上 下
40 / 65
4章・昇級試験

040・望月の凡ミス

しおりを挟む

「.........」

光野朔夜......か。

冒険ギルドから朔夜達が去った後、望月がさっきの試合で佐々木の
所業によって、粉々に壊れている壁を遠くで見つめながらサクヤ達の
試合の事を思い出していた。

「あの吹っ飛び方、あれはどう見てもやはり異常よね......」

あの試合中、朔夜くんが佐々木さんと激突した瞬間、一瞬だけども
朔夜くんから微妙ながら強い気を発するのを感じた。

それに動きも何かぶれて見えたような気も......

「......これを踏まえた上の私の勘なんだけど、この状況を作り出した
のは、朔夜くんの可能性が高いんじゃ?」

...って、

「はは...何を考えているんだろうね、私は?」

そんな事、ありえる訳ないのに。

だって朔夜くん、15歳の学生さんだよ?

望月が朔夜と佐々木の試合を思い出し、あれこれ考えを錯綜していると、

「あ~ここにいた~っ!お~~~い、望月さ~~~んっ!」

望月を見つけた小鳥が、スタスタと駆けてくる。

「もう望月さん、こんな所にいた!探したんですよ!ここで何をして
いたんですか~~って、ああ、あれってさっきの試合で佐々木さんが
壊した壁ですよね?ひやぁ~しっかし見事なまでに粉々に壊れちゃって
ますねぇ~!?もう佐々木さんったら、新人相手に何もここまで本気を
出さなくてもいいのにっ!後でマジ説教ですよっ!」

佐々木のやらかしによって壊れた壁やその瓦礫に気づいた小鳥が、
プンプン怒ってしまう。

「あ、でもあそこまで壁が壊れちゃっているって事は、佐々木さんと
試合をしたっていう新人さん、身体の方は大丈夫だったんですか?」

「え?」

小鳥の指摘に、望月は目を大きく見開いた。

「ああああっ!そ、そそ、そう言われればぁぁあっ!?朔夜くんが
あまりにも普通にしているものだから、それが全く頭からすっぽり
抜け落ちて気づきませんでしたわぁぁぁあっ!!?」

「えええ!?じゃ、何のケアもしないで帰しちゃったんですか!?
ま、まあ確かに遠目でみても、あの子大したケガは負っていなかった
ようではありましたけれども......」

「くぅっ!こ、これは由々しき事態だわ!冒険者達のサポートを受け持つ
責任者だというのに見落としてしまうなんて.......っ!」

小鳥から告げられた言葉に、望月がギルド員として決してやってはいけない
大失態に、普段は見せる事のない動揺とパニックで頭を抱えあげ、そして
その後、ガクッと項垂れる。

「でも望月さんがそんな大事な事を忘れてしまうなんて、ホント珍しい
凡ミスですよね?」

「凡ミスなんてレベルでは済まされませんわ!大ミスです、大ミスッ!!
よ、よし!い、今からではもう遅いかもしれませんが、火急に朔夜くんへ
連絡を取り、謝罪をお詫びをしなきゃいけませんねっ!」

項垂れている場合じゃないと望月が顔をバッと上げると、直ぐ様ポケットから
携帯電話をサッと手に取り出し、サクヤに謝罪とお詫びの言葉を伝えべく
通話ボタンをピッと押す。

そして電話番号を入力しようと、指を動かそうとした瞬間、

「ああ、そんな所にいたぁ!お~~い、望月っち~~~っ!!」

遠く方から自分を呼ぶ誰かの声が聞こえてきた。

「ん?私を呼ぶ声......?」

望月が声のする方角に顔を向けると、

「あれは...風菜さん......ですか?」

そこには大慌ての様子でこちらに駆けてくる風菜がいた。

「も、望月さん、望月さん!望月さんに聞きたい事があるんですが、
聞いても良いですかぁあっ!い、今から一時間くらい前に、男性側の
昇級試験をしていた新人さんって、一体誰なんっすかぁっ!?」

風菜が望月のいる場所に駆けてくるや否や、挨拶よりも早く剣幕な
口調でそれを聞いてくる。

「え?一時間くらい前の...ですか??えっと、ちょっと待って下さいね。
フムフム、その時間帯で試合をしていた新人さんは......っと」

風菜の問いに、望月が男性昇級試験の記載されたノートをパラパラと
捲っていき、

「......恐らくですが、その時間帯なら45番の光野朔夜さんですね」

風菜の言う時間帯に誰が試験を行っていたか、それを伝える。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する

あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。 俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて まるでない、凡愚で普通の人種だった。 そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。 だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が 勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。 自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の 関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に 衝撃な展開が舞い込んできた。 そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

【破天荒注意】陰キャの俺、異世界の女神の力を借り俺を裏切った幼なじみと寝取った陽キャ男子に復讐する

花町ぴろん
ファンタジー
陰キャの俺にはアヤネという大切な幼なじみがいた。 俺たち二人は高校入学と同時に恋人同士となった。 だがしかし、そんな幸福な時間は長くは続かなかった。 アヤネはあっさりと俺を捨て、イケメンの陽キャ男子に寝取られてしまったのだ。 絶望に打ちひしがれる俺。夢も希望も無い毎日。 そんな俺に一筋の光明が差し込む。 夢の中で出会った女神エリステア。俺は女神の加護を受け辛く険しい修行に耐え抜き、他人を自由自在に操る力を手に入れる。 今こそ復讐のときだ!俺は俺を裏切った幼なじみと俺の心を踏みにじった陽キャイケメン野郎を絶対に許さない!! ★寝取られ→ざまぁのカタルシスをお楽しみください。 ※この小説は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前。でも……。二人が自分たちの間違いを後で思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになる。

のんびりとゆっくり
恋愛
俺は島森海定(しまもりうみさだ)。高校一年生。 俺は先輩に恋人を寝取られた。 ラブラブな二人。 小学校六年生から続いた恋が終わり、俺は心が壊れていく。 そして、雪が激しさを増す中、公園のベンチに座り、このまま雪に埋もれてもいいという気持ちになっていると……。 前世の記憶が俺の中に流れ込んできた。 前世でも俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前になっていた。 その後、少しずつ立ち直っていき、高校二年生を迎える。 春の始業式の日、俺は素敵な女性に出会った。 俺は彼女のことが好きになる。 しかし、彼女とはつり合わないのでは、という意識が強く、想いを伝えることはできない。 つらくて苦しくて悲しい気持ちが俺の心の中であふれていく。 今世ではこのようなことは繰り返したくない。 今世に意識が戻ってくると、俺は強くそう思った。 既に前世と同じように、恋人を先輩に寝取られてしまっている。 しかし、その後は、前世とは違う人生にしていきたい。 俺はこれからの人生を幸せな人生にするべく、自分磨きを一生懸命行い始めた。 一方で、俺を寝取った先輩と、その相手で俺の恋人だった女性の仲は、少しずつ壊れていく。そして、今世での高校二年生の春の始業式の日、俺は今世でも素敵な女性に出会った。 その女性が好きになった俺は、想いを伝えて恋人どうしになり。結婚して幸せになりたい。 俺の新しい人生が始まろうとしている。 この作品は、「カクヨム」様でも投稿を行っております。 「カクヨム」様では。「俺は先輩に恋人を寝取られて心が壊れる寸前になる。でもその後、素敵な女性と同じクラスになった。間違っていたと、寝取った先輩とその相手が思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになっていく。」という題名で投稿を行っております。

浮気したけど『ざまぁ』されなかった女の慟哭

Raccoon
恋愛
ある日夫——正樹が死んでしまった。 失意の中私——亜衣が見つけたのは一冊の黒い日記帳。 そこに書かれてあったのは私の罪。もう許されることのない罪。消えることのない罪。 この日記を最後まで読んだ時、私はどうなっているのだろうか。  浮気した妻が死んだ夫の10年分の日記読むお話。

君と僕の一周年記念日に君がラブホテルで寝取らていた件について~ドロドロの日々~

ねんごろ
恋愛
一周年記念は地獄へと変わった。 僕はどうしていけばいいんだろう。 どうやってこの日々を生きていけばいいんだろう。

処理中です...