悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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黒い獣

第342話-護衛者バレル-

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「ま、待ってくれ! 俺はやっぱりお前たちについていく事にした。断っといて何だが俺も一緒に行かせてくれないか」

 突然バレルさんとチェルさんが私達のところに来て言葉をかけられた。バレルさんの中で何があったかは分からないけど私達としては頼もしい限りだ。ヤンもユリィも勿論反対することはなかった。

「商団の方はいいのかよおっさん」
「あぁ、事情も話してある。俺は教団と今回の獣の事件と関係性があるかもしれないって事で調べにいく。だから心配すんな」
「奥さんの方もついてくるんだよな」
「えぇ途中で分かれる予定だけどよろしくね。治癒魔法は私も使えるから頼ってね」

 町ごとを渡り歩いてきた二人の同行はありがたくて仕方ない。
 ただ問題が一つあった。

「馬車が大変ですねぇ」

 ユリィの言う通り馬車の荷台に四人はどう見ても厳しい。かと言って荷物は下ろせない、むしろ人数が増えた分増やさないといけない。

「それは心配ない。俺のとこから馬車をもう一台持っていく。荷物も今のより乗るぞ」
「いいんですか?」
「勿論だ。それに旅の資金もいるだろう。ついでに積荷して売り捌きもするつもりだからな」

 旅の資金にはおおよそ問題はないと思うけど、何があるかは分からない、金策は確かにしておくに越したことはない。

「分かりました。そしたらお願いしますバレルさん」
「任せろ」




 こうして馬車を出す時間をずらして私達は町を出た。見送りには町の人、商団の人たちが駆けつけてくれた。ほとんどの人がバレルさんのためなんだろうけど、だからこそこの人の人望の厚さが見て取れる。

「それにしてもおっきい馬車」
「まぁな。人数が多いならこっちの方がいい。旅をするのに窮屈なのは疲れが溜まるだけだからな」
「私達の馬車が小さいって聞こえますけど」
「いや、そんなことは言ってないさ。単に俺が大きいだけだ」

 笑って誤魔化されたけど私にはそう聞こえた。

「まぁ実際俺たちのは小さいぜお嬢」
「ヤンまで!」

 どうやら私に味方はいないらしい。

「ところで次はどこに向かうんですか?」
「それそれ私も気になってたのよ。ユリィも聞いてないの?」
「えぇ。さっきヤンさんとバレルさんが二人で話していたのを見ていただけで」

 行き先は今運転しているヤンとバレルさんが決めて出発したから私もユリィも知らなかった。

「チェルさんは聞いてます?」

 同じ荷台で過ごしているチェルさんは頷いた。

「あの人言ってなかったのね。後で叱っておくわ。行き先は湖が綺麗なバナフェスって言う町よ」

 五人になった私達の二台の馬車は目的へと進んでいく。

 
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