あるじさま、おしごとです。

川乃千鶴

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幕間③

閑話「看病という名の拷問」

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 ショウスケが入院していたのは五日あまりで、あとの一月ほどはコイミズ家の屋敷で療養することとなった。
 コイミズ家の財力とヤチヨの医学薬学の知識を併せれば、現在ヤマノトで認可されているものより優れた治療を受けられると言われた。

 傷を膿ませない薬を血の管から入れたり、物凄く滲みる薬で傷を洗われたりした。後者の方は涙が出るほど酷い痛みなのだが、コイミズ夫妻の前でべそをかくわけにもいかず、歯を食いしばって堪えた。

 ある日のこと、可愛らしい衛生婦がやってきた。大きく裾の広がった白い看護服に、同じく白の帽子を被ったキョウコだ。

「ヤチヨ様がお貸しくださいました。本日からわたくしも、主人様の看護をお手伝いいたします。まずはお身体を綺麗にしましょうか」
「ちょ、ちょっ、ちょっと待って!」

 もう既に嫌な予感しかしない。
 そして予感は的中する。

「何かこう……触り方がいやらしいです!」
「まぁ! 考え過ぎでございます。わたくしでご不満でしたら、ヤチヨ様をお呼びいたしましょうか?」
「……それはご勘弁を」

 体が自由になって、夫婦の契りを結んだ際には覚えていろと、ショウスケは密かに復讐を誓う。
 とりあえず今は、雑念を締め出し無心になって、この惨い時間が過ぎ去るのを待った。







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