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4章・昇級試験
040・望月の凡ミス
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光野朔夜......か。
冒険ギルドから朔夜達が去った後、望月がさっきの試合で佐々木の
所業によって、粉々に壊れている壁を遠くで見つめながらサクヤ達の
試合の事を思い出していた。
「あの吹っ飛び方、あれはどう見てもやはり異常よね......」
あの試合中、朔夜くんが佐々木さんと激突した瞬間、一瞬だけども
朔夜くんから微妙ながら強い気を発するのを感じた。
それに動きも何かぶれて見えたような気も......
「......これを踏まえた上の私の勘なんだけど、この状況を作り出した
のは、朔夜くんの可能性が高いんじゃ?」
...って、
「はは...何を考えているんだろうね、私は?」
そんな事、ありえる訳ないのに。
だって朔夜くん、15歳の学生さんだよ?
望月が朔夜と佐々木の試合を思い出し、あれこれ考えを錯綜していると、
「あ~ここにいた~っ!お~~~い、望月さ~~~んっ!」
望月を見つけた小鳥が、スタスタと駆けてくる。
「もう望月さん、こんな所にいた!探したんですよ!ここで何をして
いたんですか~~って、ああ、あれってさっきの試合で佐々木さんが
壊した壁ですよね?ひやぁ~しっかし見事なまでに粉々に壊れちゃって
ますねぇ~!?もう佐々木さんったら、新人相手に何もここまで本気を
出さなくてもいいのにっ!後でマジ説教ですよっ!」
佐々木のやらかしによって壊れた壁やその瓦礫に気づいた小鳥が、
プンプン怒ってしまう。
「あ、でもあそこまで壁が壊れちゃっているって事は、佐々木さんと
試合をしたっていう新人さん、身体の方は大丈夫だったんですか?」
「え?」
小鳥の指摘に、望月は目を大きく見開いた。
「ああああっ!そ、そそ、そう言われればぁぁあっ!?朔夜くんが
あまりにも普通にしているものだから、それが全く頭からすっぽり
抜け落ちて気づきませんでしたわぁぁぁあっ!!?」
「えええ!?じゃ、何のケアもしないで帰しちゃったんですか!?
ま、まあ確かに遠目でみても、あの子大したケガは負っていなかった
ようではありましたけれども......」
「くぅっ!こ、これは由々しき事態だわ!冒険者達のサポートを受け持つ
責任者だというのに見落としてしまうなんて.......っ!」
小鳥から告げられた言葉に、望月がギルド員として決してやってはいけない
大失態に、普段は見せる事のない動揺とパニックで頭を抱えあげ、そして
その後、ガクッと項垂れる。
「でも望月さんがそんな大事な事を忘れてしまうなんて、ホント珍しい
凡ミスですよね?」
「凡ミスなんてレベルでは済まされませんわ!大ミスです、大ミスッ!!
よ、よし!い、今からではもう遅いかもしれませんが、火急に朔夜くんへ
連絡を取り、謝罪をお詫びをしなきゃいけませんねっ!」
項垂れている場合じゃないと望月が顔をバッと上げると、直ぐ様ポケットから
携帯電話をサッと手に取り出し、サクヤに謝罪とお詫びの言葉を伝えべく
通話ボタンをピッと押す。
そして電話番号を入力しようと、指を動かそうとした瞬間、
「ああ、そんな所にいたぁ!お~~い、望月っち~~~っ!!」
遠く方から自分を呼ぶ誰かの声が聞こえてきた。
「ん?私を呼ぶ声......?」
望月が声のする方角に顔を向けると、
「あれは...風菜さん......ですか?」
そこには大慌ての様子でこちらに駆けてくる風菜がいた。
「も、望月さん、望月さん!望月さんに聞きたい事があるんですが、
聞いても良いですかぁあっ!い、今から一時間くらい前に、男性側の
昇級試験をしていた新人さんって、一体誰なんっすかぁっ!?」
風菜が望月のいる場所に駆けてくるや否や、挨拶よりも早く剣幕な
口調でそれを聞いてくる。
「え?一時間くらい前の...ですか??えっと、ちょっと待って下さいね。
フムフム、その時間帯で試合をしていた新人さんは......っと」
風菜の問いに、望月が男性昇級試験の記載されたノートをパラパラと
捲っていき、
「......恐らくですが、その時間帯なら45番の光野朔夜さんですね」
風菜の言う時間帯に誰が試験を行っていたか、それを伝える。
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