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第六話 「あるじさま」のお名前。
閑話「そうだったらいいのに」
しおりを挟む包み紙に並ぶ流麗な筆運びの字はキョウコのものだ。記されているのは、どういうわけか「晶助」という自分の名だ。
「お坊様に尋ねられたので、お名前をお教えしたのでございます。水晶のショウに、助平のスケでございます、と」
「ええっ! もっと違う言葉があるでしょう!?」
健康的な男子たるもの、我は助平でないと胸を張っては言えないが、名に冠するほど色に溺れた覚えもない。
「それならイヘイくん。イヘイくんはどうなんだい?」
「イヘイさんは……伊呂波のイに、平安のヘイでございます」
納得がいかず、「平」が下につく言葉に限定して、再度考えてもらった。
「伊藤様のイに、泰平のヘイでございますね」
本気なのか、とぼけているのか、真剣に考えた様子のキョウコからは読み取れない。
「……はっ! じゃあ隣の旦那さん。キスケさんは!?」
「歓喜のキに、助六のスケでございます」
「では、もう一度! わたしは!?」
「主人様は助平でございます」
「!?」
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