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第一話 恋の障害は歳の差だけか。
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しおりを挟むキョウコはその日、ちょっとだけ気まぐれを起こした。
いつもは社でショウスケを待っていたが、その日は自分から会いに行ってみようと思った。
ショウスケの家は、クラサワの中心部にある大きな店で、巻物を広げた看板が目印だと聞いた。彼女はうきうきして屋根伝いに街を歩いた。
ショウスケのことが好きだった。
親元を離れてから、餌を求めて流れ歩いてきた彼女は、人間の温もりを知らなかった。人間は大きいしうるさいし、たまに意地悪をしてくる危ない生き物だと思っていた。
でもショウスケは違った。声も、手も、心根も全部が優しい。キョウコという立派な名前まで与えてくれた。
ずっと流れ者だったというのに、気付けば社から離れられなくなっていた。
(たまに、触りすぎなところはございますけどね……)
尻尾の付け根をトントンされると、腹の奥がムズムズしておかしな気分になる。
(それに、この間のアレは嫌でした。アレだけは許してはなりませんね)
口に変な棒を突っ込まれた不快感を思い出し、キョウコは身震いした。
もう少しで街の中心部。
目当ての店はどの辺だろう。キョロキョロするキョウコを、遥か高い空から狙うものがいた。カラスだ。成猫とは言え小柄な彼女なら、どうにかできると思われたのだろう。
それは一瞬の出来事だった。
カラスが急降下で、キョウコをつついた。頭頂部に走った激痛で重心を見失い、彼女は屋根から落下した。いつもなら、くるりと身を翻してこともなく着地できる。だが忌々しいかな、カラスの嘴がまだ追ってくる。
(あっちへ行って!!)
前足を掻いて、嘴に爪痕を残してやることができた。
しかし、着地は間に合わず、キョウコはそのまま落下した。しかも運が悪いことに、落ちた先は排水路。
降り始めた雨のせいもあって、見る間に水量は増していき、為すすべなく彼女は意識と命を手放したのだった。
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