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教団と大精霊

第350話-バナフェス村の女神-

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 打ち合わせをしてから約一日半程でバナフェスの村と呼ばれる所が見えてきた。
 湖の辺りに建てられた住居のあつまりがバナフェス村らしい。入り口には門が掲げられていてこれまでに私が知った、町や村とは少し違うように思えた。

「そしたらここで一旦お別れだ。チェル、馬車とその子達任せるな」
「分かってます。貴方はちゃんと気をつけて下さいね」
「大丈夫だろ。頼もしいのが二人もいるんだぜ」
「貴方のそう言う所が怖いんです」

 二人のやりとりを見てから私達は村の中に入った。日差しがよく当たる立地のせいか、少し暑い。それでも心地のいい日差しと湖の方から吹くひんやりとした水っ気のある風が気持ちいい。

「お姉さん達、旅の人ー?」

 そう話しかけてきたのは小さな少年と少女の二人組だった。
 何か意図があって聞いてきたような感じじゃない。ただ気になったから聞いてみたと言う感じがした。

「そうだよ。そうだどこか泊まれる宿とか知らないかな?」
「「知ってるー!」」

 二人は元気いっぱいに答えてくれた。無邪気な姿が微笑ましい。

「どこにあるか教えてくれるかな」

 チェルさんの対応が旅慣れをしているのが良く分かる。
 そんな姿を見ているうちに子ども達は先に走って行ってしまった。

「ここに前来た時は私達固まって馬車で泊まったから宿を知らなくて」

 チェルさんが教えてくれた。
 確かにあの人数が一度に泊まれるとこはあまりないだろうなとバレルさん達の商団のことを思い出す。

「こうやって地元の人に聞くのがいいの。交流にもなるし」
「なるほど。旅の醍醐味ですね」
「勉強になります」

 ユリィがメモを取っていた。真面目な彼女らしいけど、今のは頭の中に知識として留めとくぐらいでいいんじゃないだろうか。

「あら。そちらは旅の方?」

 湖のほとりに一人立っている人がいた。
 長い綺麗な金色がかった髪が風で靡いている。腰には一本の剣が刺してある。華奢な身体で剣を振る姿が想像しにくい。

「そうだよー!」

 少年が私達の答えてくれた。

「いらっしゃいませ。どうかごゆっくり」

 整った顔に同性から見ても母性を感じる垂れ目に見惚れてしまいそうになる。
 今更だけどこの世界は美男美女で埋め尽くされているような気もする。

「お気遣いありがとうございます」

 チェルさんの言葉に微笑みで返してくれた、その一瞬の微笑み返しだけでも彼女の瞳に吸い込まれそうになってしまう。

 
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