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一章 勇者召喚

第六話・ニセ勇者

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「ふう、わかったよ。あんたらにそこまで言われては俺がここにいる
理由はないよな?それじゃ、この役立たずな偽物の勇者は帰る魔法力が
貯まるその日まで、この城を出て行かせてもらうとするよ!」

この後どうするべきか、色々と思考を練った結果、この城を出ていく意を
決した俺は、目の前にいる兵士達へ城を出ていく皆を伝える。

......がしかし、

「ぐふふふ...残念だがおっさん。そういう訳にはいかないんだよっ!」

兵士のひとりが城を出ようする俺に向かって、武器を突きつけてくる。

「これは何の真似だ?」

武器を突きつけてくる兵士に対し、俺はギロッと睨み付ける。

「それはこっちの台詞だ、おっさん。貴様こそ一体どこに行こうと言うのだ?」

「聞いていなかったのか?お前達がここに俺の居場所がないって言うのなら、
お望み通りに城を出て行って、俺が元の世界に帰る為の魔法量が貯まるまで、
どこかでのんびりと待たせてもらうって言ったんだよ!」

武器を突きつけてきた兵士の目をしっかり見ながら、俺は今後の自分の行動を
分かりやすい丁寧な言葉で教え聞かせる。

「ふん、何を馬鹿な事を...そんな事させるわけないだろうが!」

「全くだ。お前みたいなニセ勇者を外に出して、粗相でもされてみろ!
我らがリコット王女様の評判が、ガタンッと落ちてしまうだろうがぁあ!」

「もしそうなったら!きっとその人々の蔑む声に、リコット王女様が堪えられず、
嘆いで悲しむだろうが!そんな事もわからないのか、このクソなおっさんがっ!」

兵士達の罵倒に続き、神官達も同じ様に蔑む目線で、俺の事を罵倒してくる。

「リコット王女様が困るというのなら、もうちょっと俺に対して慈悲のある
態度を取ってもいいじゃないのか?」

嫌味や卑下する言葉を発してくる兵士や神官に、苛立ってくる俺だったが、
それを懸命に抑え、小さな嘆願を口にする。

だがしかし、

「はぁあぁぁぁん?何で、貴様のようなニセ勇者のおっさんに、世辞を
しなければいけないんだ!」

「ったく...偽物風情が、何を生意気な事を考えているんだ、このボケがっ!」

「ニセ者は大人しく、城の隅っこで黙っていればいいんだよ!」

俺の小さくも可愛い嘆願は空しく却下された上、兵士や神官の呆れと
卑下する態度は更に加速をしていき、俺に対してどんどん汚い言葉を
吐き捨ててくる。

「お、そうだ!良い事を思い付いたぜ!こう言うのはどうだ?こいつを
俺達で地下牢に監禁してよ、こいつは城を出ていったって事にするのは!」

「おお!いいじゃねぇかそれ!ナイスな考えじゃんっ!」

兵士のひとりが述べるアイデアに、横にいた兵士が指をパチンッと鳴らして
そのアイデアに賛同する。

「......と言う事だ。貴様はお望み通り、城の外へ出て行ったって事にして
やるからよ。貴様は俺達の慈悲に感謝し、暗い地下牢の中で死ぬまで
嬉し涙を流していなっ!くくくく...」


「「「「アハハハハハハハハッ!!!!」」」」


兵士と神官達がニヤニヤしながら俺の顔に蔑視の視線を次々に送ると、
下卑た声を上げて高笑いの合唱をする。


「ハァ、やれやれ。大人しく出て行きたかったんだがな......」


俺は溜め息混じりの呟きを口から吐いた瞬間、ギフトと呼ばれる技のひとつが
発動する!



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