悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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教団と大精霊

第355話-研究者の手記-

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「こんなんで驚かないでよ」

 こっちの心を見透かしたようなことを言われた。

「お、おう。それでも俺にはすげぇって思えたからよ。本気になるとどれくらいすげぇんだ……」
「これぐらい出来るよ誰でも」
「誰でもって……」

 少なくとも俺には無理だ。魔法を打ち出すことはからっきしだ。出来るのは身体強化だけ。

「やる気の問題とは言わないけどさ。これぐらいできなきゃ……まぁいいや」

 何が良いのかよく分からないがそのまま獣人の死体の元に向かった。
 死体からはまた黒いのが無くなって中の人間だったものが出てきてきた。

「ふーん」

 何かを見定めるかのように死体を見る姿は深刻そうに見える。触ることなくただただ見ているだけ。

「なぁこの荒れようはこいつが原因だと思うか?」
「いや違うと思うよ」
「だよなぁ」

 こいつの爪で暴れたのに傷がないのはおかしいとは思う。つまりこいつはここを荒らしたやつじゃない。
 テールは立ち上がると最初に獣人がいたところまで歩き出した。躊躇なんかは全くない。
 俺もテールの後を追うようについていく。

「ここに居たんだろうね」

 部屋の中には格子が設置されていた。一部屋丸ごと格子に改造したような部屋は独特の空気を放って、おぞましさが溢れている。
 格子の人並みサイズの入り口は開かれていた。

「誰かが開けたのか」

 中から壊して開けたようには見えない。誰かが鍵を丁寧に開けて中から出られるようにしたと言う感じだ。

「それで中にいたあいつが出てきたって感じかなぁ」

 部屋に入ると入り口近くには小さな机があった。そこだけは綺麗になっている。

「こりゃなんだ」

 置かれていたのは一冊の手帳。何かの記録が付けられている。
 共有のために口出して読んだ。

『黒の力は形を成す。だがこれを人に定着させることで魔人になると言う。嘘か本当かは実験で証明する』

 初ページから得体の知れなささが滲み出ていた。

『人に定着させる黒の力の実験結果。黒の力は人の姿を変える性質がある。身体を纏うような黒の膜が形成される。この形態になると理性はなくなり凶暴性を増した獣となる』

 メモ書きのような手帳はまだ続く。

『黒の膜は自ずと身体を形成する。四足歩行の獣と化し獰猛な生き物となった。これが何故なのかは未だ不明。だが、黒の力は集まれば大きな力となることも判明した』

 まだまだ続きがありそうな分厚さだが最後のページになっていた。
 この先はまだ分からなかったのかそれとも書くのをやめたのかは分からない。
 ただ最後のページに結果じゃない愚痴があった。

『魔人ってなんなんだよ』

 
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