、本当にすいません。えっと...ご都合が悪くなければ、貴方のお名前を
伺って宜しいでしょうか?あ、人に名を尋ねるなら、まず自分が先に名乗ら
なければ失礼ですね。私の名前はキサリ、『キサリ・グラン・フォーラム』と
申します。以後お見知り置き下さいませ♪」

レンヤに名前を聞こうとして、自分の名前を教えてなかった事にキサリが
気づくと、慌てて自分の自己紹介をし、そして頭を小さく下げる。

「そして、この子が...」

「わ、私はアリア...『アリア・グラン・フォーラム』よ!この華麗なる美貌の
持ち主である私を救えた事...その頭と心に感謝の念と共に刻み込みなさいな!」

続けてアリアが人差し指をレンヤにビシッと突き付けると、顔を赤くしながら
自分の自己紹介をツンデレ風にしてくる。

「またアリアは!命の恩人である御方に対し、そんな上から目線はお止め
なさいって、言っているでしょうっ!」

「あはは...。お二人とも自己紹介ありがとうございます。それじゃ、今度は
俺の名前ですね。俺の名前は城川――」

おっと、そういえば、ルコールの奴がこっちの世界では名前を先に言った方が
良いとか言っていたな。

何でも名字が前にくるのはこちらの世界では珍しく、色々と掘り探られてしまう
可能性があるとか。

「コホン...俺の名前はレンヤ...『レンヤ・シロカワ』と申します。こちらこそ、
以後お見知りおき下さい!」

キサリとアリアの自己紹介を聞いて、今度はレンヤが自分の自己紹介をして、
軽い会釈をすると、

それと同時に、

「ええぇぇっ!?フォ、フォーラム!?フォーラムですってぇぇえっ!?」

馬車から少し離れた所でレンヤ達の会話を聞いていたルコールが、フォーラムと
言う名を聞き、叫声を上げる。

「お~い、レンヤァァ~!レンヤァァァアア~ッ!!」

「ど、どうしたんだ、ルコール?そんな大きな声を荒らげて?」

俺の名前を大きな声を上げて呼び、手を招いているルコールを見て
ハテナ顔で首を傾げると、

「いいから!こっちゃ来いやぁぁああっ!!」

首を傾げてその場をちっとも動かない俺を見て、ルコールがますます
大きな声を上げて俺を呼んでくる。

「んだよ......。用があるんだったら自分から来ればいいものを...ったく、
しょうがないな......」

「あの、レンヤ様。あちらのお方は何方でしょうか?」

「ああ、あいつですか?あいつは俺と一緒に盗賊を退治してくれた、
ルコー――」

「おい、そこの不貞な輩ぁぁぁあっ!我らのキサリ皇后様とアリア皇女様に
対し、一体何をしようとしておるのだぁぁぁぁあ―――――っ!!」

俺がルコールの事を紹介しようとした瞬間、遠くから無数の馬の足音が
聞こえ、こちらへと近づいて来る軍隊が俺の目に映ってきた。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

奇跡の街と青いペンダント

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:1

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:83

美少女ボクシング(?)外伝「私をもっと殴って」

青春 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

みんなに優しい王子様に求婚されました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,335pt お気に入り:1,186

管理人さんといっしょ。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:249pt お気に入り:55

俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

BL / 連載中 24h.ポイント:5,610pt お気に入り:1,728

転生令嬢はやんちゃする

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:3,167

俊哉君は無自覚美人。

BL / 連載中 24h.ポイント:583pt お気に入り:155

処理中です...