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4章・昇級試験
030・その頃、昇級試験会場では?
しおりを挟む―――望月達が新たな試験官の代理人を探している最中、
昇級試験会場では。
「先輩達、交渉上手くいくといいですね?」
「だね。『黄昏の果て』は次のダンジョンの戦闘プログラムを組み立て
いる最中だから、恐らく受けてくれないと思うけど、でも『戦乙女』の
パーティなら、気さくで恩情も高いですパーティだし、ひょっとしたら
受けてくれるかもよ!」
「そうなったら、いいんですけど......」
「望月先輩もギルド内にC級以上の冒険者がいないかって探しに行った
けど、あんま時間もないしアナウンスで全フロアに呼び掛けた方が
良かったんじゃないのかな?」
「それは駄目ですよ!」
「え?な、なんでさ!?」
「そういう呼び出しは返って反感を買う恐れがあるからです。あなたも
経験がありませんか?何かに集中している最中、突如電話等の呼び出し
コールが掛かってきた時「集中を欠くから邪魔するな!」と思った経験が?」
「ない...とは言えないかな。確かに細かい仕事のまとめや、本やTVの物語に
のめり込んでいる時の呼び出し音はイラッとするもんね......」
「そうでしょう。だからこそ交渉ごとというのは難しいものなのです。
ですが気さくな『戦乙女』のみなさんなら、こちら側の今の状況や誠意を
見せれば、きっとお受けてして下さる可能性は大だと思います!」
「ともかく私達は望月さんのさっきの指示通り、こちらでやるべき事を
やっておきましょう!」
「よし!それじゃ、昇級試験の開始時刻まで、あまり時間も残されて
いませんから、望月さん達が代理人を連れて帰ってきた時に直ぐにでも
試合が出来るよう、みんなで全ての準備を終わらせておくよっ!」
「「「おおぉぉおうっ!!!」」」
望月の命を受けた試験担当係の後輩達が気合いを入れると、自分達の担当する
フロアへと猛ダッシュで駆けて行く。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「......何か、試合を担当しているギルド員の人達がめっちゃ慌ただしいな?」
さっき早足でこの場から駆けて行ったお姉さん二人も、かなり焦った表情を
してようだし?
「あのギルド員のお姉さん達のやり取りを見るに、慌ただしい原因って、
さっき凄い剣幕でここから去って行った、あのチャラ野郎のせいだろうか?
去って行く前に、ギルド員のお姉さん達と言い争いをしてたしさ?」
「うん。そうみたいだよ、お兄ちゃん。ほら見てよ、ここ。今日の予定
プログラムの欄に、あいつが昇級試験の担当冒険者だって記載されるもん!」
成美はそういうと、スマホに映し出されている冒険者サイトページを
俺に見せてくる。
「お、ホントだ。じゃああいつ、その仕事を放棄していなくなって事か?」
「ここからいなくなったって事はそういう事だろうね。マジでとことん迷惑
極まりない奴だよね、あのろくでなしのチャラナンパクソ男っ!そのせいで
みんなが迷惑を被ってんじゃんっ!」
人の迷惑を考えずに、ずけずけとナンパしてきたあのチャラ野郎の事を
思い出した成美は、表情がイラッとした表情へと変わっていく。
「あのチャラ野郎、見た目も態度も人様の迷惑や考えなんて知るかよって
タイプぽかったしなぁ。あ、でもあいつここからがいなくなったとなると、
昇級試験の方は中止の方向かな?」
もしそうだったら、試験を受けずに済むんで、俺的には都合が良いだが。
「恐らくそれはないと思うから安心しなよ、お兄ちゃん。さっきのお姉さん達、
結構敏腕そうだったし、だからきっと、あのチャラ野郎の代わりを見つけて
くると思うよ♪」
俺の考えを勘違いした成美が、ない胸をドンと叩いてそう豪語してくる。
「い、いや、別にそっち方面の心配をしていたんじゃないんだが......」
そんな成美に対し、俺は心の中でそう突っ込みを入れるのだった。
それから数十分後。望月が風菜を連れて試合会場に帰って来た。
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