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時を操った少女

第386話-大精霊vs魔人-

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 こっちの遠距離攻撃に少しずつでも魔人が順応して来たのか次第に距離が詰められている。
 同時に魔法での迎撃も大規模なものから小規模な方法に変わって来ている。
 これを好機と見ていいものか悩む。
 誘われているものか、それともこっちの作戦が活きてきているのか、それを判断付けるものがまだ見えてこない。

「そろそろ終わりが近いかな」
「もう弱音吐いてんのかぁ。弱くなったなぁおい!」

 威勢だけは変わらない。こういうタイプは苦手で仕方ない。

「うるさいのは嫌いなんだよ」

 こっちの岩を使った攻撃はあくまで牽制。本命はその合間に向かわせる速さ重視の砂を固めた魔法。致命傷にはならなくてもいい、少しずつでも相手にダメージが与えられるならそれでいい。
 思惑通りに魔人の身体には最初に比べるとかなりの傷がついてきている。

「だからさ……そろそろ終わろうよ」

 牽制に使い砕かれて落ちた岩の破片は地面に、今砕かれたばかりのものはまだ空中に対空している。
 それを一斉に操る。向かわせるのは魔人の元、一点集中。
 派手さはなくてもいい。ただ堅実に終わらせる。
 自分の魔力から組み上げた岩、そして魔力を通わせた岩が腕の振りに合わせて目標へと一直線に飛んだ。
 風切り音が周り一帯から無数になり、岩と岩がぶつかる鈍い音が響いた。
 避けられないように地面から砂を縄のようにして足を掴んでいた。間違いなく直撃した。
 悲鳴は聞こえない。全ての岩が集まった後はただ静かに風の音だけが鳴った。風に揺られて葉が散っていく。
 一瞬の静寂を轟音が引き裂いた。音の発生源は目の前の岩の塊。轟音と一緒に塊が弾けた。破片の集まりがばらけてさらにそこから小さな破片になって地面に落ちた。

「終わるわけねぇだろぉ!」
「しつこい」

 魔人の傷は深い。血を流しながらこっちへと真っ直ぐに向かってきた。
 油断していたわけじゃない。だけどその速度には反応できずに近距離へと詰められた。
 咄嗟に出した地面からまっすぐ魔人に伸ばした土で組んだ槍は避けられた。
 攻撃は避けられない、なら取るべきは防御。
 頭を守って尚且つ身体全体を強化してダメージを最小限に抑える。

「油断したなぁ」

 魔人のにやつく顔と構えた拳が見えた。
 胸部と腹部の間あたりへと魔人の右拳が来る。

「(耐えて、カウンターを)」

 右拳がこっちの身体に触れる事はなかった。当たる直前に目の前で止まった。

「俺の魔法が効かないってよぉ……」

 右拳と僕の身体の間から音が鳴る。乾いた板を割るような音。
 その音と同時に痛みがきた。声にならない程の痛みが。そして口の中に血が溢れた。
 
 
 
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