彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお

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外伝その2・恵美編その1

050・恵美の裏切り

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―――私こと、海川恵美(うみかわめぐみ)には彼氏がいる。


―――大好きな彼氏の名前は光野朔夜(こうのさくや)。


―――正直、最初の頃はこの彼の事は好きでも何でもなかった。


―――どっちかというと、どうでもいい感じの男子だった。


だがしかし、そんな彼から毎日毎日と熱烈な好意を何度も掛けられる事で
私の心はトキメキ、熱は上がり、どんどん、どんどん彼に引かれていく。

それから約半年の月日が過ぎ去った、秋の始まろうとする季節。

私の心はついに彼...光野朔夜に陥落されてしまった。

それからというもの、

私と彼はいっぱいイチャ付き、いっぱいデートし、

そして愛を育んでいった。


―――彼と一緒は楽しい。


―――彼と一緒は落ち着く。


―――彼と一緒は安らぐ。


私はきっとこの先も彼とは、ずっと、ずぅうっとこの関係が続き続いて、
愛し合い、付き合っていくものだと思っていた。


―――だがそんな私達の関係に亀裂が走る。


それは両親の仕事の都合で、私は他の学校へ転校しなければ
いけなくなったのだ。


彼と離れ離れはとても寂しかった。

だけど今は、相手の顔を見て話せる手段はいくらでもある。

その手段を使って私は、その寂しさを埋めるように、彼と毎日いっぱい
楽しい会話をした。

けれども、どうしても消す事の出来ない寂しさは残ってしまう。


―――会話も出来る。


―――顔を見れる。



でも、彼と直接触れ合う事は出来ない。



―――彼と触れ合いたい。


―――彼に抱き締められたい。


―――彼から頭を撫でられたい。


―――彼の熱を肌に感じたい。


私の不満が寂しさと混じり合い、私の心は言い様のない孤独感でドンドン
押し潰されそうになっていく。

私がそんな気持ちに陥っていた時、

転校先の学校で、いつも優しく声をかけてきてくれた男子から告白された。

勿論、私には朔夜君がいるからお断りするつもりだった。

......だったのだが、

私の心は思っていた以上に弱っていたようで、私の側にいない
朔夜君よりも、いつも毎日の様に優しく微笑んで私に声をかけてくる
この『彼』に引かれていた。

だからなのか、

私はお断りの言葉が詰まってしまい、

その逆の言葉...お願いしますという言葉が口から出てしまった。


―――私に告白してきた男子の名は、松島将(まつしましょう)。


学校一のイケメンで、

学も武も、他の生徒よりもすば抜けて高く文武両道。

性格も男女分け隔てなく、誰にでも優しく接し、そしてクラスの中で
上位カーストナンバーに君臨する男子生徒。

そんな松島将君から告白されたのだ、

私の気持ちも想いも少しずつ少しずつと、将君へと傾いていくのは
しょうがない事だと思う。


「私の側にいないキミが悪いんだ。そう朔夜君のせいなんだよ......」



―――だから恨まないでね。



私が将君と恋人同士の関係になって、約数ヶ月の月日が流れた。


私の気持ちはとっくに将君に向いていた。

にも関わらず、私は朔夜君とは変わらず、毎日電話で会話をしていた。


―――そしてそのつど、私は思う。


―――ああ、何て退屈な会話なんだろう。


―――私は何故こんな何にもない、ザ・平凡で普通な男と付き合って
いたんだろう?


―――翌々考えたら、朔夜君より格好良かった男子はいっぱいいたのに、
そんな男子達から数えきれないくらいの告白を受けたのに。


―――何故私は、こんな平凡普通な男からの告白なんかを受けて、なんて
無駄な時間を過ごしてしまったのだろう。


―――ああ、何て愚かな事を。


―――ああ、何て勿体無い事を。


―――ああ、悔やみが尽きない。


私は朔夜君と電話で会話を交わす度、将君と朔夜君の圧倒的に違う
レベルの差に、


―――大好きだった気持ちが、


―――心のトキメキが、


どんどん冷めていく。


ああ、今すぐでもこんな平凡野郎と別れたい。

そして憂いなく、素敵で優しくて格好良い将君と毎日の様にイチャイチャ
ラブラブしたい~っ!

私のそんな気持ちも知らず、デレデレした口調で語り掛けてくるこの馬鹿に
うんざりと不平不満が積もり積もって苛立っていく。

そんな毎日が続く事で、私の我慢の限界が越えそうになったとある日。


―――朔夜君への連絡手段の全てがブロックされていた。


も、もしかして将君の事がバレちゃったっ!?


...と、一瞬だけ不安な衝動にかられるものの、

それも束の間の事で、

私はそんな衝動よりも、やった!ラッキー!という衝動の方が勝ってしまった。

そのせいか、私の心は全然寂しさを感じる事はなく、

また、胸が張り裂ける事も締め付けられるという事も全くなかった。

朔夜君へ気持ちなど、今更なのだろうな。


そんな事よりも、


「これでようやく、将君と心置き無くイチャイチャ出来るよ♪」


私はそう思うと、紅に染まった両の頬は緩みに緩みきり、そして表情は
いつまでもニヤニヤが止まる事はなかった。

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