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3章・冒険ギルド

018・妹の疑惑の目

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「ねぇ、お兄ちゃん。あのナンパチャラ野郎に何をしたの?」

未だ俺の腕に抱きついている成美がか細くそう言うと、上目遣いで
こっちをジッと見てくる。

「え?」

「だ、だってあのナンパチャラ野郎、お兄ちゃんに睨まれた途端、咆哮を
雄叫ぶし、腰は抜かすし、あまつお漏らしはするしさ!目の前で不可解な
事が起きたらめっちゃ気になるじゃんっ!で、何をしたのお兄ちゃん?」

「え、えっと...そ、それは...だな。そ、その...何とか言いますか......」

うぐぅ、困った。

一体どう説明したら納得してくれるだろうか?

『無者の威圧』であいつが怖じ気ついた隙を狙って、あの場を去ろうと
したのに、まさかの恐怖の雄叫びとお漏らしをするとは予想外だったよ。

レベルを思いっきり下げた『無者の威圧』だというのに。

おのれチャラ野郎めぇぇぇええっ!

なぁ~にが俺様はC級冒険者だぞ...だぁあっ!

どうみても嘘じゃんかっ!

あいつ絶っ対、一番最低のランクだぞっ!!

......おっといかんいかん。怒っている場合じゃないな。

と、取り敢えず、成美に納得しそうな言い訳をしなきゃ!

......コホン。

「......え、えっとほら、お、俺ってさ、まぁまぁ目付き悪いじゃん?
だ、だからあのチャラ男の奴、俺を強者つわものと勘違いしたんじゃねぇかな?」

「ああ、なるほ。初見でお兄ちゃんから睨まれたら、マジ怖いか、うん♪」

俺の言い訳に、成美はそっかと納得する。

「それにしてもお兄ちゃん。あいつに良くあれだけの啖呵を切れたよねぇ?
昔のお兄ちゃんだったら「あう~あう~」とか「そ、その~」とか
「あ、あの~」とか言って、言葉を思いっきり詰まらせていたのさ?」

「はは、そうだったな。俺ってば、動揺するといっつもテンパって言葉を
引っ掻けまくりだったもんな。いや~懐かしい思い出だよ~♪」

「いや、懐かしい思い出って...その思い出、昨日までのお兄ちゃんの事なん
だけど!?ああでも、もしかしたらあのクソ浮気女の恵美の奴を吹っ切った
事が、お兄ちゃんを男として進化させちゃったのかもねぇ♪」

成美がそう自己完結すると、ニコニコ顔で俺の腕に自分の腕をギュッと
絡めてくる。

「進化......か」

まぁ、確かにあいつが動力原となって進化をした事はした。

だってあいつの浮気を忘れるべく、ひたすら無我夢中になって魔物討伐を
繰り返して強くなっていったからな。

俺が進化した理由に浸っていると、

「あ!あそこを見てよ、お兄ちゃん!人がいっぱいいるよ!」

成美がちょんちょんと俺の裾を引っ張って、人だかりの出来ている
場所に目を移す。

「どうやら冒険者の説明会はあの部屋で行われるみたいだな?」

そして人だかりの出来ている場所に成美と一緒に歩いて行くと、俺は
集まっていた他のみんなと共に説明会のある部屋の中へ入って行く。

「......さて。俺が冒険者のルール説明を聞いている時間中、成美を
どうするかだが。さっきのナンパの件もあるから、あんま成美をひとりに
したくはないし......」

でもここには登録した奴以外はいちゃ駄目だろうしな。

「うふふ。それなら安心してよ、お兄ちゃん!わたしもお兄ちゃんと
一緒に冒険者ルールの説明を聞いてくからさ♪」

「俺も出来るならそうしてもらいたいんだけどさ。でも関係者以外は
この部屋にいちゃ駄目なんじゃないのか?」

「そこら辺のルールはちゃんと調べてあるから大丈夫だよ。ルールに
よると、知り合いなら一緒にいて説明を聞いて良いらしいよ♪」

「え、一緒にいても問題ないんだ?」

「うん。ってな訳なので、どっこいしょっと♪」

成美が俺の心配を払うと、俺の座っている横の椅子にちょこんと
腰を落として座った。


それからしばらくの時間が経った後。


「本日新規登録をなさいました新人冒険者のみなさま、お待たせしました!」

部屋ドアがガラッと開いて、三十代くらいの女性が静かな足取りで部屋の中に
入ってきた。

「それでは早速でありますが、冒険者が覚えておくべき基本的なルールの
ご説明と、冒険者になった時の心得のご説明を始めますね!」

部屋に入ってきた女性は、手に持っていた電子パットらしきものを取り出すと、
冒険者の心得とルールの説明をしていく。

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