悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

文字の大きさ
上 下
411 / 431
時を操った少女

第380話-人間と精霊-

しおりを挟む
「精霊のせい……?」

 アリスはポツリと呟いた。その言葉は呆気にとられたように出て感情と言うものは混ざっていない。
 ただその言葉は私からも溢れそうになっていた。

「そうさ。君、精霊を拒絶か何かしたんじゃ無い?」
「はい。フランソワ様……いや、優子様に諭されてその時に」

 ややこしいけど私がって事は、私がこの世界にフランソワとしていた時のことだろう。あの時間を巻き戻してた時。

「私はもう大丈夫ですって。そう言った覚えがあります」
「そうか、だからだね。精霊は君の元を去った。でも精霊とのつながりは完全に断ち切ることなんて出来ないんだ」
「そうなんですか?」
「あぁ。完全に断ち切ったら……人間は死ぬよ」

 その言葉に全身が寒くなった。予想もしてなかった。そんな言葉が出てくるなんて。思わず息を呑んだ。

「でも今の君に精霊は見えないし声も聞こえないだろ。精霊は元々別の世界にいる、そこに帰った。だけど繋がりを断つ事はできない、だから繋がりを残したままね。君と精霊は細い線一本で繋がっている状態だと思えばいい。その細い線を通じて君と精霊は生命力を共有しているんだ」

 お茶を冷まして口に含んで飲み込めるぐらい長い説明だった。普段飄々としているテールさんだから真剣味が際立っている。

「元々君の生命力は弱かった。だけど精霊がいたおかげで満足に生活できてたんだと思う。その生命力の共有が薄い、だから君の身体は弱ってきている」
「それってアリスはいずれ死ぬって事?」

 私が口を挟んでしまった。これを聞く権利は本来アリスが持っているはずなのに。

「なんとも言えないけど、それは遠い先の話かな。ただ不自由な事は多くなってくるんじゃ無いかな」
「今以上に私の身体は動かなくなりますか?」
「かも知れない」
「アリスさんを救う方法はないんでしょうか? 精霊を呼び戻すとか」
「無理だね。奇跡を待つしかない」
「奇跡?」
「精霊への声は伝わらない、違う世界にいるからね。向こうがこっちにきてくれるまでは連絡は取れない」

 『無理』。その一言がこの場の空気にとどめを刺した。

「バレルさんの魔法みたいに生命力を流し込むのはだめなの?」

 バレルさんの魔法を教えてもらった時のことを思い出す。生命力を分け与えることでの治癒力を推進させる魔法。

「生命力を活発化させるのとはまた別物だよ。言っちゃえば源泉が弱いんだ。だから現時点では手の施しようがないんだ」

 体温が上がってくるのがわかる。思考がまとまってこなくなってきた。打開策が思い浮かない。そんなつもりはなくても、目頭が熱くなって瞬きをしたら乾いた頬に一筋の水路が出来上がりそうだ。
 突きつけられた現実を覆せない自分が情けなくて腹が立つ。
 そんな私を尻目にアリスは笑ってこう言った。

「仕方ありませんね」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

彼女がいなくなった6年後の話

こん
恋愛
今日は、彼女が死んでから6年目である。 彼女は、しがない男爵令嬢だった。薄い桃色でサラサラの髪、端正な顔にある2つのアーモンド色のキラキラと光る瞳には誰もが惹かれ、それは私も例外では無かった。 彼女の墓の前で、一通り遺書を読んで立ち上がる。 「今日で貴方が死んでから6年が経ったの。遺書に何を書いたか忘れたのかもしれないから、読み上げるわ。悪く思わないで」 何回も読んで覚えてしまった遺書の最後を一息で言う。 「「必ず、貴方に会いに帰るから。1人にしないって約束、私は破らない。」」 突然、私の声と共に知らない誰かの声がした。驚いて声の方を振り向く。そこには、見たことのない男性が立っていた。 ※ガールズラブの要素は殆どありませんが、念の為入れています。最終的には男女です! ※なろう様にも掲載

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

処理中です...