彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお

文字の大きさ
上 下
66 / 72
6章・学校

066・このプレッシャー、どこかで感じた事が!?

しおりを挟む
 周子が投げたナイフを取り上げようとしたが、遅かった。
 木賀島の骨ばった手は軽々とそれを持ち上げ、そして、俺の目の前に翳した。

「ん~?なあに~?これ?」
「木賀島……ッ」
「もしかしてさぁ、宰はこれ使って欲しいわけぇ~?」

 そんなわけないだろ。
 慌ててそのナイフを叩き落とそうとするけど、避けられる。
 それどころか。

「ッ、」

 すぐ顔の横、突き立てられる銀の刃物に前髪数本が散る。

「あっ、いっけねえ~手ぇ滑っちゃったー」

 唇を歪めて笑う木賀島。
 痛みはなかった。なかったが、頬に濡れた感触が溢れ、横顔を汚す。

「木賀島君、やめろっ!」

 檻の外、ガシャガシャと鉄格子を揺する音がした。
 どちらが捕まっているのかわからないぐらいの周子の青褪めっぷりはなかなかの傑作だが、あいにく引き攣った俺の顔の筋肉は今笑えそうにない。

「っ、離せ、離せってばッ!」

 腿を掴まれ、腹部へ膝をつけるような形で開脚させられる。
 持ち上げられた腰の痛みはこの際どうでもいい。
 だけど。

「――ッ」

 ケツに食い込むほど引っ張られた下着にナイフを走らせる木賀島に、糸も簡単に切断された下着は最早原型を留めていなくて。
 ひやりとした外気に晒される下半身。
 剥き出しになったそこを手で隠そうとする余裕すら無くて。

「……ッ」

 檻の外、鉄格子を掴んだまま呆然とする周子の顔が見え、瞬間、顔面が火を噴くように熱くなった。

「っ、……やめ……ろ……ッ」

 今更木賀島に自分の声が届いていると思っていない。それでも、最後まで抵抗はやめたくなかった。
 瞬間、ひやりとしたものが窄みに押し付けられる。
 温度を感じさせないその無機質感がナイフの柄だと気付いたとき、頭の中が真っ白になった。

「そんなにさぁ、これが欲しいんならあげるよ」

 なんて笑いながら、俺の制止も聞かずに木賀島は思いっきりそのナイフを俺の中に捩じ込んだ。

「……あ?」

 突き刺さるようなその痛みに思考が停止する。
 持ち上げられた自分の下半身。そこから見える銀の刃物に、体内のこの金属物の存在に目の前が真っ暗になって。

「わぁ~、さすがにギチギチだねぇ。でも安心して~?……もっとあげるから」

 木賀島の声がやけに遠くに聞こえた。自分の下半身に目が離せなくて、息が、止まる。
 それも一瞬の出来事で、慌てて引き抜こうと唯一頭を出したナイフを掴むが手のひらに鋭い痛みが走り、ぬるぬると滑って痛くて思うように掴むことが出来なくて。

「っ、……んで…ッ、なんで……ッ、俺が、こんな目に……ッ」
「右代君!ダメだ、素手で触っては危険だっ!」

 周子のアホが何か叫んでいる。
 手のひらが痛い。けど、これを早く抜かないと、抜かないと。こんな姿、誰かに見られたら。じんじんと焼けるように痛む手のひら同様、体内の金属は熱を帯び、体温と同化し始めて。
 ああ、そういえば、木賀島のやつはどこに行ったんだ。
 挿入されたナイフにばかり気が向いていた俺がいつの間にかいなくなってる木賀島に気付いたときだった。
 ガラガラガラ、と目の前に一本のナイフと二本のフォークが落ちる。
 そして、木賀島の足。

「探してみたんだけど三本しかなかったよぉ、ごめんね~?」

 そう落ちたナイフを手にした木賀島は申し訳なさそうに眉を下げる。
 今度こそ、やつの言葉を理解することができなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...